着々とハンバーグから遠のいています
「・・・・なぁ、遅くねぇか?」
「そうですね・・・・。また、メモをなくしてしまったんでしょうか?」
「そうなのか?」
「うーん、僕はちょっとわからないんですけど・・・・凛君なら、何か他のことで立ち止まってることが多そうです・・・・」
「ああ、それわかるぜ・・・・。宗介だったら、メモをなくしたと言うよりは、どっかで寄り道してる方が確率高そうだしな」
「そうですね、それには僕も同意します」
僕らは苦笑をしながら話していた。あっ、でも別に、悪口を言ってる訳じゃないんだよ!ただ、凛君なら寄り道が多いかな・・・・とか思っただけで、悪口とか言う訳じゃ・・・・。
「凛君、どこのスーパーに行ったんでしたっけ?」
「ん?確か、この近くのスーパーだったと思うけど・・・・なんでだ?」
「ちょっと、様子を見て来ようと思って・・・・」
「そっか・・・・気をつけていけよ?最近何かと物騒だからよ」
「大丈夫ですよ!女の子じゃないんですし。それじゃあ、行ってきますね!」
僕は、コートを着て手袋とマフラーを持つと、外に出た。外に出てから、慌てて手袋とマフラーをつけて歩き出す。
吐く息がとても白くて、こんな気温の中、外にいなくちゃいけない人は可哀相だなって思う。
確か、ここから一番近いスーパーって言ったら、徒歩五分ぐらいで行けるから、直ぐ帰ってこれると思うんだけど・・・・凛君、どこまで行ってるんだろう・・・・。
ため息をつきながら歩いていると、突然、目の前に人が現れた。僕は、視線を上にあげて、進もうとしている道を塞いだ人物のことを見た。
その人は、黒いハットに黒いスーツ、黒いマントと、ほぼ黒尽くめの人で、唯一黒くないものと言ったら、彼が付けている仮面だけだ。それだけが白色だった。
「・・・・僕に何か用ですか?」
僕が警戒しながらその人に問いかけると、その人は笑った・・・・ように感じた。顔は、マスクをしているから見えないけれど、雰囲気が笑っているように見えたんだ。
「何も用がないなら、僕は忙しいので、そこを退いて頂きたいのですが・・・・」
僕が少しだけ凄んで言うと、その人は、無言で立ち去った。僕は、あの人が何をしたかったのかよくわからないけれど、とりあえず、警戒しておくことにした。
あの様子だと、僕に危害を加えるようなつもりじゃないことはわかった。だけど、やっぱり油断はならないからね。うん、油断は禁物だ。
そんなことを思いながら、目的のスーパーの中に入って行く。しかし、スーパーの中に凛君の姿はなく、店員さんにも、凛君らしき人物を見なかったかと探ったけれど、見てないようだった。
と言うことは、凛君は何かを勘違いして、遠くのスーパーまで行っちゃったってことかな?
そんなことを思いながら、とりあえずは竜さんの家に戻ろうと考えていた時、コートのポケットに入っていたケータイが鳴り出した。凛君か、竜さん辺りかなと思って見てみると、なんと、修さんだった。
「はい、桜木です。どうしましたか?」
「まぁ・・・・なんと言うか・・・・率直に言うと、これからこっちに来てくれないか?」
「こっちとは・・・・?」
「俺達は今、聖夜の誕生日パーティーの会場にいるんだが・・・・場所まではわからないんだ。どこかのホテルと言うことぐらいしか・・・・」
「えっと、そのホテルは何階建てかわかりますか?」
僕がそう聞くと、修さんと、もう一人、誰かの話し声が聞こえた。しかし、凛君じゃないのはわかった。声の高さが違うもん。
「このホテルは、三十階建てだ。それだけでわかるか?」
「はい、わかりました。でも、どうして突然・・・・」
「まぁ、色々あるんだ。そこのところは後で説明するから、とりあえず来てくれ。じゃ」
修さんはそれだけ言うと、僕の言葉も聞かないまま電話を切ってしまった。少し強引だとは思うけれども、結構修さんはそう言うところがあるから、慣れてしまった。
僕は、一端竜さんに電話をして、しばらく帰って来ないことを告げた。
「そうか・・・・お前が出かけて行った時点で、何となくそんな感じがしてたんだ・・・・まぁ、行ってこいよ」
「はい、ありがとうございます」
僕は竜さんにお礼を言うと、修さん達のいるホテルに向かって走り出した。