やっぱり、メイクは凄いです
「さて、何を買うんだっけ・・・・」
僕は、手に持ったメモを穴が空くほど見ている。急いで買って帰らないと、竜君達に怒られちゃいそうだから、急いで買いたいとは思ってるんだけど・・・・。
僕は、ため息をついた。メモの文字が読みにくいんだ。きっと、急いで書いたからだろうけど、それにしても酷い・・・・。僕でも、もう少し上手く書けるのにな・・・・。
そんなことを思いながら、とりあえず、スーパーに向かって駅前広場を歩いていた時、ふと、栞奈ちゃんのことを思い出した。
そう言えば、今日は亜修羅とデートをするみたいなことを言っていた。そして、待ち合わせ場所は確か、駅前広場だったような・・・・。
もしかしたら、二人がいるかもしれないと思って、僕は、駅前広場にある噴水の方を覗いてみたけれど、そこにいたのは、とても綺麗な格好をした女の人だけで、それ以外の人達は噴水などを素通りして歩いている為、僕は、あの二人はどこかに行っちゃったのかなって思って、そのまま噴水広場を通り過ぎようとした時だった。
ただ一人、噴水のところに座っていた女の人が立ち上がって、僕の方に向かって走り寄って来るのが見えたから、何か用事があるのかもしれないと思って、女の人がこっちに来るのを待っていた。でも、ヒールを履いてたからかわからないけど、途中で転んでしまって、僕は、慌ててその女の人にかけよる。
「だっ、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですか?って・・・・私だよ、栞奈!」
そう言われて、僕は、栞奈ちゃんと思われる女の人のことをジッと見てみた。けれど・・・・わからない。栞奈ちゃんじゃないみたいに見える・・・・。
「どっ、どうしたの?」
「僕の名前は・・・・知ってますか?」
「えっ、凛・・・・でしょ?」
「じゃあ、僕の仲間の名前は?」
「亜修羅と、明日夏でしょ?」
そう言われて、僕はやっと栞奈ちゃんだって気づくことが出来たけど、こんな風に確認しなかったら、今目の前にいる人が栞奈ちゃんだって気づかなかったかもしれない。
それにしても・・・・凄く綺麗だと思う。そう思ったからか何なのかわからないけど、何だか凄くドキドキして来て、栞奈ちゃんの顔が見れなくなって来た。
僕は、転んでしまった栞奈ちゃんの手を取って立ち上がらせると、後ろを向いた。そんな僕の行動を不思議に思ったのか、栞奈ちゃんは首をかしげている。
「どうしたの?」
「あっ、いや、あの、え~っと、あはは!なんでもないよ~」
「でも、その割には、後ろ向いたままだしさ・・・・もしかして、似合ってない?この服?」
そう言われて、僕は全力で首を振る。むしろ、似合い過ぎてて、僕がこんな風になってるんだろうけどな・・・・。
「そっか、それならよかった!これなら、亜修羅も驚いてくれるかな?」
「うっ、うん、そうなんじゃないかな~」
出来るだけ上ずった声にならないように言うと、僕は小さく息を吐いた。ドキドキしてて、少し胸が苦しい。これはまるで・・・・病だ。
「ちょっ、ちょっと僕、体調が・・・・」
そう言って、僕はこの場を離れようとしたけれど、栞奈ちゃんに引き止められて、力が抜ける。
「体調悪いの?それなら、私も付き添おうか?」
「ううん、大丈夫だよ!」
僕は笑顔で言うと、さりげなく栞奈ちゃんの手を外した。そして、慌てて話題を変えようとする。
「そう言えばさ、今日は亜修羅とのデートじゃなかったの?」
「えっ、あっ、うん・・・・」
僕がデートの話題を言い出した途端、栞奈ちゃんの顔が曇り、うつむいてしまった。僕は、どうしていいのかわからずに、とりあえず、何があったのか聞いてみることにした。
「・・・・どうしたの?」
「ううん、なんでもないの。それよりも、体調悪いんだったら、早く帰って寝た方がいいよ?」
「そうだね!・・・・うん、そうすることにするよ!」
「そうそう。無理しちゃダメだよ?」
「わかってるって!心配してくれてありがとね!」
僕は栞奈ちゃんにお礼を言うと、家に帰るフリをして・・・・そのまま、駅前広場に戻って来た。別に、何がある訳でもないけど、栞奈ちゃんの様子がとても気になったんだ。だから、ここでしばらく様子を見ようと思ったんだ。
それに・・・・亜修羅が来るまでに、変な奴とかに絡まれるかもしれないからさ。
僕は、何とか自分に言い訳をすると、影からこっそりと栞奈ちゃんを見守ることにした。