裏があるようです
表通りに出ると、どうして迷ってしまったのかと思うほど簡単に家に戻ることが出来た。
「ごめん、竜君、メモ飛ばされちゃって・・・・」
僕がそう言いながら家の中に入ると、竜君は、僕が外出した直後のように、冷蔵庫を開けていた。
「ん?メモ忘れたのか?」
「そうそう。遅くなっちゃってごめんね」
僕がそう言うと、竜君は不思議そうな顔をして首をかしげた。
「どうしたの?」
「いや、遅くなっちゃって・・・とか言ってるけどよぉ、さっき出て行ったばかりじゃねぇか」
「えっ?」
「そうだよな?」
そう言って竜君が同意を促したのは、僕が出かける前にはいなかった桜っちだ。
「はい、今さっき出て行ったばかりだと思いますが・・・・」
「あれ?桜っち、いたの?」
「えっ、ええ・・・・僕は、ずっとここにいましたよ?」
僕は、何だか訳がわからなくなって来て、頭が混乱してきた。
確か、僕が買い物を頼まれた時、桜っちはいなかった。そして、買い物に行ったはいいけど、僕は、買い物メモを風に飛ばされて道に迷って、優美さんに助けてもらって・・・・。
「ん?変な奴だな・・・・とにかく、もう一回メモ書くからよ、行って来てくれよ」
竜君はそう言うと、買って来るものをメモして、渡してくれた。僕は、頭が混乱するものの、仕方なく買い物に行こうとしたその時、竜君に引き止められる。
「おい凛。お前、でかける時マフラーなんかして行ったか?」
「えっと・・・・」
僕は、どう答えていいのかわからず、首を振ると、そのまま逃げるように竜君の家から飛び出した。
何だか色々変な感覚だ。僕は、もう一度優美さんに会おうと思った。そして、色々聞いてみようと思ったのだ。
外の景色は、僕が最初出て来た時と変わらない。カップルが沢山いて、イルミネーションが綺麗でキラキラしてる。
そして僕は、優美さんと初めて出会った横断歩道で立ち止まった。これに特に意味はなくて、ただ、信号が赤だったから止まっただけなんだ。
すると、後ろから声をかけられたんだけど、それが聞き覚えのある声だと言うことに気づいて、僕は後ろを振り返った。すると、そこにいたのは、優美さんではなく、弟の雅さんだった。
「あっ、あの・・・・雅さん!僕、どうなっちゃったんでしょうか?!」
僕はパニックになって、つい大声でそんなことを聞いてしまった。すると、雅さんは口の前で人差し指を立てて、静かにしろと言っている。
「ごっ、ごめんなさい。でも、どうして・・・・」
「とりあえず落ち着いて」
雅さんに諭すように言われて、僕は深呼吸をして呼吸を整える。そうすると、やっと落ち着いて来た。
「とりあえず、横断歩道を渡ろう」
雅さんに言われて、僕は、大きく深呼吸をしながら横断歩道を渡った。何だかわからないけど、心臓がドキドキしていて、走って来たみたいに息が荒くなって来る。何かおかしい。
そう思いながら横断歩道を渡り切った時、僕の目の前が突然真っ暗になった。そして、雅さんは愚か、周りに人が誰もいなくなり、横断歩道も車も信号も、音すら何も聞こえなくなった。
僕は、どうしていいのかわからず、なぜか熱くなって来た為、マフラーを外した。その途端、頭の中に、ある映像が浮かんで来る。
そこには、小さい子供とお父さん、お母さんが並んで歩いているところだ。これは、僕の記憶じゃない。僕の両親は、ほぼいないに等しい。こんな風に仲良くしていたことなんかなかった。それじゃあ・・・・誰?
僕がそう思っていると、どんどん映像が変わって行き、今度は、生まれたばかりの赤ちゃんと、四歳ぐらいの男の子がいるのが見える。
おかしいなと思う。そして、自分はどうしてしまったのかと不安に思った時、突然耳鳴りがしたかと思ったら、当たりが明るくなって、そのあまりの眩しさに目が眩んだ。
しばらくの間は眩しくて目が開けられなかったけれど、やっと開けられるようになった時に見た景色に、僕は思わず首をかしげた。
そこに広がっていたのは、綺麗な草原に青い空、白い雲に綺麗な水。なんと現せばいいのかわからないけれど、きっと、楽園や天国って言うのはこんな感じなんだろうなって思うようなところだったのだ。
僕が困惑して首をかしげていると、急に後ろから声をかけられた。
「もしかして・・・・丘本君?」
「えっ?」
僕は慌てて後ろを振り返ると、そこにいたのは優美さんだった。僕はもう訳がわからなくて、頭が痛くなって来た。
「ここ、どこですか?」
「・・・・そっか。もしかして、君も、雅と同じ能力を持ってるのかな?」
「えっ?」
「うーん、わからなかったとは言え、混乱させちゃった訳だし、ちゃんと説明するよ」
優美さんは僕の傍まで来ると、その場に座った。僕も、それに続くように座ると、優美さんが口を開いた。
「率直に言うと、ここは死の世界」
「えっ!?それじゃ・・・・」
「そう。俺は死んでる」
「でっ、でも、僕達の生きてる世界にいましたよね?」
「俺が君達の世界にいたのは・・・・まぁ、話せば長くなるから、それよりも先に、どうして君がここに来てしまったのかと言うことについて説明しようか」
「はっ、はい・・・・」
「雅の持ってる能力って言うのはね、俺みたいな死んだ者と話すことが出来る。それだけだったら結構出来る人が多いと思うけど、もう一つ凄いのが、霊界に来ることが出来るんだ」
「霊界?」
「そう。冥界は、妖怪が死んだ後に行く場所。霊界は、人間が死んだ後に行く場所。だから、雅と君の能力は多少似ていると思うが、結構違うんだよ」
そう言われて、実は、僕が妖怪だってことに優美さんは気づいてるんじゃないかなと言う気になってきた。だって、普通に、妖怪は冥界に行くとか言ってるんだもん。
「もしかして、僕が妖怪だって、気づいてました?」
「うーん、そうかなっとは思ってたけどね、確証はなかった。君の能力は、多分、冥界へ行くことが出来るんだろう?」
「はい、詳しく言うとちょっと違うんですが、そんな感じです」
「多分、君がこっちの世界に来ちゃったのは、俺が君にマフラーなんかを貸しちゃったのがいけなかったみたいだね」
「これ・・・・ですか?」
僕が、持っていたマフラーをに視線を落とすと、優美さんは大きくうなずいた。
「そう。俺がいつも持ってるマフラー。と言うことは、もちろん、霊の気が沢山ついてる。それを、君がつけてしまったことによって、君は霊界に来てしまったんだ」
「そうなんですか・・・・」
「ごめんね、妖怪かな?とは思ってたけど、そんな力を持っていることを知らなくて・・・・」
「そっ、そんなに謝らなくて大丈夫です。僕なんか助けられた身なのに、優美さんに謝ってもらっちゃったら、僕、どうすればいいか・・・・」
「そっか、そう言ってくれるとありがたいよ。今説明したことは、理解してくれたかな?」
「はい!」
僕が元気にうなずくと、優美さんは微笑んで、大きく息を吐いた。
「それじゃあ、次に、どうして死んでしまったはずの俺が人間界に行っていたのかと言うことを説明しようか・・・・」
「はい」
優美さんの雰囲気が急に沈んだのを感じて、僕は、真剣な顔をする。もしかしたら、とても重い話なのかもしれないと思ったからだ。