子供だって、気づかいは出来るんです!
「えーっと、今日は肉じゃがだから・・・・」
そう呟きながら冷蔵庫の中を見ていた時、玄関のインターホンが鳴った。私は、急いでエプロンを外してドアを開けた。そこには、金髪の男の子が立っていた。この子は確か、今日伊織君が連れて来た子・・・・?
「えっと・・・・」
「招待状が届かなかったのか?」
「えっ、招待状?」
「ああ。僕が送った招待状、届けに来なかったのか?」
「招待状?あっ、もしかして、これのこと?」
私は、エプロンから封筒を取り出すと、金髪の男の子に見せた。すると、大きくうなずいた。
「中身を見なかったのか?」
「えっと・・・・見たよ?」
「なら、なんで、何も言わなかったんだ?その封筒の中には、音声認識装置が入ってて、あんたが何か言葉を話したら僕に伝わるのに。それとも、僕の字が汚過ぎて読めなかったのか?」
そう言う男の子の顔は、何だか不安そうだから、もしかしたら、うなずいちゃいけないのかもしれない。
そう思った私は、慌てて首を振った。確かに、字はちょっと汚かったけど、読むことは出来るもん。
「ううん、読めたよ。でもね、どうしたらいいのかわからなくて・・・・。それに、せっかくパーティーの招待状をくれたのに悪いんだけど、パーティーには行けないんだ」
「・・・・なんでだ?」
「うーん、今日はちょっと用事があって・・・・。それに、私は君のことをよく知らないのに、パーティーに参加するなんて悪いからさ、ごめんね?」
私がそう言うと、その子は少し考え込んだ後、私に向かって手を差し出して来た。
「僕は、葉月聖夜。あんたは?」
「えっ、私!?」
突然自己紹介をされたかと思ったら、急に名前を聞かれてうろたえた。でも、慌てて自分の名前を告げる。
「なるほど、石村友美か・・・・」
「・・・・どうしたの?」
「なんでもない。そうか、来れないのか・・・・。それは残念だな」
「うん、ごめんね?でも、どうして私をパーティーなんかに招待しようとしてくれたの?私、聖夜君とは教室で会ったのが初めてなのに・・・・?」
「うん、そうだ。普通なら、僕は、出会ったばかりの者を誕生日パーティーには呼ばない」
聖夜君は、一端そこで言葉を切ると、私に手招きをして来た。私は、首をかしげながらも聖夜君に近づくと、耳元でコソコソッと言われた。
「あんた、修のことが好きだろ?」
「えっ!?」
私は、まさかそんなことを言われるとは思わなかったから、変な声を上げてしまった。その声がうるさかったのか、聖夜君は少し不機嫌そうな顔で私のことを見ている。
「パーティーには、修も出る。だから、あんたもどうかと思ったんだ」
「なっ、なんでわかったの?」
「やり取りを見れば、手にとるようにわかる」
そう言って得意げな顔をする聖夜君は、まだ幼くて、恋愛とか気にしないぐらいの歳に見える。それなのに、私の気持ちを理解して、助けようとしてくれるなんて・・・・。
「・・・・どうしたんだ?」
「えっ?」
「だって、なんだか変な顔してるから・・・・」
「ちょっと嬉しくてね。でも、ごめんね」
「ううん、気にしなくていい。僕は、あくまでも、あんたを困らせるつもりで言ったんじゃないしな。じゃあな」
聖夜君はそう言うと、少し寂しそうに出て行った。