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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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小さなことを気にする、案外可愛い子なのです

「どうした?」

「いや、別に、なんでもない・・・・」


俺が聖夜の家に帰って来ると、ソワソワした様子の聖夜が待っていた。最初は、誕生日パーティーが嬉しいからソワソワしているのかと思っていたが、どうやら違うようだから、俺は聞いてみたのだ。


「なんでもなくはないだろう?妙にソワソワしてるぞ?」


「なんでもないんだ。ちょっと色々あってな。ああ、そうだ。お前も、ちゃんと正装するんだぞ?」


「・・・・正装?」


「僕は、別にそう言うことに細かくないんだけどな、僕の世話係の奴がうるさくてな。だから、正装で参加してくれよ?」


「正装・・・・って、なんだ?」


俺の質問に、今までソワソワしていた聖夜が、一瞬だけ動きを止め、俺の方を見た。そして、即座に目をそむけると、ブツブツと何かを言っている。その態度が気に食わなくて、俺は、聖夜の額を小突いた。


「おい、そんな風にブツブツ言うことを俺は求めてるんじゃないんだ。早く答えてくれ」


「しっ、しかし、まさかお前が正装と言う言葉すら知らないとは・・・・」


「悪いか?俺は、まだ人間界に来て三ヶ月ぐらいしか経っていないんだ。そんなに沢山の言葉を覚えられる訳ないだろう?」


俺がそう言うと、聖夜は納得してないような顔をしたけれど、仕方なさそうにため息をつくと、「正装」と言う言葉の意味を教えてくれた。


「正装って言うのは、その字のとおりだ。正しい格好。それが、正装の意味だ」

「なるほどな・・・・」


俺は、モヤモヤの原因が晴れてよかったのだが、聖夜は、何だか少し呆れ顔をしている。その表情がムカつく為、俺は再び聖夜の額を小突いてやった。


「とにかく、僕は忙しいんだ!お前は、パーティーの為に服を準備しておけ!」

「は?」

「じゃあ、人に選んでもらえ。今から、ここに人を呼ぶから、そいつに探してもらえ!」


聖夜はそう言うと、意味のわかっていない俺を無視して部屋から出て行ってしまった。


・・・・俺、なにか悪いことしたのか?


自然とため息が出るものの、人を寄越すと言っていた為、その場所で突っ立って待っていた。








「全く、どうしてあいつはああも・・・・」


ため息をつきながら、修のいる部屋を見る。あいつは不思議な奴だ。性格的には僕の嫌いなタイプのはずなのに、なぜか、一緒にいると、本当の自分が出てしまう。本当に変な奴だ。


・・・・いや、そんなことはどうでもいいんだ。今は、このことを考えてる場合じゃない。


「おい、控え室に修がいるから、服を選んでやってくれないか?」

「左様でございますか」


「ああ、色々めんどくさい奴だろうが、怒らないでやってくれ。じゃあ、頼んだぞ!」


「聖夜様、一体どこに行かれるんですか!?」

「ちょっと、知り合いの家だ!」


僕はそれだけ言うと、これ以上うるさく言われないように走り出した。車庫に向かっている途中、何人かの奴に走っては危ないと言われたけれど、そんなことはどうでもいい。


車庫に着くと、丁度車から出て来た磯崎に言う。


「磯崎、車を出してくれ」

「わかりました。行き先はどこにいたしましょうか?」


「さっき行った女の家だ」


「石村様の家ですね」

「ああ」


うなずきながら車に乗ると、磯崎は車を出した。


僕は、流れていく景色を眺めながらため息をついた。どうしてあの女は、僕が招待状を出したと言うのに来ないのだろうか・・・・。僕が直々に招待状を書いてやったと言うのに・・・・。それとも、手書きだから、いたずらだって思われたのか?


そう思って、自分の字を思い浮かべてみる。そして、その可能性は十分あるなと思う。とてもじゃないが、僕の字は綺麗とは言いがたい。だから、子供のいたずらだと思われたかもしれない。


「なぁ、僕の出した招待状、子供のいたずらと思われたのかな?」


僕が問いかけるけれど、磯崎は何も答えない。磯崎は、嘘をつく奴じゃない。だからと言って、僕を傷つけるようなことを平気で言うような奴でもない。と言うことは、今黙り込んだのは・・・・。


「なるほどな、言いたいことはわかった」

「聖夜様・・・・」

「いや、大丈夫だ。僕は、落ち込んでなんかないからな!」


そうは言うけれど、何だか嫌な気分になって来た。やっぱり、習字の練習をしておけばよかったのか・・・?もっと字が上手ければ・・・・。


「聖夜様、まだそうと決まった訳ではございませんよ?もしかしたら、招待状に気づかなかったのかもしれませんし・・・・」


「そんなことはないと思うぞ。だって僕は、人間に招待状を渡しに行かせたんだ。気づかないことはないと思うぞ?」


「・・・・そうでございますね」

「ああ」


言葉ではそう言うものの、磯崎の言葉もありえなくはない。


「とにかく、調べる為に行くんだ」

「そうでございますね」

「ああ」


「・・・・聖夜様?」

「ん?」


「あまり気落ちなさらないで下さいね」

「・・・・」


磯崎の言葉に、自然とため息が出る。でも、今度のは、磯崎に聞こえないように小さくだ。


「聖夜様、目的地に着きましたよ」

「あっ、ああ」


僕は慌ててうなずくと、急いで車から降りた。


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