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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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クリスマスプレゼントは、二人目の理解者

階段を下りてリビングに行くと、意識を取り戻して起き上がっている黒川君がこっちを向いた。その顔が、なんだか悲しそうで、僕は、思わず足を止めた。


「どうした?」

「えっ、あの、はい・・・・」


番長に聞かれて、僕は、なんでもないと言うように首を振ると、黒川君の近くに座った。


「・・・・ごめんね」

「えっ?」


「いや・・・・さ、色々と。俺がついて来てなんて言わなかったら、桜木君はあんな思いをしなくて済んだだろうしさ」


「気にしないでよ!僕は、全然大丈夫だから」


僕がそう言うと、黒川君は少し表情を緩めたけれど、直ぐにまた、悲しそうな顔をした。


「でも、怖かったでしょ?」

「・・・・まぁ、正直言うと、怖かった・・・・かな?」


「やっぱり・・・・」

「でも、番長から聞いて、納得したんだ。だから、大丈夫!」


僕の言葉の意味がわからなかったのか、黒川君は困惑した表情を浮かべるけれど、正直言って、僕も、自分が何を言いたいのかわかっていない。


だから、自分が発した言葉を思い返して、首をかしげるばかりだった。でも、なんとか僕の思っていることを伝えようと思った。


「えっと・・・・中々難しいんだけど、僕は大丈夫なんだよ」


「怖くないの?」

「怖い・・・・?」


「そう。あの人格以外にも、俺の人格はある。そんな風に、コロコロ人格が変わる奴と関わっているなんて思うと、怖くなるんじゃない?」


僕は、何も言えなくて、ただ黙り込んでしまった。


「それから、どうして俺が高徳中に通ってるかってことを言ってなかったよね。それは、この力のせいなんだ。今は、これでも大分力の制御が出来るようになって来たけど、昔はもっと酷くてね、不本意に人を傷つけることが多かった。だから、高徳中に入れられたんだよ」


「そうだったんだ・・・・」


「うん。それに、高徳の副番長と仲がいいなんてバレたら、桜木君は何も悪くないのに、周りから変な目で見られちゃうよ?」


そうやって話している黒川君は、まるで、自分から僕に嫌われようとしている感じだった。しかし、僕は、嫌うつもりは絶対なかった。


言葉では、嫌われようとしているけれど、黒川君の表情はとても悲しそうで、今にも泣いてしまいそうだった。言葉では嫌われようとしてるけど、本当は、嫌って欲しくないはずだ。


「僕は、黒川君のことを嫌ったりしないし、副番長だからってどうも思わない。それに、力の件だって、気持ちを調整する為の器具を取られなければ大丈夫なんでしょ?なら、大体は安全じゃないかな?」


僕がそう言うと、近くにいた番長すらも少し表情を変えた。黒川君はと言うと、ハッとした表情になるけれど、直ぐに首を振った。


「僕が、嫌われようとして言葉をしゃべってるとか思ってるんだろ?そんなことないんだよ?全て本当のことなんだ。もし、可哀相だとか、そう言う同情の気持ちでそう言ってるなら、今直ぐ撤回して欲しいな。期待しちゃうと、後々辛くなるからさ・・・・」


「別に、同情とかの気持ちで言ったんじゃないよ。そう思ったから言っただけ」


僕がそう言うと、黒川君はうつむいた。すると、今度は番長が聞いて来た。


「また、あの怪音を聞くことになるかもしれないんだぞ?」


「はい、大丈夫です。僕、まだ言ってなかったと思うんですけど、実は、普通の人間じゃなくて、妖怪と互角に戦うことが出来るんです!もちろん、その為の訓練としてかなり大変なことも乗り越えて来たので、大丈夫ですよ!」


僕がそう言うと、番長はため息をついて、黒川君の方を向いた。黒川君はと言うと、ただ無言のままうつむいていて、どんな表情をしているのかわからない。


「・・・・そっか」

「どうしたの?」


「・・・・ううん。なんでもないよ。ただね、嬉しいと思った。久しぶりだよ、ここまで嬉しいと感じたのは・・・・」


そう言う黒川君の声は震えているような気がして、僕は、「大丈夫?」と声をかけたかったけれど、かけられなかった。


「クリスマスプレゼントなんて、今までもらったことなかったんだけど、それは、この日の為にとってあったってことなんだね」


僕は、どう答えていいのかわからず、何も言えなかった。すると、番長が僕の肩をポンポンと叩いたかと思うと、「ありがとう」と言った。


それにはさすがに驚いて、僕はしばらくの間固まってしまった。だって、まさか、番長からお礼を言われると思ってなかったから・・・・。


「・・・・そんなに驚くことか?」

「いっ、いえ、気にしないで下さい!」


「・・・・わかった」

「はい」


僕は、一応うなずいたものの、それから何を言えばいいのかわからずに、黙り込んだ。それは、黒川君達も一緒で、何も言わなかった。


すると、ちょうどいいところに竜さんが階段を下りて来て、僕らの雰囲気に首をかしげた。


「ん?どうした?」


「あっ、竜さん、心配かけてすみません。もう俺、元気になったんで、帰ってもらって大丈夫ですよ?」


「でも・・・・大丈夫か?あいつらと遊ぶのは、結構ハードだぞ?」

「はい、大丈夫です」


「そっか・・・・。んじゃ、俺達は帰るか、明日夏!」


「えっ!?・・・・あっ、はい」

「じゃ、お大事になぁ~」


竜さんはそう言ったかと思うと、僕の腕を引っ張って、強引に番長の家から出た。


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