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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
224/591

子供の相手はとても大変です

「・・・・」

「・・・・」


番長の家に上がらせてもらったはいいけど、どうしていいかわからなくて、僕はずっと黙っていた。それは、番長も同じみたいで、意識を取り戻さない黒川君の方をじっと見て黙っている。


どれくらい沈黙が続いたかわからないけど、そろそろ限界かなと思っていた時、玄関の鍵が開けられる音がして、子供達の騒ぐ声と一緒に竜さんの声が聞こえた。


「ん?お前等、黙り込んで何やってんだ?」

「いっ、いえ、なんでもないですよ!」


僕がそう言うと、竜さんは、意識を取り戻さない黒川君の方を向いて、今までの経緯を理解したみたいだ。


「まぁ、とりあえず、こいつらの面倒を見ててくれよ」

「えっ!?」


「昨日遊ぶって約束したんだろ?それを破ってどこか行ったから、こいつら拗ねちまってよ、大変だったんだぜ?」


「あっ、すみません・・・・」

「気にすんなよ、あの銀髪に比べりゃ、可愛いもんだからよ」


竜さんはそう言って笑ってくれたから、なんだかホッとした。今までずっと緊張していた体がほぐれていくような気がした。


「お兄ちゃん!昨日約束したのに、どこに行ってたの!?」

「ごめんね・・・・ちょっと、でかけなくちゃいけない用事があって・・・・」


「でも、約束は守らなきゃダメだって、教えてもらわなかったの?」


「そっ、そうだよね、いくら大事な用事でも、約束は守らなくちゃいけないよね・・・・」


本当は、「高徳中に行くことに賛成したのは君達じゃないか!」と言う気持ちはあるけど、約束を破ってしまったこと自体かわりないから、僕は、何も言わずに謝っていた。


「そんなに謝るなら、今から遊んで!」

「うん、いいよ」


僕がそううなずいた途端、沢山の子供達が僕の周りを取り囲んで立ち上がらせようと必死に腕を引っ張って来るから、とても大変だ。


「ちょっ、ちょっと待って!大丈夫だから、逃げないから、引っ張るのはやめて!」

「ダメだよ!早く二階行こう!」


そうして僕は、子供達に服を引っ張られながら、二階に上って行った。二階には、誰かの寝室と思われる部屋と、仏壇が置いてあった。


「この部屋はね、パパとママのお部屋なの。でもね、パパもママもいなくなっちゃって、今は、私達のお部屋なんだ!」


一人の女の子が元気にそう教えてくれたけど、僕は、なんだか浮かない気持ちになった。きっと、こんなに幼いのに、僕達に心配をかけないように必死で悲しさを堪えてるんだと思う。


そう考えると、なんだかとても悲しくなって、思わずため息が出てしまった。


「どうしたの?お兄ちゃん、どこか痛いの?」

「どうして?」

「だって、物凄く悲しそうな顔してるんだもん。僕がおまじないかけてあげよっか?」


「おまじない?」

「うん、ママがよくやってくれたおまじない!特別に、お兄ちゃんにも教えてあげる!」


和馬君はそう言ったかと思うと、僕の手を取って、念をかけるようにしゃべらなくなった。それを見てなのかわからないけど、今までずっと僕の服や手を引っ張って騒いでいた子供達が静かになって、和馬君の方をじっと見ている。


僕は、何かに集中してるのかと思って、出来るだけ黙っていようと思った。


「うーん、うーん、うーん」

「どっ、どうしたの?」

「えっとね・・・・言葉、忘れちゃった!」


その言葉に、誰からともなく笑い出して、僕もつられて笑った。


「お兄ちゃん、もう痛くない?」

「うん、大丈夫だよ」

「そっか、じゃあ、おまじない、利いたんだね!」


和馬君の言葉に、僕は思わず黙り込んだ。もしかして、和馬君は、僕の考えていることがわかって、笑わせようとあんなことをしたのかな・・・・?


「もしかして、和馬君、僕の気持ち・・・・」

「ほら、お兄ちゃん、元気になったんだったら、早速遊ぼうよ!」


和馬君は、僕の言葉を遮るように言うと、部屋の隅からおもちゃ箱を取り出して、部屋におもちゃをぶちまけた。


「ああっ!ダメだよ、そんな風にばら撒いちゃ!」

「いいの。ゆうゆ、いつもこうやって遊んでくれるの」


「そっ、そうなの?」

「うん」


黒川君がそうやってこの子達を遊ばせているのであれば、それでいいのかもしれないと思い、注意するのをやめる。


「明日夏、こっち来て」

「えっ?」

「早く!」


突然、一人の女の子に腕を引っ張られて、部屋を出る。


「どっ、どうしたの?」

「あのね、お姫様ごっこしたいの。だからね、王子様役になって!」

「えっ、でっ、でも、王子様って、どんな感じのなの?」


僕がそう聞くと、女の子達が沢山集まって来て、王子様の話しを沢山してくれるけど・・・・。意味がわからないものばっかりだ。


「えっと・・・・少し、落ち着いて話そうよ?」

「でもね、王子様って言うのは、お姫様を助けてくれるの!」


「白いお馬さんに乗った王子様もいいけどね、私は、茶色のお馬さんに乗った王子様もいいと思うの!」


「あっ、あのね、少し落ち着こう・・・・」


僕がそう言った時、突然後ろから誰かにタックルされて、なす術もなく倒れる。何とか、女の子達にはぶつからないように倒れるけれど、そのせいで変に体をねじってしまって、自力で起き上がることが出来なくなってしまった。


「お兄ちゃん、大丈夫!?」

「うっ、うん・・・・なんとかね」


「涼介が突き飛ばすからだぞ!」

「悠介が突き飛ばすのが悪いんじゃないか!」


そう言って、二人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。僕は、慌てて起き上がろうとするけど、背中がつってしまったようで、全く起き上がれない。


「大丈夫?」

「ちょっ、ちょっと、大丈夫じゃないかも・・・・」


「わかった!私、恭介兄ちゃん呼んで来る!」

「あっ、待って!せめて、竜さんにして!」


何とかそう言ったけど、女の子は聞こえてないみたいで、そのまま階段を下りて行ってしまった。どうして竜さんにしてと言ったのか。それは、番長が怖いからだ。ただ、それだけなんだ。


女の子が番長を呼びに行って三十秒後、階段を上って来たのは竜さんで、僕は安堵のため息をついた。


「おいおい、どうしたんだよ、そんなところで寝転がって」


「あっ、竜さん。すみませんが、助け起こしてもらえますか?あっ、でも、それより先に、あの子達の喧嘩を止めて下さい!」


「なるほどな・・・・」


竜さんはそう言うと、取っ組み合いの喧嘩をしている二人を止めた後、僕を助け起こしてくれた。


「ったく、もう喧嘩しちゃダメだぞ?」

「・・・・は~い」

「こいつは、お前等の喧嘩に巻き込まれたんだからな、ちゃんと謝っとけよ」


「ごめんなさい」

「ううん、気にしなくて大丈夫だよ」


「・・・・で、思ったんだが、明日夏には向かないみたいだな、子供の相手」

「えっ?」


「と言う訳で、ここは俺が請け負うからよ、下に行ってろ。遊が意識を取り戻して、話がしたいんだとよ」


「あっ、はい。すみません」

「謝るなよ、お前は悪くないって」


竜さんはそう言ってくれたけど、やっぱり申し訳なくて、もう一度謝った後、階段を降りて行った。


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