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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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人を信用するのは、とても難しいことであって、とても簡単なのです

「そろそろ帰った方がいいんじゃないかな?」

「そうだなぁ・・・・おいお前等、そろそろ帰った方がいいんじゃねぇか?」

「僕達のことは気にしないで大丈夫ですよ」


「そうか・・・・あっ!」


「どっ、どうしたの?竜さん?」

「シュークリーム買うの忘れてたぜ・・・・。お前等は、先に帰っててくれ」

「わかった!じゃあ、光さん達と一緒に帰ってるね!」


瑠憂君はそう言うと、二人の言葉も聞かずに走って帰ってしまった。僕はと言うと、どうしていいかわからず、竜君の隣で立っていた。


「凛は帰らねぇのか?」

「あっ、うん。付き合うよ」

「おっ、おう・・・・」


竜君は少し困惑した顔をしたけれど、歩き出した。


あの後、僕らは三軒のラーメン屋に行った。そして、これから四軒目に行こうかと言う話をしていた時に、竜君がシュークリームのことを思い出したんだ。


「なんだか不思議な言い回しだな?」

「きっ、気にしないでよ・・・・」

「おお、そうだ。お前は、今日出かけないのかよ?」

「えっ、なんで?」


「いや・・・・彼女とかいねぇのかなってよ」

「かっ、彼女!?」

「まぁ、凛自身が女みてぇだけどな!」

「う・・・・そんな言い方ないじゃんか!それよりも、竜君はいないの?」


僕がそう言うと、竜君は少し難しそうな顔をした後、ため息をついた。


「凛は、今まで人を好きになったことってあるのか?」

「えっ・・・・まっ、まぁ・・・・あるかな?」

「俺は・・・・ねぇんだ」


そう言う竜君の顔がなんだか悲しそうで、僕は、どう言葉を返したらいいのかわからず、かなり慌てた。


「そっ、そうなんだ・・・・。でっ、でもさ、竜君はまだ若いんだし、それに、早いうちに初恋をしなくてもいいんじゃない?」


「まぁ・・・・なんつーか、これから先、人を好きになるようなことはないだろうなってことはわかる」


「どっ、どうして?」


「うーん、難しいけどな、そんな予感がする。今まで、そんな感情を持ったこともねぇし」


「・・・・そうなんだ」


一応肯定の言葉を話したものの、本当は、そんなことはないと思っていた。確かに、今まで人のことを好きになったことがなくても、きっと、いつかは好きになることが出来ると思う。


「まぁ、仕方ねぇよな。色々あったし」

「色々・・・・?」


「ああ、いろいろなことがあって、人を信用出来なくなった。だから俺は、生涯誰も愛すことはないだろうって」


「・・・・?」


やっぱり、竜君には、僕が思う以上に辛い過去があるのかもしれない。本当は、それを聞いてみたかった。でも、過去の傷と言うものは、そう容易く触れていいものではないとわかってるから、聞かないでおいた。


「そうだよね、人を信用することって、とても大変だと思う。でも、それと同じくらい、人を信じるって言うことは、簡単なことなんだよ」


「・・・・難しいこと言ってるなぁ?」

「うん。少なくとも、水樹君達といる時は、本当の自分でいられるんでしょ?」

「どうなんだろうな・・・・」


「僕もね、昔色々あって、人を信じれなくなってたんだ。まぁ、最初に亜修羅に近付いたのは僕だけどね、本当は、いいように使って騙すつもりだった。でも、いつの間にかそんな気持ちがなくなっていて、今では、家族だって言えるほど信用出来るようになった。だからきっと、竜君も信用出来る人に出会えると思うよ!女性とは限らないけど・・・・ね?」


僕がそう言って竜君の方を見ると、うなずきながら笑ってくれた。


「そうだな・・・・。って、んなのはどうでもいいんだ」

「・・・・へ?」

「お前の彼女の話だろ?なんで話し逸らしてんだよ!」


「ええぇ・・・・別に、いないもん。悪いの!?」

「そっ、そんな怒るなって・・・・」

「でもさ、なんでそんなこと聞いて来るのさ?」


「いやさ、栞奈っているだろ?あいつが修のこと気になるみたいだからよ、デートに誘ったらどうだって言ったんだ」


「へぇー、で、どうしたの?」

「ん?それで、お前もどっか行くんじゃないのかなってな」

「残念ながら、僕にはそんなことないよ!」


「・・・・よし、それなら、寂しい者どうし、ケーキでも食うか!」


「なっ、寂しい?」

「おうおう、気にすんな!ほら、お前もケーキ好きだろ?」

「うっ、うん・・・・」


僕は、なんだかよくわからないまま、竜君に連れられて、ケーキ屋の中に入った。


「そうそう、ここのケーキ屋でな、修達と会ったんだよ」

「そうなの?」

「ああ。ここでな、クリスマスケーキをキャンセルしに来たあいつらと会ったんだ」


「げっ・・・・亜修羅達、本当にクリスマスケーキをキャンセルしに来たの!?」

「ああ。そこに、偶々クリスマスケーキを買いに来た俺が会ったって訳だ」

「そうなんだ・・・・」


亜修羅のことだから、もしかしたら、キャンセルするとは言ったものの、実はキャンセルしてなかったと言うことを想像してたんだ。でも、本当にキャンセルする予定だったんだね・・・・。


「おいおい、大丈夫か?」

「えっ?何が??」

「ほら、好きなケーキ選べよ。なんでも買ってやるから、元気だせ」

「うん!」


少しだけ傷心していた僕の心は、竜君の言葉によって完治した。やっぱり竜君は、亜修羅とは違うね!凄く優しいもん!!


「・・・・そりゃどうも」

「あっ、そっか、聞こえちゃってるんだもんね」

「ああ。で、何が欲しいんだ?」


「じゃあ、これと、これ」

「遠慮しなくていいぞ?これもクリスマスプレゼントだと思ってよ」


「遠慮なしでいいのか・・・・ほんとに?」

「ああ、どんと来い!」

「じゃあ、遠慮なくします!ここから、ここまでのケーキを、五個ずつ!」


僕のその言葉に、さすがの竜君も引きつった笑顔を浮かべたけど、本当に買ってくれた。これには、言った僕もびっくり。ふざけ半分で言った言葉だから、本当に買ってくれるとは思ってなかったんだ。


「本当によかったの?」


「ああ!俺も沢山食いたいし、それに、俺はお前の保護者じゃないんだからな、優しくしてもいいだろう」


「おおっ!亜修羅とは優しさが違いますね!さっすが~!」

「いててて、叩くなって・・・・。お前の力は強いんだからよ・・・・」

「あっ、ごめん」


つい、いつもの調子で竜君を叩いちゃって、慌てて謝る。亜修羅達を叩く強さで叩いちゃったら、普通の人間にはかなり痛いと思うからね。


「さぁ、早く帰ろうぜ!あいつらが何かしでかしてないか不安だからな」

「そっ、そうだね・・・・」


陽君達はともかく、瑠憂君は結構やんちゃだから、竜君がいないことをいいことに、暴れてるかもしれないからさ。


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