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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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なんだか、面倒なことになりそうです

「それじゃあ、僕は色々と準備があるから、修は先に家に入っててくれ」

「・・・・俺は、家には帰れないのか?」


「帰ってもいいが、僕の誕生パーティーに参加するんだろ?それなら、あまり意味がないじゃないか」


「・・・・ふぅ」


本当は、竜の家に戻って一休みしたかった。あそこも落ち着けるような場所とは言えないが、聖夜の家よりはましかと思うんだ。


「でも、どうしても帰りたいって言うなら、帰ってもいい。・・・・でも、時間になったら車を送るからな。その時は、ちゃんと来るんだぞ!」


俺の気持ちがわかったのか、聖夜はすこし気まずそうな顔をして後ろを向いてしまった。それを見て、なんだか申し訳ない気持ちになったが、やっぱり、帰らせてもらうことにした。


「安心しろ。ちゃんと来るから、そんな顔するな」

「なっ!?僕は、どんな顔もしてないぞ!?」

「まぁ、そう言うことだ」


俺は、聖夜の頭を小突くと車に乗った。


実を言うと、後ろを向いていたから、顔は見えなかった。だから、どんな顔をしていたのかわからなかった。でも、なんだか寂しそうに見えたから、ああ言ったのだ。


「伊織様は、聖夜様のことを、本当によく理解して下さっているのですね」

「・・・・は?」

「いえいえ、なんでもございません。お気になさらず」


突然、運転手が意味のわからないことを言って来たから、聞こえていたけれど、聞こえていないフリをしてやった。


別に、俺は、聖夜のことを理解してる訳じゃない。ただ、似てるところがあるから、他の奴に比べればわかるのかもしれない。


「聖夜様は、もともとはとても素直で優しい方なんです」


「・・・・それはどうだろうな。そもそも、年上に対しての言葉遣いもなってないじゃないか。お前等は、どうしてそう言う基本的なことを教えない?」


「我々は、そう言うことを教えることが役目ではないので行っていないのですが、もちろん、家庭教師をやとったこともあります。しかし、二日で皆さんやめていってしまうのです」


「・・・・なるほどな」


運転手の話を聞いて、なんとなくわかった。あいつはあんな性格だから、家庭教師が気に食わなくて、家庭教師を追い出していたんだろう。


「なら、勉強面は別として、どうして言葉遣いぐらいは教えない?」


「機嫌を悪くなさると、暴走を止めるのがとても大変でして、今まで何人怪我人を出したことでしょう・・・・。その度に、聖夜様に言葉を教えようとする者がいなくなり、今では、誰もしなくなりました」


「・・・・」


俺は、無言で窓の外を眺めていた。なんだか、この話の流れはヤバイと思ったのだ。


「そこで一つ、頼みたいことがございま・・・・」

「却下だ!」

「え・・・・?」


「お前の口調から、言いたいことは読めて来たぞ。聖夜が俺に懐いてるから、俺が教えろってことなんだろ?そんなの、嫌に決まってるだろ?」


「そっ、そうですか・・・・」

「それに、聖夜がお前等に懐かないのは、お前等があいつを恐れてるからだろ?」

「・・・・私達が、聖夜様を恐れていると?」


「ああ。動物だって、こっちが嫌ってれば懐いて来ないだろ?それと同じで、人間だって、こっちが恐れていたら、向こうもこっちを恐れるんだよ」


「・・・・はぁ」


「まぁ、あいつを恐れるなって言うのが中々難しい質問だと思うけどな、少しは努力してみろ。俺も、手伝いぐらいはしてやる」


そう自分で言っていて、「何を言ってるんだ!」と思った。これでは、言葉を教えると言うこととほぼ同じくらい面倒なことを背負うことになる。


俺は、慌ててさっきの言葉を撤回しようとしたが、それよりも早くに、運転手の口が動いた。


「確かに、伊織様のおっしゃるとおりですね。私達も少し努力をしなければいけません」

「ああ、そうだ。それで、手伝うと言った件なんだが・・・・」


「手伝って下さると言うことで、我々も少しは勇気が湧いてきました。ありがとうございます!」


この運転手、俺の言葉を絶対聞くつもりはないらしい。正面を向いているから何を考えているのかわからないが、俺にとっては面倒な展開になりそうだ。


普通に考えれば、俺が悪いのだ。でも、俺は時々、思ってもいないことを言ってしまうことがある。その為、面倒なことに巻き込まれることも多いのだ。一番いいのは、無意識にしゃべらないことなのだが、無意識と言うのは、意識してないことをさすのだ。もちろん、意識をしていないのに止めることは不可能だ。よって、俺はいつも、自分の無意識の言葉で、めんどくさいことに巻き込まれるのだ。


「到着しました。伊織様」

「・・・・ああ」


なんとかそれだけ言うと、俺は、重い気持ちで竜の家のインターホンを押した。


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