喧嘩するほど仲がいいといいますが、ホントのところはどうでしょう?
「でも竜さん、本当にいいんですか?おごってもらっちゃって?」
「ああ、気にすんなよ。ん~、いるだけもなんだし、俺もなんか食うか」
「じゃあじゃあ、これなんかどうかな?」
「そうだな!おし、俺これにするわ!」
竜さんが元気よく手をあげてラーメンを注文する。今は、ラーメン屋に来て、ラーメンを食べてるところだ。・・・・言わなくてもわかると思うけど。
「それにしてもなぁ・・・・このラーメン屋、人気なんだな、こうやって席に座るまで何分かかったんだ?」
「確か・・・・二時間ぐらいですかね?そのおかげで、少しお腹に余裕が出来ましたけど」
陽君はそう言いながら、運ばれて来たラーメンを食べる。さっきまでお腹が空いてないからって頼んでなかったんだけど、僕らが食べてるのを見て、お腹が空いちゃったらしい。竜さんも、それとほぼ同じような感じだ。
「やっぱり、人気店だけあって、凄く美味しいね!」
「うん。僕もよく来るんだ。あっ、もちろん、こんな格好でじゃないけどね」
「えっ?変装しないの?」
「まぁ、する時としない時があるね。しない時は、結構大変なことになるけど、滅多にしないから」
光君のその言葉を聞いて、陽君が咳き込む。僕が慌てて水を差し出すと、それを飲んでやっと落ち着いたのか、光君の方を真面目な顔で見る。
「光、変装しないで行くなって言ってるじゃないか。この店にも迷惑がかかるんだぞ?」
「・・・・ごめんなさい」
「いや、僕に謝られても・・・・。まだ、何も起こってないからいいけどさ、もし何か起こった時にこのお店がつぶれちゃったら、困るでしょ?」
「そうだね、うん。今度から気をつけるよ」
そんな二人のやりとりを、僕はうなずきながら見ていた。やっぱり、こう言う光景は、見ているだけでも和む。
それに引き換え、僕らと言ったら、亜修羅が短気だからしょっちゅう喧嘩になっちゃって・・・・。全く、嫌になっちゃうよ。
クリスマスの件だってそうだ。なんだかんだ言って、結局やることは出来たけど、あのままじゃ、クリスマスパーティー中止になるところだったし・・・・。
「何考えてるの?」
「えっ、あっ、クリスマスパーティーのこと。まぁ、結果、出来たからよかったけどさ」
「そうなんだ・・・・。そう言えば、宗介君の保護者は修さんだもんね、確かに、嫌がりそう・・・・」
「そうそう、瑠憂君も思ってるとおり、修は嫌がったんだ。でも、色々あって、結果的にパーティー出来たんだしいいかなって。それに、よく考えてみたら、修がケーキ屋にいたのは、クリスマスケーキを買おうとしててくれたからなのかなって考えたらね」
「そうなんだ・・・・。うん、仲がいいんだね!」
「あははは・・・・」
この話を聞いて、結論が仲がいいと言うのは、僕も予想してなかったから、苦笑いをするしかなかった。でも、僕と修は、本当に仲がいいのかな?
「でも、しょっちゅう喧嘩ばっかりするから、桜っちも大変だと思うし、仲がいいとは言えないんじゃないかな?」
「うーん、僕もね、仲がいいとか悪いとかってあんまりわからないけどさ、喧嘩するほど仲がいいって言うし、その喧嘩って、本気で相手を傷つけるような言葉とか言わないんでしょ?なら、それはいい喧嘩だと思う。それに、本当に嫌いだったら、修さんも宗介君のことを家においてないと思うし、宗介君だっていないでしょ?だから、二人は仲がいいと思うんだけど・・・・どう?」
僕は、正直とても驚いていた。だって、瑠憂君はまだ幼いから、そんな答えが返って来るとは思ってなかったんだ。
「どっ、どうしたの?そんなに驚いた顔して?」
「あっ、ううん。大丈夫だよ」
瑠憂君に聞かれて、慌てて首を振った。竜さんが心を読めるから、この言葉も読まれてしまうかもと思ったんだ。
「そっか、なんだかおかしな顔してたから、気分悪くさせちゃったかと思って。何もないみたいでよかった!」
「うん・・・・」
なんとも言えない気持ちになって、顔を伏せた時、突然ガチャンっと言う食器がひっくり返るような音が聞こえて、慌てて、音のした方向を向いた。
すると、学校の制服を着た学生達が喧嘩をしていた。まだ、殴ったりはしてないけど、もう直ぐそれぐらい酷い喧嘩になりそうだ。
「全く、ここは飯屋だぞ?」
「そっ、そうですよね。でも、どうして喧嘩になっちゃったんでしょうか・・・・?」
「んーっ、わかんねぇ」
「でも、そろそろ止めた方がいいような気もするんだけど・・・・」
「でもよぉ、なんだか柄が悪くないか?下手に手を出して怪我をするのはごめんだぞ?」
竜君の最もな発言に、僕は思わず口を塞いだ。他のお客さん達もそう思っているのか、誰も止めようとしない。ただ只管無視を続けて、ヒソヒソと話し合っている。
その姿が、僕は嫌だった。自分は知らん顔をしてヒソヒソと話し合っている。そんな人達がとても醜く思えた。そして、自分もこんな人と一緒になるのは嫌だと思った。
「僕、ちょっと止めて来る」
「あっ、ちょっと待て」
「この状況を放っておくって言うの?」
「そうじゃない。俺も一緒に行くってことだ」
「えっ?なんで??」
「まぁ、お前がやられるってことはないだろうが、相手の気持ちを読める俺がいた方が便利だろ?だから、ついてくぜ」
「あっ、うん・・・・」
まさか、自分もついていくと言われるとは思ってもなかったから、不意を突かれたけれど、反対されるんじゃなくてよかったと思う。竜君に反対されたら、それを押し切っていける気がしないからね。