クリスマスの朝なのに、ラーメン屋巡りです
「起きてくださーい、朝ですよ~!」
急に部屋のドアをバンッと開けられたと思ったら、何かが思い切り僕の体に乗っかって来た。
「うわっ!」
慌てて起き上がると、そこには瑠憂君がいた。
「おはようございます!」
「あっ、おっ、おはよう・・・・」
「朝ご飯が出来てますよ!」
「あっ、うん」
僕がうなずくと、瑠憂君はやっと僕から退いてくれて、入って来た時と同じように、凄い勢いで部屋を飛び出した。その勢いには、いつも元気だと言われる僕でも、ついていけそうにない。
僕の場合は、偽りの元気ってやつだから、仕方ないって言っちゃ仕方ないのかな?
大きく伸びをした後、布団を綺麗に直してから、一階のリビングに下りて行った。
そこには、竜君と瑠憂君、それから、サンシャインの二人と、水樹君のお兄さんがいた。なんだか、不思議なメンバーだ。
「あっ、おはようございます」
「おお、やっと起きたか。おせぇぞ。もうみんな飯食っちまったよ」
「ごっ、ごめん・・・・」
「宗介さんが遅いから、僕が食べちゃおうと思ったんだけどなぁ~」
「ええ~っ、それは勘弁して・・・・」
からかって来る瑠憂君の隣に座ると、僕は、目の前においてある食事を食べ始めた。そう言えば、サンシャインの二人は仕事とかないのかって聞きたいけど、やっぱり、そんなに仲がいい訳じゃないから、話しかけずらくて、僕は黙っていた。
すると、僕の心を読んだようで、竜さんが僕の疑問を聞いてくれた。
「そう言えばお前等、仕事とかないのか?クリスマスだろ?」
「ああ、仕事なら大丈夫です。今日はちゃんとオフなんで」
陽君は、なぜか僕の方を向いて言った。まさか、陽君まで僕の心を読めたりして・・・・?
僕がそんなことを思いながら陽君の方を見てると、にこっと微笑まれて、僕は、改めてアイドルだなと感じた。
「僕は、別に心を読める訳じゃないよ。ただ、なんとなくそんな雰囲気だったからね」
「そっ、そうなんですか・・・・」
「あっ、敬語なんて使わなくていいよ。むしろ、僕が使わなくちゃいけない立場だし・・・・」
「ううん、気にしないで。僕、敬語使われるのは慣れてないから、普通にしゃべってもらった方がうれしいから」
僕がそう言うと、隣にいた瑠憂君が動きを止めて、僕の方を向いて来た。
「敬語・・・・嫌だった?」
「あっ、まぁ・・・・うーん、敬語じゃない方が嬉しいかな?やっぱり、敬語だと他人みたいだし」
「わかった!じゃあ僕、敬語やめる!」
「うん、そうしてくれると嬉しいかな。後、遠慮も無しでいいからね」
「そうなの!?じゃあ、ご飯食べ終わったら遊ぼうよ!」
そう嬉しそうに言う瑠憂君は、とても無邪気だったけど、どうして自分の家に帰らないのかが不思議だった。何か、深い訳でもあるのだろか・・・・。それだったら聞かない方がいいよね・・・・?
自己完結をすると、今度は光君の方を向いた。なぜ、光君の方を向いたのかと言うと、僕の方をジーっと見て来ているからだ。
「あの・・・・どうしたの?」
「・・・・」
「ああ、気にしないで。いつものことだから」
黙り込んでいる光君の代わりに陽君が答えてくれた。そして、光君に注意をしている。光君は、納得してるのかしてないのかわからない様子だったけど、とりあえずうなずいたかと思ったら、何かを注文するかのように手を挙げた。
「竜さん、僕、ラーメン食べたいです」
「おお、そう言うと思って、作ってあるぜ」
その言葉に、光君は嬉しそうに笑うと、自分の目の前にあるお盆を、竜君のいるキッチンのある方向へ飛ばした。すると、ラーメンが一人でに浮き上がって、箸と蓮華もその後をついて行き、お盆に乗った。そして、それが、光君のもとに戻って来た。
「いただきます!」
光君は元気よく言うと、ラーメンを食べ始めた。もしかしたら、光君も僕と同じように食べることが大好きで、大食いなのかもしれない。
「光君も、食べること好きなの?」
「うん。ラーメンが一番好きかも。味噌味のね」
「そうなんだぁ・・・・僕もラーメン好きだよ」
「そうなの!?やっぱり、ラーメンは味噌だよね?」
「うん、味噌は美味しい!あっ、そうだ!味噌ラーメンが美味しいお店知ってるんだけどさ、一緒に今から行く?」
僕が言うと、光君は、特大ラーメンのどんぶりを置くと、大きくうなずいた。
「えっ、ちょっと待ってよ!僕と遊ぶって約束は!?」
「あっ、えっと・・・・うーん」
僕はしばらく考え込んだ後、答えを導き出した。
「瑠憂君も一緒に食べる?」
「うん、食べる!」
「よしっ、じゃあ、決定!」
「おいおい、まだ食うのかよ?」
「大丈夫大丈夫。じゃあ、行って来るよ!」
「おっ、おう。腹壊さねぇ程度にしとけよ!」
「うん、わかってるよ!」
「それじゃ、行って来ます」
「楽しみだなぁ~!!」
僕らがワクワクしながら外に出ようとすると、慌てて陽君が走って来たかと思ったら、光君にサングラスと帽子を渡した。そして、黒いコートも。それ全てを着ると、なんだかとても怪しい人に見えるけど、まぁ、いいかな?
「ごめんね、待たせて。それじゃあ、行こう?」
「うんうん、行こう!」
「でも、誰がお金払うの?」
光君の仕度も終わって、行こうと言う雰囲気になった時、突然瑠憂君が言った。その一言に、僕らの動きは止まった。そう言えば、誰がお金を払うんだろう・・・・。
「おいおい、そんな大事なことを考えてなかったのかよ?」
いつの間に、竜さんが玄関に来ていて、馬鹿にしたような微笑みをうかべて立っていた。
「仕方ねぇから、俺がついてってやるよ。陽、お前も来るか?」
「えっ・・・・僕も行くんですか?」
「ああ。どうせなら、みんなで行った方が楽しいだろ?」
「でも・・・・お腹減ってないので・・・・」
「じゃあ、行くか」
否定気味だった陽君の言葉を無視して、竜君は決めると、光君と同じ変装セットを陽君に渡した。陽君は、仕方なさそうに変装セットを身につけると、靴を履いた。
「そう言えば、優樹さんはいいの?」
「ああ。優さんは、ラーメンとか脂っこいの嫌いだからな。きっと来ないだろうな。それに、帰りにシュークリーム買って来てくれって頼まれたから、最初から行くつもりはねぇんだろうな」
「はははは・・・・」
僕は苦笑いをした後、自分の靴を履いて、コートのポケットに入っていた手袋をしっかりと装着して、準備万端な状態になった。
「じゃあ、行くか」
「よ~し、ラーメンいっぱい食べるぞ!!」
瑠憂君は元気に飛び跳ねた後、コートも手袋もしないで外に出た。外は雪でも降りそうなほど寒いから、そのままじゃ危険だと思って呼び止めようとしたけど、竜さんに止められた。
「あいつのことは気にしねぇでも大丈夫だ。あいつ、しょっちゅう飛び跳ねてっから、上着いらねぇんだ」
「そっ、そうなの?」
「ああ、一応あいつの上着も持って行くけどな」
「・・・・なんか、お母さんみたいだね」
「そう言われるの、あんまり好きじゃねぇんだけどな・・・・まぁ、別にいいか。自分でも思ったことあるしよ」
「そうなんだ!」
少し面白いなと思いながら、誰かさんに似てるなとも思った。でも、本人がいないにしても、言葉にしたら怒られそうな為、思うだけにした。
「それに、ラーメン食ったら体が熱くなるだろ」
「そうだね。よしっ、瑠憂君、ラーメン屋まで競争しよう!」
「おっ、いいね!じゃあ、ヨーイ、ドン!」
瑠憂君はそう言ったかと思うと、突然走り出しちゃった為、僕は不意を突かれて出遅れたけど、慌てて走り出した。