クリスマスなのに、まさかの恐怖体験!?
「起きて!」
子供の声が聞こえたかと思ったら、思い切り体の上に重い何かが落ちて来て、一瞬だけ息が止まった。
慌てて起き上がると、部屋の中はすっかり散らかっていて、窓からは明るい日差しが差して来ていた。
「おっ、起きたね」
「おはよう・・・・」
「うん、おはよ。よく眠れた?」
「朝までぐっすり眠っちゃって・・・・。今、目が覚めたところだよ」
「そっか。もう直ぐ竜さんが家に来て、飯作ってくれると思うからさ、もうちょっと待っててよ」
黒川君は、なぜか制服を着ていて、学生鞄も持っていた。今日はクリスマスだから、学校なんてないはずなのに・・・・どうしたんだろう?
「今日はクリスマスだから、学校はないんじゃないの?」
「ああ、確かにね。今日は学校ないんだけどさ、一応登校するんだ。何があるかわからないしね」
「どっ、どう言うこと?」
「一緒に来る?」
「えっ!?」
僕は、全く話についていけなくて、大きな声を出してしまった。だって、クリスマスだから学校がないはずなのに、一応登校するってどう言うことだろう?
「チビ達の面倒は竜さんが見てくれるって言うし、俺も学校行かなくちゃいけないしね」
「でっ、でも、学校って、高徳中だよね?」
「もちろん。で、来る?」
「えっ、いいの?僕、生徒じゃないけど・・・・」
「ああ、気にしないで。うちの学校、ほぼ学校じゃなくなってるから。教師いないし」
なっ、なんだって!?
思わず、聞き返してしまいそうになるほどとんでもないことを、黒川君はサラッと言った。先生がいないなんて、ダメじゃないのかな?
「先生がいないって・・・・」
「一応いるはいるんだけどさ、危ないから来ないんだよ。学校に」
「・・・・ぼっ、僕、行かないでいいかなぁ・・・・」
「ダメだよ。決めたから」
「・・・・えっ?」
僕は、今度こそ聞き返した。
今、何て言ったかな?自分が決めたからダメだって?最初に聞いて来たじゃないか!僕に!!まだ何も言ってないよ・・・・。
「なぁ、その方がいいよな?」
黒川君が子供達に言うと、みんなは一斉にうなずいて、僕を立ち上がらせる。この様子だと、僕は、あの恐ろしい高徳中に行かなくてはならないらしい。
その時、ガラガラと言う音がして、竜さんが家に入って来た。
「よお、クリスマスの朝はどんな気分だ?」
「えっ、ええ。まぁ、ぼちぼちです・・・・」
「そっか。まぁ、クリスマスだからと言って、何もねぇしな。っと、そうだ。これ、弁当。向こうで食うんだろ?」
そう言って渡されたお弁当は二つ。いつの間にか、僕も行く事になってるらしい。
「いつもすみません、竜さん」
「気にすんなよ、困ってるんだから、助けるのは当然のことだ。あいつはもう行ったのか?」
「恭介なら、今さっき出て行きました」
「そんじゃ、届けるか」
竜さんはそう言うと、急いで家から出て行った。それを見てか、黒川君は、自分達も行こうと言う。
「えっ?でも、朝ご飯は?」
「これだよ」
そう言って差し出されたのはお弁当。僕はてっきり、お弁当はお昼のものだと思ってた。まさか、これが朝の分だったなんて・・・・。なんだか、話が滅茶苦茶だ・・・・。
「そうなんだ・・・・。あっ、でも、子供達だけ置いて家を出たら危ないんじゃない?」
「大丈夫。恭介のバイト先は、ここから三分ぐらいだから、竜さんならもう帰って来るよ」
黒川君が言うのとほぼ同時に、竜さんが家の中に入って来た。
「もうそろそろ行く時間じゃねぇか?」
「あっ、そうだ。じゃあ、行こうか」
「えっ、あっ、はい・・・・」
「気をつけろよ!」
竜さんに見送られて、仕方なく、高徳中に行くことになった。なんだか、とても嫌な予感しかしないけど・・・・。
「そんな顔しなくても大丈夫。みんないい奴だから」
「はっ、はぁ・・・・」
「それに、いざって時は守ってあげるよ。一応、これでも喧嘩は強い方だし」
そう言いながらヘッドホンをつける黒川君は、お世辞にも、喧嘩が強そうには見えない。僕みたいに弱そうには見えないけど、強そうにも見えない。なんだか不思議な雰囲気で、隠された力がありそうな感じがするけど・・・・どうだろ?
「まぁ、とりあえず肩の力を抜いて大丈夫。ほら、バスが来たよ」
黒川君の言う通り、ちょうどバスが来たから、僕は、重い気持ちでバスに乗り込んだ。