怪盗と泥棒は、似ているようで、違うようです
「それでは、お部屋に・・・・」
「いや、一回外に出て空気を吸いたい」
「そうですか。それなら、こちらでございます」
執事はそう言うと、俺を導くように歩き出した。なんだか気分が晴れない。こんな時は、外に出て、夜空を見ながら空気を吸うのが一番いいのだ。
「こちらから外に出られると思います。では、私はこれで・・・・」
執事は俺に向かって一礼した後、足音を立てずに家の奥へと歩いて行った。俺はと言うと、大きく息を吐きながら、外に出て、妖怪の姿に戻ると、家の屋根に飛び乗った。
今日はクリスマスの夜だし、雪が降っているから、誰もとおりはしないだろうと思っていたんだ。それに、もう夜遅い。だから、少し気を緩めていたんだ。
しかし、俺の考えは間違っていた。なぜなら、俺の上空を白い何かが通って行き、隣の屋根に飛び降りたのだ。
最初は、それがなんなのか全くわからなかったが、どうやら人間のようだ。しかし、そいつの見た目はかなりおかしかった。白いハットに白いスーツ。おまけに白いマントをつけている。何だか、仮装大会にでも出て来そうな服を着た奴だったのだ。
俺が、不思議に思いながらそちらの方を向いていると、俺の視線に気づいたのか、その変な格好をした奴がこっちを振り向いて来たから、俺は慌てて人間の姿になろうとしたが、間に合わなかった。
「君は・・・・」
「お前、何者だ?そんな格好をしてるなんて、普通じゃありえないぞ」
「そんな言い方をしなくてもいいじゃないか。僕は変な人じゃないんだぞ?」
「・・・・そんな格好をしてて、よくそんなことが言えるな」
俺がそう言うと、そいつは少しムカついたのか、なんと、宙を歩いてこちらの屋根に来たんだ。
「驚いただろ?」
「・・・・別に、そんなことはない。と言うより、俺は、お前に何をやってるんだと聞いてるんだ。こんな夜中に、そんな白い服を着てバカじゃないのか?」
「その様子だと、僕のことを知らないみたいだね」
「知るかよ」
「・・・・少しは口を慎んだらどうだい?」
「お前は、何者だって聞いてるんだ」
俺がそう言うと、そいつはため息をつき、ポケットから何かを取り出した。それは、宝石のようなもので、キラキラと輝いている。
「これ、なんて言うか知ってる?」
「・・・・宝石?」
「そうそう。それを盗んで来た途中です」
「そうか・・・・」
俺は、そう言ってうなずこうとしたが、そいつの言った言葉を思い出し、よく考えてみる事にした。こいつが持っているものは宝石。それを盗んで来たってことは・・・・。
「お前、もしかして・・・・」
「おお、ようやくわかったようだね!」
「泥棒だな!」
俺がそう言うと、そいつは一瞬黙り込んだが、とても深いため息をついた。まるで、俺がボケたとでも言いたげな表情だが、俺は断固としてふざけてなんかいないぞ。
「確かに、間違っちゃいない。ただ、少し違うよ」
「・・・・じゃあなんだよ?怪盗とか言うのか?」
「ご名答」
その言葉に、俺は大きく息を吐くと、そいつの方を向いた。
「なんだよ、その目。まるで、僕が嘘をついているようじゃないか」
「・・・・嘘だろ?」
「嘘じゃないさ。でもまぁ、信じなくていい・・・・おっ、そろそろ追ってが来る。じゃあ、また明日!」
そいつは、最後に不思議な言葉を残して去って行った。一体、何が起こったのか全くわからない。それに、また明日って・・・・。明日もここに来るつもりなのか?
そんなことを思っていたが、俺は、今の自分の姿を思い出し、尚更不思議に思う。俺の今の格好は妖狐の姿で、こんな姿を見たら普通は驚くだろう。なのに、あいつは驚いている素振りを見せず、しかも、また明日と言った。それは一体何を意味しているのか・・・・。
もしかしたらあいつは、あの変な子供の仲間なのか・・・・?
そう一瞬考えたが、それはないなと首を振る。なぜなら、あいつからは妖気を微塵にも感じなかった。と言うことは、あいつは人間だ。しかし、なぜ、あいつは宙を歩くことが出来たんだろうか?
考えれば考えるほど訳がわからなくなり、俺はとうとう考えるのを諦め、さっさと眠ることにした。
あいつはまた明日と言った。俺のこの疑問は、明日になったら解決されるかもしれない。そう勝手に自己完結したのだ。