一歩を踏み出すことが大事・・・・?
「ただいま~!」
元気にリビングの中に入るけれど、リビングの中は、今までとはうってかわって静かになっていて、逆に耳が痛くなりそうなほどだった。
「こんな時間だし、みんな帰ったんだろうな・・・・ん?皿が片付いてる・・・・」
「あっ、本当だ・・・・。テーブルの上が綺麗だ。誰がやったんだろう?」
僕らがそう言いながら、リビングのテーブルを見ていると、後ろから声をかけられた。
「ああ、片付けなら、俺がやっといたんだけど・・・・悪かったか?」
そう声をかけて来たのは、意外なことに、神羅だった。神羅は普段、そんなことをする人じゃないから、僕はてっきり、家事は出来ないと勝手に思い込んでいたけど、出来るみたいだ。
なんだかちょっと、意外だな・・・・。
僕がそんなことを思いながら竜君の方を見ると、竜君はとても嬉しそうな顔をしている。
「全然!むしろ、滅茶苦茶助かったぜ。ありがとな!」
「あっ、ああ。一応、泊めて貰う訳だからよ、礼にと思って・・・・」
「そんなこと気にしなくてもいいのによ!あっ、そう言えば、まだ神羅の部屋を片付けてなかったな。ちょっと待ってろ」
竜君はそう言うと、キッチンの横を通って階段を登って行った。僕と神羅は、そんな竜君を呆然と見ていた。
「・・・・俺、あんなに感激されるようなことしたか?」
「うーん、僕にはよくわからないけど、竜君にとっては相当嬉しかったんじゃないかな?」
「そう言えばよ、お前、今までどこに行ってたんだよ?みんな心配してたぞ?」
「ごめんね、ちょっと、外で色んなことしてたんだ・・・・」
僕の、全くわからない説明に、神羅は首をかしげるけど、何も聞いてこなかった。もしかしたら、これ以上意味不明な言葉を返されて、頭が混乱するのは嫌だったのかもしれない。
「色んなこと・・・・か。まぁ、そんなかっこうでウロウロするってことは、よっぽどの何かがあったんだな」
神羅にそう言われて、今まで忘れていた事実を思い出した。自分がサンタの服を着ていると言う事実だ。
僕は、なんだか急に恥ずかしくなって、慌ててサンタの服を脱いだ。
「まっ、まぁ、色々あったんだよ。うん。あっ、そう言えば、亜修羅は?それに、栞奈ちゃんの姿も見えないけど・・・・」
「ああ、栞奈は確か、仲良くなった女のところに泊まるらしいぞ。で、族長は、気の合う子供の家に行って、帰って来てないな。きっと、泊まってけって言われたんだろうな」
「神羅は、誰かと仲良くなったりしなかったの?」
「そりゃ、俺は、族長の護衛と言う訳だから、誰とでも仲良くしていい訳じゃないからな」
「・・・・あのさ、最近思うようになったんだけどね、それって単なる言い訳じゃない?」
「なっ、なんでそう思うんだよ?」
「だってさ、もう種族争いは終わった訳だし、そりゃ、完璧に安全とは言えないけど、もう、そんなに人を警戒する必要はないだろうし・・・・。だから、友達を作ってもいいと思うんだ。それなのに友達を作らないのは、友達を作ることが出来なくて、護衛だからって言うことを言い訳にしてるように聞こえたんだ」
僕がそう言うと、神羅は無表情になって黙り込んでしまい、僕は、まずいことを言ってしまったかと思った。
だから、僕は何も言えず、無言のままの神羅と立ち尽くしていた。すると、そんな僕らを救うかのように、竜君がリビングに戻って来た。
「今、部屋を整理して来た。神羅の部屋は、階段を上って直ぐ右にある部屋で、宗介の部屋は、その向かい側な」
「ああ、ありがとな」
神羅はそれだけ言うと、さっさと階段を上って自分の部屋に行ってしまった。