最後の配達終了です
「ふぅ、やっと終わったぜ」
「そっかぁ~、はぁ・・・・ちょっと疲れちゃったよ」
「悪いな、俺の都合に巻き込んじまって・・・・。でも、もうちょっといいか?」
「あ、うん、別に大丈夫だよ」
本当は、大丈夫じゃないほど疲れてたけど、勝手に口がそう答えていた。そんな自分にため息をつきながら、竜君の後について、ある家の前まで来た。表札には佐川と書いてある。
もしかして、ここって・・・・?
「ああ、ここは、恭介の家だ」
「でも、なんでここに?」
「あいつ、中々無用心でな、家の鍵を閉めないまま寝たりとかするんだよ」
「ええっ!?危なっ・・・・」
「だからな、俺が毎日こうやって夜になると様子を見に来るんだ」
「そうなんだぁ・・・・」
僕は、とても関心しながら、閉まっている扉を開けようとした。普通なら、鍵がかかっていて開かないはずの扉だけど、普通に開いてしまった。
それを見て僕が苦笑いをしていると、竜君も苦笑いをした。無用心って度合いじゃない。なんかもう、無用心とかそう言う域を超越してる感じがする・・・・。
「まぁ、こう言うことだから、俺がいつも来るって訳だ。ほら、行くぞ」
「あっ、うん」
驚いてボーっとしてる僕を追い抜いて、竜君は、躊躇いもせずに家の中に入って行く。それはちょっとどうかと思ったけど、僕も後をついて行った。
何だか、泥棒みたいでちょっとドキドキ感があったけど、竜君はそうでもなさそうだ。きっと、いつもこうやって恭介君の家に入っているからかもしれない。
「ん?」
竜君が突然歩くのをやめたから、僕も急いで足を止める。竜君が足を止めた先にあったのはリビングで、そこにはなぜか、黒川君と桜っちが眠っていた。
竜君が足を止めたのは、もしかしたら、桜っちが恭介君家で寝てたからかもしれない。
「どんな経緯で、こんなところで寝てんだろうな?」
「そっ、そう言われてみれば・・・・。なんで桜っちが恭介君家で寝てるんだろう・・・・?」
「まぁ、なんだか幸せそうだし、別にいいか」
「えっ?」
「まぁ、今の言葉は気にするなよ」
竜君は、僕の疑問を残したまま、リビングの奥の部屋に歩いて行った。僕は、さすがにそこまではついていかなかった。だって、子供達が沢山眠ってたし、それに、電気はついてないのと同じくらい暗いから、足でも踏んじゃったら大変だと思ったんだ。
僕だったら、足を踏んでしまいそうなほど子供達がいる中を、竜君は躊躇わずに歩いて行き、奥の方にある押入れを開けると、中から掛け布団を二枚持ってこっちにやって来た。
「これ、かけてやって」
竜君は僕のところまで来ると、持っていた掛け布団の一枚を僕に渡して来た。僕は、近くで眠っている桜っちに布団をかけてあげると、ゆっくりと息を吐いた。
「こうやってみると、みんな幸せそうな顔してるよな」
「そうだね・・・・」
「俺、人の寝顔って好きなんだ。無防備ではあるけど、幸せそうで、その人の本当の顔が現れてるみたいでな・・・・」
「そうなんだ・・・・そう言われてみると、確かにそのとおりかもね。幸せそうでその人の本当の顔を現してるみたいで・・・・」
「まっ、こんなことそうそう言えるもんじゃねぇけどな。今言ったこと、聞き様によっては変態みたいに思われるだろうしよ」
そう言われて、僕はうなずいてしまった。それに気分を害されたのか、竜さんはため息をついたけど、諦めたように首を振った。
「まぁ、それがわかってて言ったんだしよ・・・・と、一応弁解しておくが、俺は、別にそんな変な意味を込めて言ったんじゃないからな」
「うん、わかってるよ」
「よし、それならよかった」
「ねぇ、そろそろ帰ろうよ、こうやって息を潜めてるのも、そろそろ限界に近づいて来たし・・・・」
僕がそう言うと、竜君は思い出したかのように立ち上がると、持っていた袋の中から、今まで沢山配っていたプレゼントを取り出すと、子供達の枕元に一つ一つ置いて行った。
「その子達の分もあったんだね?」
「当たり前だっての。知り合いにプレゼントを渡さなくてどうするって言うんだ。と言うことで、これは、宗介の分」
そう前触れもなく差し出されたから、僕は一瞬意味がわからなくなったけど、直ぐに慌てて首を振った。
「えっ!?いいよ!だって、僕は別に、そう言う意味で手伝ったわけじゃないから・・・・」
「いいっていいって。気にすんな」
「でっ、でも・・・・」
「もらってくれるまで、俺は引かねぇぞ」
竜君はそう言っていて、僕がプレゼントを受け取らないと本当に引かなさそうな為、ありがたくプレゼントを受け取ることにした。
「そうやって素直にもらってりゃいいんだ。じゃ、そろそろ帰るか」
「あっ、うん」
僕は、竜君からもらったプレゼントを大切にしまうと、恭介君家を出た。そして、恭介君家の真裏にある竜君の家に戻った。