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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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子供にとって、「寂しさ」とは一番の敵

「修さん、なんだか楽しそうですね?」

「だな。やっぱり、似たもの同士で気が合うのかもな」

「はい」


僕達は、そんなことを話しながら隣の部屋のソファに座って、竜さんが作ってくれた料理を食べていた。


「にしても、凛はどうしたんだろうな?」


「そうですね、そろそろ帰って来てもいい頃だと思うんですけど・・・・ちょっと、外を見てきますね」


そう言って立ち上がると、コートを羽織って外に出た。外に出ると、一気に気温が下がって、思わず身震いしてしまう。


雪は降ってないものの、かなりの寒さで、手袋をしてくればよかったと思うほどだ。しばらくの間両手をこすり合わせた後、ポケットに手をしまった。


そして、ため息をつきながら空を見上げた。空は、なんだか青くもなく灰色でもないような、微妙な色をしていた。今にも雪が降りそうな雰囲気だ。


僕は、毎年毎年、クリスマスになるとこうやってずっと空を見上げてたんだ。それが、僕なりのクリスマスを祝う方法だった。だから、今年、こうやってみんなでクリスマスパーティーが出来てとても嬉しいと思う。なんだかんだで、学校で開かれているダンスパーティーには出られなかったけど、それ以上に楽しめたと思う。


「桜木君だよね・・・・?こんなところで何してるの?」

「あっ・・・・」


僕は、思わずお辞儀をしてしまった。僕に声をかけて来てくれたのは、黒川遊君。年下なのに、お辞儀しちゃったよ。


多分、これは、高徳中の番長の友達って言うことがあるからかもしれない。


「そんな風にお辞儀なんかしないでよ。俺、桜木君より年下なんだし」

「あっ、ごっ、ごめんね、くせなんだ」

「そっか・・・・」


黒川君はそう言うと、ドアを開けて外に出て来た。すると、後ろから元気な子供達が沢山出て来て、静かだった辺りが一気に騒がしくなる。


「この子達、黒川君の兄弟なの?」


「違う違う!このチビたちは、みんな恭介の兄弟。だけど、恭介は忙しいから、俺が遊んでやったりしてる。で、今は、大分時間も遅くなって来たし、そろそろ家に連れて帰った方がいいかなって思ったから」


「そっか・・・・偉いね」


「全然、俺だって恭介に助けられることあるしね。そう思えば、こいつらの面倒を見るくらいは大丈夫。それに、なんだかんだ言って、一番こいつらの世話をしてるのは竜さんだしさ」


「そうなの?」


「そう。かなり面倒見のいい人でさ、頼んでもないんだけど、面倒を見てくれてるみたい。恭介の家、水樹君の家の裏だからさ」


それを聞いて、僕はただうなずくことしか出来なかった。確かに、それぐらいのことは平気でしそうだ。だって、出会ったばかりの僕らのことを泊めてくれたりするんだもん。普通じゃ出来ないことだよ。


「ほんとに竜さんっていい人だよ。俺も初めて会った時は驚いたよ。こんなにいい人が、こんなに近くにいるなんて思ってもみなかった。それでさ、弟の面倒を是非見て欲しいなと思うんだけど・・・・どうだと思う?」


「えっ!?どっ、どうって・・・・」


話の急展開ぶりについていけなくなってしまって、思わず声を荒げてしまう。そして、慌てて「静かに」と注意をされた。


「寝てるからさ」

「あっ、ごめんね。ちょっと驚いちゃって・・・・」


「ゆうゆ、早く家に帰ろう?」

「ああ、ごめんな、ちょっと話し込んじゃって・・・・」


そう言って、黒川君は、中々歩き出そうとしない男の子の手をひく。けれど、一向に歩き出そうとしない。


「やだやだ!まだ帰りたくない!もっと起きてたいもん!」

「ちゃんと言うこと聞かないと、恭介に言いつけちゃうぞ?」


「・・・・いいもん!僕、怒られても平気だもん!」


「ねぇ、帰ろうよ、ゆうゆ。眠いの・・・・」

「ちょっと待って・・・・って、遅かったか・・・・」


その女の子は、黒川君に寄りかかったまま眠ってしまった。明らかに大変そうな為、僕も手伝うことにする。


「あのさ、僕も手伝うよ。どうすればいいかな?」

「助かるよ。じゃあ、この子を背負って。ほら」


黒川君はそう言うと、自分に寄りかかって眠ってしまった女の子を片手で持ち上げて、僕の背中に乗せて来た。女の子を片手で持ち上げて来た時は、さすがに驚いた。


子供だから体重が軽いと言っても、結構重さがあるはずだ。それなのに、黒川君はそんな女の子を片手で持ち上げたから、とても驚いたんだ。


「凄い力持ちだね、びっくりしちゃったよ」

「そうかな?あんまり自分では自覚してないけど・・・・。ほら、行くぞ和馬」


「嫌だよ、僕、ここに残るもん!」

「なんでそんなにここがいいの?家がそんなに嫌なの?」


黒川君がそう聞くと、和馬君は黙り込んでしまった。しかし、しばらくしてから、ボソッと呟いた。


「家に帰ったら、みんないなくなっちゃうから。寂しいのやだもん」


それを聞いて、僕はなんだか胸が苦しくなった。確かに、子供の頃は一人にされることが一番怖かった。寂しいのが嫌だった。それがわかるからこそこんな気持ちになったのかもしれない。


僕は番長の家の事情をよく知らないけど、色々と大変なんだなと思った。


「・・・・大丈夫。今日は、恭介もずっと家にいるから、寂しくなんかない」

「でも、明日は?明日になったら、お仕事行っちゃうんでしょ?」


そう言われて、僕は違和感を覚えた。お仕事と言うのがバイトと言うこだとしても、番長はまだ十三歳だから、バイトをすることが出来ない。なら、なんでバイトなんて・・・・。


そう考えて、僕は慌てて首を振った。今はそんなことを考えているよりも、この状況をなんとかしないと。


「あのさ、僕なんかでよければ、明日行こうか?」

「いいの?」


「うん、冬休みって言っても、別にやることはないだろうし、それに、色々と大変そうだからさ」


「・・・・わかった。じゃあ、帰る」


和馬君はそう言うと、やっと歩き出した。僕は、なんとなくホッと胸を撫で下ろす。


「お兄ちゃん、名前はなんて言うの?」

「僕?僕はね、桜木明日夏って言います。よろしくね」


僕が手を差し出すと、和馬君がその手を握った。そして、離さなくなったから困ったもんだ。僕は、握手をするつもりで手を差し出したんだけどな・・・・。


そのまま水樹君の家の裏に回ると、こじんまりとした一軒家が建っていて、表札には「佐川」と書いてある。本当に、水樹君の家の裏側にあったよ・・・・。


「恭介、帰って来たよ~!」


黒川君はそう言いながら扉を開けて中に入った。鍵を開けている様子はなかったから、きっと、鍵をかけてない状態だったのかもしれない。


随分物騒だなと思いながらも、僕も家にお邪魔させてもらった。


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