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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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不可思議な子供

「さて、これからどうします?族長」

「・・・・考えてない」


「だと思いましたよ」


「・・・・なんでバレた?」

「ずっと族長のことを見てたんですよ、族長の性格ぐらいわかってますって」


神羅に考えを見透かされてなんとも言えない気持ちになる。

凛にはきっと楽観的とか思われているんだろうがそれは仕方ない。

どうしたらいいかわからなさ過ぎて、何も考えられなくなってるんだ。


「全く、完全なところで抜けてんだからな、族長は」

「うるさいっ!とにかく、ケーキをキャンセルしに行くぞ」


「えっ!?あれ、マジだったんスか!!?」


「・・・・当たり前だ。今更、ケーキなんか食う必要もないだろ?」

「まぁ、仕方ないっちゃ仕方ないかもしれないけどな・・・・。って、おいっ!」


神羅がぶつくさ言っているのを無視して歩き出す。

目指すはあの忌々しいケーキ屋だ。

あそこに入る度に気分が悪くなる。だから忌々しいのだ。


「ったく、先に行っちゃうなんて酷いぜ!」

「お前がぶつくさ言ってるからだ」


そのまましばらく歩いていると、不意に話しかけられた。


「・・・・族長はなんとも思いませんか?」

「・・・・何がだ?」


訳がわからずに問い返すと、今まで真剣な顔をしていた神羅が吹き出した。

何を考えてたのかは知らないがその態度がイラついて、

その背中を荷物で思い切り殴ってやった。


「いって!何するんだよ!」

「お前が笑うのが悪い。なんで俺の顔を見て笑った。それを教えろ」


「俺が言いたかったのは、

なんで魔界にいるはずの妖怪が人間界にいるのかって言うことですよ」


思わず足を止める。

確かに、魔界にいるはずの妖怪がなぜ壁を破って人間界に来たのか。


人間界と魔界とを繋ぐところにはちゃんと壁があり、

その壁は下級妖怪には通れないはずだ。

下級の妖怪は姿を変えることすら出来ないから

人間界への立ち入りを禁止されている。なのに・・・・なぜ?


「やっとわかってくれましたか」


その馬鹿にしたような言い方がカチンと来て

もう1回殴ってやろうかと思った。

今度は、さっきよりも勢いをつけて。


しかし、それを俺の視線で感じたのか黙り込み、最後の最後には謝った。

よし、それでいい。あまり俺を怒らせない方がいい。


「・・・・そんなに暴力ばっかり振って酷いもんだぜ・・・・。

一応俺、族長の護衛なんだけどな・・・・」


そんな神羅の言葉を無視して歩く。

今は暴力どうこう言っている場合じゃない。

なんで下級妖怪が人間界に来たのかと言うことが先だ。


「やけに胸騒ぎがするな・・・・」

「族長もか。なんだ、気が合うな!」


神羅にそう言われたけど、俺は首を振ってやった。

神羅はつまらなさそうな顔をして舌打ちをした。


「ったく、なんだよ、少しぐらい同調してくれたっていいだろうよ」


そんなことをブツブツ言っている神羅の言葉を聞かずに、

俺はこの胸騒ぎがなんなのかをずっと考えていた。


そのまま無言で歩き続けること十分。

急にただならぬ妖気を感じて思わず立ち止まった。


「・・・・」

「どうした?」

「妖気を感じる・・・・。こっちだ!」


俺は思わず走り出していた。妖気と一緒に水のにおいを感じた。

きっと、土手の方に妖怪達が出て来た何かがあるはずだ。

そう感じたら、走らずにいられなかったんだ。


「お~い、急に走るなぁ!!」


後ろの方から神羅の叫び声が聞こえるが完全に無視して土手に向かって走る。

急がないと、妖気がどんどん消えかかっている。


土手に着いて急いで下に下りると一匹の妖怪がいた。

その妖気を感じた時、なぜか悪寒が走るのがわかった。

俺よりも年下に見えるのにもの凄い殺気に包まれた妖気だ。

信じられない。何なんだ、あいつは?


「やぁ、亜修羅君」


そいつは満面の笑みで手をあげるが、

妖気から感じる殺気はそんなものでは拭い切れない。

何なんだこいつは?どうして俺の名前を知っている?


「誰だ?お前は?」

「魔王の子供♪」

「そんな奴が、何で俺の名前を知ってるんだ?」


こいつはいつもニコニコしているようで、

俺と話している間もずっと笑っている。そこがまた不気味だ。


俺の中でこう言う奴が一番苦手なんだ。

常に笑っているから心の内がわからず次にどう動くかわからない。

俺みたいに次はどう動くかと予測して戦う奴が最も苦手とするような相手だろう。


「そうだな・・・・。もっと強くなったら教えてあげてもいいかな?」

「何だよ、それ?」

「じゃあ、僕は父さんを待たせてるから、そろそろ行く事にするよ」


そう言ってどこかに行こうとするそいつの腕をなんとか摑んで引き止める。

こいつは、どこかで会ったことがあるような気がしてならない。

しかし、どこで会ったのか思い出せないから、

本当に会ったのかがわからない。でも、一応聞いておきたかった。


「お前、一度会ったことがあるか?」

「まあね。でも、覚えてないかもしれないよ」


「・・・・?」

「それなら、ヒントをあげよう。

まぁ、その様子だと、ヒントも意味がないだろうけどね」


そう言ってクスクス笑う為、

イラッとするけれど下手に喧嘩を売るような真似はしない。


はっきり言うと、こいつの妖気は凄過ぎる。

きっと、俺なんかじゃかなわないだろう。

初見でそう判断した相手には喧嘩を売らない方がいい。

戦わずして強さがわかる奴って言うのは、化け物並の強さなのだ。


そいつは俺に近づいてくると、一言言った。


「嘘だよ」

「・・・・は?」

「だって僕、君にヒントを教える義理なんてないもん。バイバイ」


そいつは最後に再び笑うとマントをなびかせながらそのまま消えた。

何事もなかったかのように。


どう言うことか理解し難い。

あいつが言った嘘は、俺達が前に会ったと言うことなのか?

それとも、ヒントを教えると言うことなのか?

とりあえず俺は、後者だと思うことにした。

そっちの方が辻褄が合いそうだ・・・・。


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