子供達のパーティー事情
「・・・・亜修羅、なんであんなに楽観的なんだろう?」
「だな。護衛ながら、時々族長の考えがわからない時があるぜ」
「そっ、それよりも、早く荷物をまとめましょう?
ボロボロになり過ぎて、
この部屋にいるだけでも崩れてしまうような気がします」
「そうだねっ!」
桜っちの言葉は最もで、僕らはせっせと荷物をまとめ始めた。
でも、一人だけ動き出さない子がいた。栞奈ちゃんだ。
「どうしたの?」
「あのね、私、どうしたらいいかなと思って。
よく考えたら、隣の部屋は無事なんだよね?
だから、私はどうしたらいいのかなって・・・・」
「うーーん、隣の部屋が大丈夫と言うことは、
栞奈ちゃんまでホテルに泊まることはない。でも、一人は寂しいってことかな?」
「・・・・まぁ、そう言うことになるかな?」
「そうだよね、みんながいるからいいだろうけど、
一人でこんなところに泊まれって言われても・・・・」
その時、背後から殺気を感じて思わず体が引きつる。
何だか、危ない予感が・・・・。
「おい、それは俺に喧嘩を売ってるのか?」
「ちっ、違いますっ!」
「そうだよな。人の家に泊めてやってるんだ。
文句を言うなら、今すぐ出て行ってもらうからな」
「ごっ、ごめんなさいっ!」
僕は必死で謝った。
まさか亜修羅がこんなにも早く帰って来るなんて想定外だったんだ。
だから、つい本音がポロッと出ちゃってさ・・・・。
「人がいない時だからって、本音を言っていいことにはならないぞ」
「・・・・心読まないのっ!」
「読んでない。お前の顔がそう言ってるからだ」
「ううっ・・・・」
これ以上何も言わない方がいいと思って、素直に黙ることにした。
「それで、これからどうするの?
本当は今日、クリスマスパーティーするつもりだったのに・・・・。
もしかして・・・・やらないの?」
聞くだけ馬鹿だと思う。でも、僕は聞いてしまった。
それだけクリスマスパーティーがやりたかったんだ。
でも、返って来た言葉は僕の僅かな希望すらも打ち砕いた。
「当たり前だ。クリスマスケーキを頼んであるがそれもキャンセルだ。
家がこんな状態なのに、クリスマスパーティーをするアホがどこにいるんだ」
僕は、ため息をつきながらボロボロになった部屋を出た。
その惨状は僕の心と同化していた。
「凛君、元気出して下さい!」
「うん・・・・」
「少し、散歩でも行きましょうか!」
「そっ、そうだね!よしっ、散歩行こうか!」
「それじゃあ、ちょっと修さん達にそのことを伝えて来ますね!」
「わかったよ。じゃあ、その荷物、僕が持ってるよ」
桜っちが持っていた荷物を持つと、部屋に入っていく桜っちを見送った。
桜っちも案外落ち込んでなさそうだ。
よく考えてみれば、桜っちの場合は本当に家が全焼しちゃって
住むことは絶対的に不可能な経験をしているから、
これぐらいのことだったら我慢出来るのかもしれない。
やっぱり、桜っちは強いなぁ・・・・。
「修さんに伝えて来ました。それじゃあ、行きましょうか!」
「うん、行こう行こう!」
桜っちが案外落ち込んでないことがわかって僕も負けてられないなと思った。
「・・・・と言っても、どこに行きましょうか?」
「とりあえず、家がないからなぁ・・・・うーーーん。
とりあえず近くの公園にでも行って、時間つぶそうか」
「そうですね!
あっ、そう言えば、ダンスパーティーはどうするんでしょうか?」
桜っちに言われて再び落ち込んだ。
行ける訳ないよね、クリスマスパーティーをやらないんだもん。
無言で桜っちの方を見ると、
桜っちにも僕の言いたいことがわかったようで、謝って来た。
「別に、桜っちが謝ることじゃないよ!
僕だって大暴れして部屋を壊す加勢しちゃったしさ!」
「でも、とても楽しみにしてたじゃないですか・・・・」
「まっ、まぁ、それはそうだけどさ、それは桜っちも一緒じゃないか!」
「・・・・ええ、一応は」
そう言っていると何だか本気で落ち込んできて、僕は慌てて首を振った。
いつもは慎重な亜修羅があんなに楽観的なんだから、
僕も、もう少し落ち着いてもいいのかな?
ただ、自分が落ち込んでいる原因を考えると、
それはとても無意味なことだと実感した。