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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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一騒ぎ起こします!

「何が起こったんだ?」

「なっ、何!?あの茸!」


色んな悲鳴や叫びが飛び交う中、人種茸が口を開き、大声で喚いている。


「犬神はどこだ~。どこにいる~~!!」


そう喚き散らしながらも、逃げそびれた生徒に手を伸ばしては口に放り込む。その光景を見た生徒や先生達が四方八方に逃げ惑うけれど、それを巧みに捕まえては次々に口に放り込んで行く。


その度に茸はどんどん大きくなって行って、早く対処をしないと大変なことになりそうな雰囲気だ。でも、どうすれば・・・・。


「凛君、どうしたんですか?あの茸。魔界の茸ですか?」


「おおっ、桜っち。いいところに来たよ。あの茸、魔界の人種茸って言うんだけどさ、あれは何かを食べるとその分大きくなるんだよね。どこから来たのかわからないけど、そいつが暴れ出しちゃって・・・・。どうしよう?」


「そうですね。こんなに人が多いところで元の姿に戻るのは不可能ですよね?」

「・・・・そうだね。でも、あいつは僕を探してるみたいだしさ。どうしたもんかね・・・・・」


ため息をついて考え込んだ時、廊下を走って来る足音が聞こえた。僕は、それを聞いて何だか嫌な予感がしてたまらなかったけど、ゆっくりと振り返ってみた。すると、カメラを従えたキャスターがマイクを持って走って来ていた。


それを見た時には、思わずため息が漏れた。まぁ、確かに、こんな状況でマスコミが気づかないはずもないよね。でもね、そうは思っても、ため息は漏れるものなんだよ・・・・。


僕は、再び体育館の方に向き、マスコミの人と目を合わせないようにしてた。それをしたからって何が変わるのかって思うだろうけど、目を合わせなければ、話しかけられないと思ったんだ。でも・・・・。


「すみません、テレビ局の者ですが、あなたが噂の生徒会長さんですか?」


最初は気づかないふりをして無視をしていた。でも、しつこく話しかけて来るから、僕はおずおずと振り返った。すると、即座にマイクを突きつけられて、問いただされる。


「あっ、はい・・・・」

「この状況をどうお思いですか?」

「えっ・・・・・」


「すまないが、生徒を巻き込まないでもらいたい。話は私が聞こう」


僕が戸惑っていると、後ろから校長先生が出て来て僕をかばう様に前に進み出る。


こう言う時、あんまり頼りにしていない先生が頼もしく思えるのはなぜだろう?何だか物凄く助かったと言うか、気持ちが軽くなった気がする。


「なぁ、生徒会長!」

「悪いけど、僕じゃどうにもならないよ。あんな化け茸・・・・」


肩を摑んで勢いよく揺すって来る男子生徒に、僕はため息をつきながら言った。人間の姿でもあいつをどうにか出来ると思うけど、こんな大勢が見ているところ・・・・しかも、マスコミがいるところでそんなことをしたら、僕は普通じゃないってバレるからね、そう言うしか出来ないんだ。


「どこじゃ犬神~ここにいることはわかっている!!出て来ないなら、ここにいる人間共はどうなってもいいと言うのか!こんなカスの人間共は!!」


僕はそう言われた時、カチンと来た。そして、こいつを倒したいと言う妖怪的な気持ちが沸々と湧いて来て、我慢出来なくなった。こいつを倒すことに決めたんだ。


「・・・・カス・・か。ふ~ん、そんなことはないよ。この人達は僕の大切な人達なんだ。だから、カスなんかじゃないんだよ。これから、その身をもって証明してあげるよ」


「凛君?」

「僕、行って来るよ」

「どこへ?」


桜っちの言葉を振り切るように、僕に助けを求めて来た生徒の肩を叩く。


「僕の知り合いを呼んで来るよ。その人ならきっと大丈夫。あんな大きいのも直ぐ倒しちゃうから。そうみんなに伝えて」


「どっ、どうやるんだ?」

「放送でもすればいいよ」

「ああ、わかった。頼んだぞ!」


僕は、もみくちゃにされながらも、何とか頼むと、急いで逃げ惑う生徒達をかき分けて、一人、廊下の奥に進む。


それを捉えたカメラマンがカメラを僕の方に向けようとするけれど、人ごみにもみくちゃにされて、それどころではないようだ。それが、唯一の幸運と言えるかもしれない。


僕は男子トイレに入り、個室のドアを閉める。ここまでしないと安心なんて出来ない。それから役作りを始める。


役作りって言うのは、僕を僕じゃない人に見せると言うことで、言葉の言い回しを変えようと言うことなんだ。やっぱり一番いいのは、口調をもうちょっと男の子っぽく荒々しくしてみようかなと言うことだ。


「決まり・・・・」


自然と微笑みが浮かんで来て、犬神の姿に戻ると冥道霊閃を腰に下げる。これで準備万端。


最初の時は茸が学校を襲って来て、僕には平和はないんだなとか思ってたけど、今はむしろ、とても楽しみだった。今の僕は、人間の丘本宗介じゃない。妖怪、犬神の凛なんだ。


トイレの窓から外に出て、そのまま床しか残っていない体育館へ向かう。


犬神の姿に戻ると、元の身長に戻るから、僕だって気がつかないと思う。普段はちっちゃいけど、これが普通の姿だしね。と言っても、わからないよね、わかり易く説明すると、人間の姿の時は百六十センチだけど、今は百七十センチ以上は普通にあると思う。百七十センチ以上あるのが、僕の本当の身長。人間の姿の時に身長が小さい理由は・・・・まぁ、いろいろあるんだよね。


僕はそんなことを考えてて、慌てて首を振った。今は、自分の背が小さいとか大きいとか言っている場合じゃない。早くみんなを助けることが先決なんだ。


体育館の天井・・・・はないから、校舎の天井の上に立って、下の様子を窺う。茸は多くの人達を丸呑みにしたようで、最初の五倍ぐらいの大きさになっていた。


「さぁて、行きますか!俺!!」


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