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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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生徒会長の役目

そう言えば、今日は遅刻者取締り日だったらしい。

校門に生徒会役員がいて、登校するみんなの様子を見ていた。


それを見てホッと胸を撫で下ろす。

だって、生徒会長が遅刻なんかしたらとんでもないことになるからね。


「よかったですね、結構ギリギリでした・・・・」

「うん、遅れちゃったら色々面倒だからね・・・・」


そんなことを言いながら上履きに履き替えて教室に向かう。

その道中、学年問わずにみんなが挨拶をしてくれるから、何だか嬉しい。


「凛君は人気者ですね」

「そうかな?」


「そうですよ。こんなに挨拶をされているのは、

他に先生ぐらいしかいないと思いますよ?」


僕は顔をしかめる。先生と一緒にされるのは、なんだか嫌だったんだ。


「先生と一緒にしないでよ、何だか気分悪い・・・・」

「やっぱり、先生が嫌いなんですね」


「やっぱりって?」


「僕も、先生ってあまり好きじゃないんですよ。

友好的な先生だったいいんですけど、この学校の先生はちょっと苦手です」


前方を歩いている数学の先生をちらりと見ながら小声で言う。


「僕もだよ。なんかさ、本当に苦手になりそうなタイプの先生が多いもんね」


僕も、桜っち同様にちらりと見ながら小声で言う。

でないと、謹慎ルームに連れて行かれちゃうんだよね。


そうそう、ここで、ちょっと生徒会長の仕事を説明しようと思う。

なぜそんなことを説明するのかは、普通の生徒会長の役割と、全く違うからなんだ。


どんなことをするかと言うと、まずは生徒のまとめ。次に生徒の相談役。

それから生徒のために働く。


一つ目以外意味がわからないものだと思うけれど、

二つ目よりも三つ目の方がわからないと思うから説明するね。

働くって言うのは身の回りの整理整頓から生徒にとってより良い環境を作ること。

そんなのは先生がやる仕事に近いけど、生徒会長の役目なんだよね。

ちなみに、生徒会長がするような仕事は副生徒会長がいてその人の役目。

何だかめんどくさいよね、この学校ってさ。


「凛君も頑張ってますよね。授業中にまで呼び出されてるのに

成績が悪いだの勉強を頑張れだの言われても平気なんですから。

僕だったらこんな理不尽耐えられませんよ」


「だって、頭が悪いのは今に始まったことじゃないし、

それがもっとわからなくなるってだけの話しだよ!

それにさ、授業をサボって話をするのって結構面白いよ?」


「いつも授業を抜け出して、何してるんですか?」


先生に、聞かれても答えるなって言われてるんだけど・・・・まっ、いっか。


「この学校ってカウンセラーいないでしょ?

だからさ、学校に電話がかかって来るんだよ。

話がしたいって言う生徒からね。それで、僕が話しに行ってるんだよ」


「この学校本当に変ですよね。

カウンセラーがいないからその相談を生徒会長に押し付けるなんて。

このせいで、年々生徒会長の成績が悪くなっていってるんですよ」


桜っちの言葉も一理あると思うけど、僕自身で生徒会長に立候補した訳だし、

副生徒会長の子が頑張ってくれてるから全然辛くはない。

何よりも、授業を抜け出す時の気持ちが最高なんだ!

その気持ちがあるから、僕はこの生徒会長と言う苦行をやってのけられるんだ。


ホームルームにはギリギリ間に合い、

三つ横の列にいる桜っちに向かってVサインをすると、

Vサインは返って来ないものの微笑みを返してくれた。

上手く言えないけどそれが嬉しくて、平和だなって実感出来た。


そんなかたちで授業が始まり2時間目の数学の時間だった。

教室のドアが開き、ひょっこりと教頭先生の頭が出て来て僕に向かって手招きをする。

これが、僕を呼ぶ時に使う手だ。


それを見て羨ましそうな目を向けたり理不尽だと言葉に出す生徒もいるけど、

数学の先生は止めることが出来ない。なぜなら、本当のことだからね。

理不尽なのもずるいのも。

僕だけ不公平に出て行くのはどうしてかと言われたら、もう終わりだから。


静かに立ち上がると、教頭先生のもとに歩いて行く。


「丘本君、今回の話し相手なんだがね、今謹慎中の生徒でな。

言わば、不良だ。他校の生徒と喧嘩をした奴で最初は危険だと思ったんだが、

君を呼べと暴れ出したんだ。我々も必死で抵抗したが、この有様でな・・・・」


教頭先生は自分の頭を指差すと、静かに拳を握りしめた。

僕も、同じように拳を握りしめるとそれとなしに視線を逸らす。

そこにかつてあっただろうものは無残にも枯れ果てていたんだ。

これは身体へのダメージよりも精神的ダメージが大きかったと思う。


思ったとおり、謹慎ルームに僕を連れて行く間最低でも10回は頭を触り、

ツルツルだと感じては深いため息をついていた。

これは僕が思っている以上に大きなダメージを食らってるね。


その姿に笑わないよう必死になりながら何とか謹慎ルームにたどり着く。

途中、何回も噴出しそうになったけれど、

なんとか堪えた自分を褒めてあげたいよ。


扉の前で大きく息を吐くと、心を落ち着かせる。

まだどんな子か見てないけど、喧嘩をしてここに連れて来られたってことは、

喧嘩っ早いことは確かだと思う。

そんな子を前に笑ってたら、怒られちゃいそうだしね。


やっと心が落ち着いて謹慎ルームの扉を開ける。

そこには、体のところどころに絆創膏を張ってこちらを睨みつけている、

いかにも「喧嘩をして来たぞ」って感じの生徒がいた。


「生徒会長の丘本だ。これでいいいだろう。

私は忙しいんだからな。仕事に戻るぞ」


教頭先生は明らかに怯えた表情で言い捨てると早々に去って行った。

普段廊下を走るなと怒る先生が走ってどうするんだろうと思いながらも、

その生徒の方に目を向ける。


さぁて、どんな子なんだろうな?


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