久しぶりの登校
魔界から帰って来てしばらく経つけど、
なんだか、まだ、人間界に帰って来たと言う実感が湧かない。
だから、桜っちに起こされた時は、
なんで起こされたのかと言うのが思い出せなかった。
「なんで起こしたの・・・・?」
「学校ですよ?人間界に戻って来れたので・・・・ね?」
「あっ、そっか・・・・でも、亜修羅達は?姿が見えないけど・・・・」
「修さん達なら、朝早くにどこかに行ってしまいましたよ?」
「ずるいよ!なんで、自分達だけエスケープしてるのさ!」
「えっ、エスケープですか?」
「そうだよ!自分達だけ、学校と言う子供の宿命から逃げて・・・・」
「まっ、まぁ、落ち着いて下さい。とりあえず、僕らは学校に行きましょう?」
「・・・・ちぇっ」
僕は舌打ちをすると、嫌々起き上がって制服に着替えると、顔を洗ってから外に出た。
「それじゃあ、行きましょうか」
「えーっ、行きたくないなぁ・・・・・」
「でも、一応、人間界にいる時は学校に行くって決まっているので・・・・」
「ねぇねぇ、僕らもエスケープしちゃおうよ!」
「ええっ!?」
僕の発言に桜っちは驚いたのか、持っていた鍵を落としてしまった。
「そっ、そんなに驚く事?」
「まっ、まぁ・・・・。でも、今日は生徒会があるんじゃないんですか?」
「あっ・・・・」
僕は、そう言われて深いため息をついた。
今日は、生徒会の集まりがあったことを思い出したからだ。
生徒会の集りは、絶対にサボっちゃいけないから、エスケープも無理ってことだもん。
深いため息をつきながら階段を下りる。
桜っちは、慌てて家の鍵を閉めると、一回鍵がかかったかどうかを確認した後、
転びそうになりながら階段を下りて来た。
「そう言えばさ、あれで一応種族争いは終わったみたいになってるけど、
妖怪達の記憶は残ってるんでしょ?
だったら、まだ、種族間の争いは耐えないんじゃないの?」
ふと思い立ったことを桜っちに言ってみる。すると、桜っちは大きくうなずいた。
「確かにそうですよね、。
種族争いのような大きな争いは起きなくても、
何事もなかったようになることは不可能でしょうね・・・・」
「そっか・・・・。悲しいね、戦争って」
「例え戦争が終わったとしても、そこで傷ついた心や失った人への悲しみは、
戦争が終わっても消えることないんですから
・・・・戦争なんて、起こさないのが一番ですよね?」
「そうそう!
でもまぁ・・・・これから永久に続くよりは、
僕らの力で種族争いの連鎖を食い止めたんだから、それで上出来だと思うよ?」
「・・・・そうですね、種族争いを止められただけでもいいことですよね!」
「うん!」
あの疑問が浮かんだ時は心の中に雲が立ち込めたけど、
桜っちと話して、自然とその雲が晴れた。
そして、やっぱり、仲間はいいなと実感する。
「でもなぁ、やっぱり、学校はめんどくさい・・・・」
僕がそう言うと桜っちは苦笑いをした。
桜っちは、学校が嫌じゃないんだろうか?
「桜っちはさ、学校嫌じゃないの?」
「ぼっ、僕ですか?
うーーーん、嫌と言うかそれが当たり前のように思ってるので、
あんまり深くは考えたことないですね・・・・」
「おおっ、それは偉いね!」
「ええ、まぁ・・・・。
もともと、魔界でも学校に行っていたので、あの場所に比べれば
人間界の学校の方がいいかなと思っているので、全く苦じゃありませんね」
「そっ、そんなに苦しいの?」
「学校に行くぐらいなら、死んだ方がマシと思ったことが何回もありました。
まぁ、授業で死にかけたことも何回かあるので、あんまり変わらないんですけどね」
「ええっ!!!?」
僕は、その発言に物凄く驚いた。
学校に行くぐらいなら死んだ方がマシと言うのも驚きだけど、
その後の言葉が怖過ぎる。
授業で死にかけるって、一体何をやったらそんな・・・・。
「大丈夫ですか?顔色が悪いですけど・・・・」
「うっ、うん、大変だったんだね、学校・・・・。
でも、死にかけるって言うのは、ちょっと違うんじゃ・・・・?」
僕は、「さっきのは、訂正します」って言って来るのを待っていた。
だって、言葉のあやって言うのは、誰でもあるからね。
「いえ、正しいですよ?
僕達の学校では、主に真剣で授業を行うので一度ミスをしたら最後、
命取りになるんです。
おかげで、学校にいる間は一秒たりとも気が抜けなくて、
家に帰ったらクタクタでしたよ・・・・」
「しっ、真剣!?木刀とかじゃなくて?」
「はい。その他に、銃器の扱いもならうので、
練習試合では本物の銃や刀で戦うんです。
相手は妖怪なので、それぐらいして当然のようです」
「・・・・こわっ」
思わずそうつぶやいてしまった。
だって、学校で本物の銃や剣を使って戦うなんて・・・・しかも、練習試合・・・・。
僕はため息しか出て来なかった。
そして、そんな過酷な学校を卒業した桜っちは、
人間界の普通の学校なんて苦でもないんだなと実感した。
だって、そんな過酷な学校を先に経験したら、
ただ紙と鉛筆を使って勉強する学校の方がいいと思うのが当然だもんね。
「・・・・お疲れ様」
ねぎらいの言葉と一緒に、桜っちの肩をポンと叩いた。
「突然どうしたんですか・・・・?」
「えっ、別に、気にしなくていいよ。ほら、学校についたよ、入ろう?」
「はっ、はい・・・・」
僕は、うろたえている桜っちの手を引くと、学校の中に入った。