守りきれるか
僕は、修さんの身がとても心配だった。
なぜなら、今の修さんは、いつもの修さんじゃない気がするんだ。いつもの優しくて、冷静な修さんじゃなくて、ただ、相手を倒すことだけに集中する・・・・。そんなように見えた。
何がそう思わせるのかと言うと、雰囲気もいつもと違う感じがするし、刀の構えもいつもと違う。でも、それ以上に、修さんの目が怖かった。いつものような優しさのある目じゃなくて、今の目は、まるで、鬼神のような目だった。
「十、九、八、七・・・・」
僕は、突然数を数え出した修さんに驚いた。何を思って、そんなカウントダウンをしているのかがわからない。でも、僕は、それを聞くことは出来なかった。今の修さんに何か聞いただけで、自分がボコボコにやられてしまいそうな気がして、とても怖かったんだ。
「六、五・・・・」
「何を数えているんだね、君。自分がやられるカウントダウンでもしているのかな?」
「・・・・違う。お前ら全員が地獄に行くまでのカウントダウンだ」
修さんの発言に、そう問いかけた警官は高らかに笑った。きっと、この警官の集団の中で、一番偉い人なんだろう。
「何を言っているんだ。明らかに不利なのは、自分達の方だと自覚しているのか?可哀相な奴だ」
「三、二、一・・・・」
僕は、「一」の言葉の後、思わずゴクリと唾を飲み込んでしまった。体が強張って、緊張している。このカウントダウンの先には何が待ち受けているのか知りたいと言う気持ちもあったけど、それと同じくらい怖かった。とても怖かったのだ。だからなのか、冷や汗が止まらない。でも、僕は、ずっと修さんを見続けた。
「零・・・・」
修さんはそう言ったけれど、動こうとはしなかった。それを見て、再び警官は笑い出したが、後ろで、ドサドサッと言う音が聞こえて、慌てて後ろを振り返った。
僕も、慌ててその方向に視線を向ける。すると、そこには、血だらけになった警官の屍が沢山転がっていた。今までずっと高らかに笑い続けていた警官を除いた全員の屍が・・・・。
その光景に、警官の笑顔が引きつり、声すらも出ないまま立ち尽くしていた。修さんは、依然として動かないままだったけれど、烈火闘刃を鞘にしまったと確認出来た時には、残りの警官も、立ってはいなかった。
「修羅刹那・・・・」
修さんは、そうつぶやくと、後ろを振り返って、僕の方に歩いて来た。
その時の修さんからは、もう、あの鬼神のようなオーラは消えていて、いつもの修さんに戻っていた。
「・・・・こいつ等を病院に運ぼう」
修さんにそう言われて、僕は、大きくうなずいた。