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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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時に、誰かが犠牲にならなくてはいけない時がある

「ごっ、ごめんなさい・・・・」


女は、弱々しげにそう言うと、座り込んだ。なぜ謝るのか俺には理解出来なかったが、これ以上会話を聞くことは出来なかった。なぜなら、俺達の後ろから、警察と思われる大勢の足音が聞こえたからだ。


幸いなのは、まだ近くに来ていないから、森の奥にいる優羅達にまで足音が聞こえていないことだ。


これは緊急事態だと思い、小声で優羅に伝える事にした。女の心も落ち着いただろうし、今なら、話をしても大丈夫だろうと思ったのだ。


「おい、話しているところ悪いが、ちょっと報告をしなくちゃいけないことがある」


俺がそう言うと、優羅が僅かにうなずいた。しゃべることは出来ないから、うなずきで話を聞くらしい。


「警察が森の中に入って来た。まだ入り口付近にいるから足止めをするのは可能だが、俺の体力がどこまでもつか・・・・。それに、朱音のこともある。どうする?」


「あの・・・・私の仲間を帰してはもらえませんかね?」


優羅は、俺の言葉を無視して女と会話を進めて行く為、俺はイラッとしたが、会話中の為、俺の声が聞こえたら大変だと思い、口を閉ざす。


「・・・・わかったわ。この先に行けば、彼らに出会えると思います」


そう言って女が手をかざすと、何もなかった空間に、渦のような不思議な入り口が現れた。


「私は・・・・殺人未遂を起こしました。だから、これから冥界に行って、女帝様に罰をいただきに行きます。ありがとうございました。あんなに気持ちが乱れていたのに、今はこんなにも平静でいられます。それも、あなたのおかげです。ありがとうございました。それでは、私はこれで・・・・」


女は、そう言って立ち去ろうとするが、優羅がそれを引き止める。そして、何かコソコソッと耳元で言っているのだが、小声だから、聞くことが出来ない。


俺は、じれったい思いをしながらも、そのまま様子を見ていると、女は突然姿を消した。それに驚いていると、優羅がやっと俺に向かって話し出した。


「とりあえず、もう茂みに隠れていなくて大丈夫ですよ。彼女に貴方たちのことを言いましたし、離れていては話しずらいでしょう?」


「わかった」


俺はうなずくと、立ち上がって、しゃがんでいる朱音に声をかける。


「もう大丈夫らしい。と言っても、まだ、危機が全て消えた訳じゃないがな」


「そうなんですか・・・・。何か、私にも、お手伝い出来ることはありませんか?」


「・・・・大丈夫だ。お前は、何も心配することはない。強いて言うなら、『俺から離れるな』だな」


「えっ・・・・!?」


俺の言葉に何を勘違いしたか、朱音の顔が真っ赤になるが、俺は、それを無視することにした。下手に何かを言うと、余計に勘違いをされて面倒なことになりそうだったからだ。


「あの女はどうしたんだ?」


「あの方には、一度姿を消していただきました。警察が近づいて来ている今、彼女の姿を見られるのは面倒なことに繋がるので」


「でも、冥界に行くとか言ってたんだろ?姿を消したと言うか、本当に冥界に行っちゃったんじゃないのか?」


「それはないですよ、ちゃんと彼女の気を感じています」


「でも、なんであいつを引き止めたんだよ?もう、あいつをここに引き止めておく必要はないだろ?」


「まだですよ、彼女と、その彼氏さんが話し合っていません。互いが納得しないと、無駄なんですよ」


何が無駄なのか俺にはわからなかったが、それ以上聞いても何も答えてくれなかった為、俺は仕方なく諦めた。


「で、どうするんだ?もう直ぐ警備員が来る頃だぞ?」


「とりあえず、神羅さんに電話してみましょうか。彼が、もう直ぐここに来られるのであれば、私がここで待ってます。でも、彼が直ぐに来ないようなら、貴方も残って下さい。私一人では倒しきれないので」


「後者はわかるが、前者の意味がわからないぞ。神羅がもう直ぐでつくからって、一人で戦うって言うのか?」


「ええ、そうですよ。あなたは、朱音さんを守って下さいね」


「でも、お前一人であんなに大勢の相手が出来るのか?足音を聞いただけでも、百人以上はいるぞ」


「大丈夫とは言い切れません。もしかしたら、死んでしまうかもしれませんね。薬品はほとんど残っていませんから、調合も不可能ですし、体術もそこまでではないので、きっと無理だと思いますよ」


「なら・・・・」


「でも、ここは私に任せて下さい。彼らが会いたいのは私じゃなくて、貴方なんです。真っ先に会って話したいのは、貴方なんです。だから、一刻も早く、彼らの元へ行ってあげて下さい。私が言いたいのはそれだけです。では!」


優羅はそれだけ言うと、俺達の言葉も聞かずに森の入り口の方へと走って行ってしまった。


「おいっ、待て!神羅に電話するんじゃないのか?」


俺は、必死に大声でそう問いかけたが、優羅は俺の言葉を無視し、右手をあげた。それが何を意味しているのかはわからなかった。さよならなのか。それとも、また別の何かなのか・・・・。


「・・・・行こう」

「えっ?」

「凛達を助けに行くんだ」

「でも、叔父さんは・・・・」


俺は、無言のまま、朱音の腕を引いた。まだ、優羅が負けると決まった訳じゃない。なら、奴を信じるしかない。そう思ったのだ。


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