森の最深部へ
「それじゃあ、少し詳しく今までの経緯を話してもらえないか?」
「えっとですね、それじゃあ、私をかくまってくれていた人のことを話しますね。その人の名前は優河さんと言って、異質な私をかくまってくれたんです。命をかけて。でも、異質な私をかくまったせいで上層部の人達ににらまれてしまったんです。だから、警察官が来るんです。ここにいる優河さんを殺し、私を殺す為に」
その、「私を殺す」と言う単語に、今まで無言で前を歩き続けていた優羅が足を止めたが、そのまま、直ぐに歩き出す。
「そして、この森は、霊が降り易い場所らしくて、優河さんの彼女さんが現れたんです。それで・・・・」
「こんなことになったのか。まぁ、その辺りの説明はいい。なんとなく話は読めた。ところで、お前は桜木達と一緒にいたんだろ?凛のことは知ってるか?」
多分、それはないと思っていた。途中まで一緒に行動していたようだが、この森に入って別れたと桜木が言っていたから。しかし、女の返答は、俺の想像とは違った。
「凛ちゃんは、私を現実の世界へと連れて来てくれた大切な子です。その子ともお知り合いだったんですか?」
「・・・・あいつ、男だぞ?」
「えっ!?」
「それに、桜木も男だ」
「それじゃあ・・・・私、結構酷い事をしてしまったんですね、女の子と勘違いするなんて・・・・」
「でもまぁ、あいつらの容姿じゃ、仕方ないと言ったら、仕方ないんだろうな。声だって男とは思えない。普通は勘違いするだろう」
「もっ、申し訳ないです・・・・。でも、その子は、私を明日夏さんに託して、森の奥に留まっていました。でも、今はどうか・・・・。あの人に襲われて、明日夏さん達みたいにどこかに連れて行かれたかも・・・・」
「なるほど、行かないとわからない訳か」
「はい。あっ、ところでまだ、あなたのお名前を聞いていなかったんですけど、もしよろしければ、教えていただけませんか?私は、朱音と言います」
「ああ、俺は、亜修羅だ。凛達どうよう、妖怪だ。お前は・・・・」
そう考えた時、ふと、こいつの何かがおかしいことがわかった。なぜか、妖気と神の気の両方を感じる。最初は、神である優羅と、妖怪である俺がいる為、空気が混ざっているのかと思っていたが、地獄監獄にいる時には、この気を感じなかった。と言うことは、やはり、この女が・・・・。
「その様子だと、私の正体がわかったみたいですね。・・・・はい、私は、神と妖怪の間に出来た子供です」
「・・・・」
もしかしたらとは思っていたが、まさか、本当にそれが事実だとすると、とても驚かざるおえない。
神は、俺達妖怪を娯楽の為の道具としか思っていない。それなのに、こんなこどが起こるなんて・・・・。
「だから神達は、私を殺そうとしてるんです。私のお母さんは既に殺されてしまっていて、お父さんは、地獄監獄に閉じ込められています。神達にとっては、妖怪の血がある私は下劣な存在だから、上層部の人達は、どうにかして私の存在を消そうとしたんです」
「そうか・・それは・・・・」
俺が言いかけた時、優羅が突然振り返って、一言言った。
「それらしい人物を見つけました。ここは森の一番奥の部分なんでしょうね。一段と異様な気が立ち込めています」
「そうか。それじゃあ、俺達は、木の影にでも隠れてる。何かあったら教えてくれ」
「はい、わかりました」
優羅はそう言うと、森の最深部へ歩いて行った。