人間、どこで再会するかわからない
「それでは・・・・どうしましょうか?神羅さんが薬品を取りに行っている間、我々は・・・・」
「とりあえず・・・・森の中に入るか?」
「そうですね。中に入らないと、わからないことも色々とあると思いますし・・・・」
そう言って、優羅はさっさと森の中に入ってしまった。普通、入ったら出て来られないと言うことを事前に聞かされている場合は、ここまですんなり中に入れるものだろうか?普通なら、入れないかもしれない。入れたとしても、躊躇いは見せるはずだ。しかし、優羅には、躊躇いと言う仕草が一つもなかった。それは、自分の力を信じているのか。それとも、ただ、何も考えていないのか・・・・。きっと、後者の方だろうとは思いながらも、優羅が先にスタスタと入ってくれたことで、少しは気が楽になって、自分も躊躇わずに中に入ることが出来た。しかし、これが吉と出るか凶と出るか・・・・。
森の中に入ると、その森の異様な空気に、思わず体がビクッと震えた。それは優羅も同じようで、大きくため息をついていた。
「しかし、有毒性の霧がないにも関わらず、この気味の悪い空気はなんなんでしょうね?背中がゾクゾクします」
「ああ、そうだな・・・・。俺も、入った瞬間に感じた。ここは、なんだか異様な空気が立ち込めてるぞ」
「これは、妖気・・・・いや、もっと恐ろしい何か・・・・ですね。我々の気とは違う何かで、今まで感じたことがありません」
「・・・・そう言えば、桜木達はどうしたんだ?」
森に入った途端に感じた異様な空気で、桜木達のことを忘れていたが、確か、桜木達は、森の入り口近くに来ているはずだったのだ。普通なら、桜木達と会うはずなのだが、辺りを見渡しても、それらしき姿が見当たらない。
「とりあえず、森の奥に行ってみますか?この異様な気も、森の奥から発せられているようなので」
「そうだな。この気を発している奴が、何かを知ってるかもしれない」
そう思い、森の奥へと進もうとした時だった。突如、近くの草がガサガサと揺れて、思わず声が漏れそうになるが、なんとか飲み込んだ。
空気が張り詰めて、背筋に冷たい汗が流れる。何が来るのかと思って身構えていたのだが、出て来たのは、紅い髪をした女だった。
そいつからは、この異様な気を感じられなかった為、安全な奴だと把握出来た。しかし、優羅の表情は固かった。
「おい、どうしたんだ?あの女は味方だぞ?」
「それはわかっています。ただ、ちょっと・・・・」
そう言って優羅は顔を伏せた。俺は、何が起こったのかわからないまま、とりあえず、その女に話しかける。
「おい、お前が、桜木の言ってた女か?」
「あっ、明日夏さんを知ってるんですね!よかった・・・・。私一人だけになってしまったんじゃないかと思ってたんですが、よかったです!」
女は嬉しそうに微笑むと、駆け寄って来た。そして、俺の隣にいる優羅を見て、かなり驚いた顔をした。
「あっ・・・・優羅叔父さん」
その女の呟きに、優羅は顔をあげた。しばらく無言が続いたが、二つだけわかることがある。それは、この場が物凄く固い雰囲気だと言うことと、二人は顔見知りだと言うことだ。