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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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やっと目的地へ

「ここだぜ」


そう言って神羅は立ち止まった。目の前に広がっているのはとても大きな森で、一見、どこにでもありそうな普通の森だった。ここで何が起こるのか、全く検討がつかない。


「一体・・なんなんですか?この森は・・普段は・・立ち入り禁止に・・なってるん・・ですよ?よっぽどの・・用なんでしょうね?」


神羅に引きずられ、息の上がっている優羅はとても苦しそうだ。それを見て、ざまあ見ろと思う俺は、酷い奴なのだろうか?


「ああ、よっぽどの用だ。なんせ、ここに重要人物達がいるんだからよ」


そう言われた時、ふと、凛達のことを思い出した。今まではそれどころじゃなくて二人のことを忘れていたが、あの二人はどこに行ったのだろうか?


「そう言えば、凛達はどうなったんだ?」

「ああ、この森の中にいるぜ」


「・・・・なんでわかるんだ?」

「まぁ・・勘・・・・だな?そんでもって、幸明も一緒にいるんじゃないか?」


幸明と言う名前を聞いた途端、俺と優羅は顔を見合わせた。なんで、神羅は、こんなにも幸明と言う奴の名前を平然と言ったのか。それがまさに不思議だった。


「お前、よくあいつの名前を平然と言えたな。あいつは、俺達の殺し合いを楽しんでた奴なんだぞ?」


「・・・・奴は最低です。そんなに軽々しく名前を呼んでいいものじゃない」


俺達の反応に、神羅は少し気まずそうな顔をした後、俺に向かって手を差し出して来た。


「・・・・なんだよ?」

「ちょっと、携帯電話を貸してくれないか?」

「別にいいが、持って来てたらの話だな」


そうは言ったものの、持って来たと言う確率は、ほぼゼロに近い。普段外出する時は、一応ケータイは持ち歩くようにしているのだが、今回のは、外出は外出だが、ほぼ拉致と言っていいほどの勢いだった為、もちろん、持ち物の確認をしている時間もなく、ケータイを持って来たかどうかもわからないのだ。


多分持ってきていないだろうなと思いながらも、一応ケータイを探す。すると、意外なことに、ポケットにケータイが入っていた。


「ほら」


神羅にケータイを渡すと、耳をすます。誰に電話をかけるのかとても気になるところだが、それを聞くのも気が引ける為、盗み聞きをしようと言うのだ。


「はっきり言うと、そちらの方が、気が引けたりはしないのでしょうか?」


すぐ隣にいる優羅がボソッとつぶやく為、最初は独り言だろうと思っていたのだが、どうも、視線が俺の方に向けられていることがわかる。また、心を読まれたらしい。


俺も、無言で優羅のことをにらみ返してやると、ため息をついて目を逸らした。どうしてあいつは、妖怪でもないのに俺の心が読めるのか。今まで凛とかに心を読まれていたのは、妖怪の能力かと思っていたが、こいつは神だ。能力は関係ない。と言うことは、俺がよほど心を読まれやすい奴なのか・・・・いや、そんなはずはないのだが・・・・。


「そんなに余計なことを考えてていいんですか?神羅さんの電話を盗み聞きするんじゃなかったんですか?」


「お前は・・・・」


俺は、後ろを向いてケータイをいじっている神羅に聞こえたんじゃないかと思って、一瞬背中に冷たい何かが走ったが、聞こえていなかったようで、神羅は普通にケータイで話し始めた。


「よぉ、元気にやってるか?」

〔あっ、もしかして・・・・神羅さんですか!?〕

「ああ、そうだぜ。族長のケータイを貸してもらって電話してるんだ」


〔と言うことは・・・・修さんを助け出すことが出来たんですねっ!〕

「まあな。変わるか?」

〔あっ、それなら、是非!〕


急いでたんじゃないのか?と言う疑問を飲み込みながら、ケータイを差し出された為、とりあえずは受け取る。森に入れば直接会えるんじゃないのか?と言う疑問は、この時は思い浮かばなかった。


「もしもし」

〔あっ、修さんですか!よかったです、無事だったんですね・・・・〕


「まあな。色々あったが、無事に外に出てこられた。ところでお前、今どこにいるんだ?凛は一緒か?」


〔いえ、凛君は、今は一緒にいませんが、僕達のいる場所と同じ場所にいますよ〕

「・・・・達ってことは、お前一人じゃないのか?」


俺がそう問うと、桜木は少し躊躇ったようにしばらく無言が続いたが、やがて意を決したのか、しゃべり出した。


〔僕の直ぐ傍にいるのは、幸明と、女の子です〕


「・・・・そうか。今俺達は、お前がいる森の前にいるから、入り口まで来てくれないか?」


〔えっと・・・・一応、入り口にはいるんですけどね、外に出られなくて・・・・〕

「・・・・どう言うことだ?」


〔多分、入る分には問題ないんですけどね、出ることが出来なくて・・・・。バリアか何かに遮られてるんです〕


その言葉を聞いて、自然と二人の方を向く。二人は、俺が何を考えているのかわかったのかわからないのか、とにかくうなずいた。


「まぁ、とりあえず、俺達も中に行くから・・・・」


俺がそう言いかけた時、桜木が突然言葉を遮った。


〔待って下さいっ!修さん達は、中に入らないで下さい!〕

「・・・・なんでだ?」


〔えっと・・・・説明をすると色々と長くなるんで、後で説明します。でも、訳だけを言っておきますと、この森に、もうじき警察などがやって来ます。その人達は、この森の中にいる人を殺そうとしていて、僕らは、それを阻止しようと外に出ようとしたのですが、バリアに阻まれて出ることが出来なかったんです。だから、修さん達は外に残って、警察達を止めて欲しいんです〕


「なるほどな・・・・その、殺そうとする訳って言うのは、悪いことじゃないだろうな?」


〔・・・・えっ?〕

「例えば、脱獄したからとか、そう言うのだ」

〔いえ、全然違います。神達の勝手な都合です。だから、安心して下さい〕


安心の意味がよくわからないけれど、とりあえず、桜木達は、何も悪くない奴を殺そうとしている警察を止めようと森から出ようとしたが、なぜか、バリアに阻まれて、出られなくなったと言うことだろう。


しかし、桜木達がどうしてあの森に入ったのかがわからなければ、俺達も無闇に森に入ることは出来ない。多分、入ったら出られなくなるだろうから、まずは、その対策方法と、何をしようとしていたのかと言うことを聞いてからでないと、森に入るのは危険過ぎる。


「ところで、お前達は、何が目的でこの森に入ったんだ?一見、なんの変哲もないただの森だが・・・・」


〔あっ、えっとですね、それは・・・・〕


「待て!詳しい説明はいいから、とりあえず、何を目的でその森に入ったのかだけを教えてくれ」


桜木が丁寧に話をしようとする為、それを遮って言った。警察が来ると言うことは、色々面倒なことになりそうだから、出来るだけ早く三人で話し合わないといけない。その為には、長電話はダメだ。


〔はっ、はい・・・・。実は、この森の霧・・・・って、今は霧がないんですけど、少し前までは、幻を見せる霧があったんです。そして、その霧と言うのが、魔界で種族争いを起こしている原因の霧なんです。幸明は、ここの霧を魔界にまいてたんですよ。だから、種族争いのもとになる霧を消滅させてしまえば、幸明もどうにも出来ないんじゃないかと思って、凛君とこの森に来たんです〕


「わかった。とりあえず、しばらくしたら掛けなおすかもしれない」

〔あっ、了解です〕


俺は、それだけ言うと通話を切り、電話で話していたことを二人に話して聞かせた。


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