遂に戻れました
「おいっ、てめぇ!何してんだっ!」
俺は、そう怒鳴られて目が覚めた。おまけに大きく揺すられてるせいか、頭までグルグルしている。何とか神羅の手を摑んで服から離すと、大きく伸びをした後、欠伸をしてから立ち上がった。まるで、寝起きにコーヒーカップに乗せられたようだ。
「貴方、どうして野蛮な行為しか出来ないのですか?」
「お前は修羅じゃねぇな。お前ら、そっくりでわかりづらいぜ」
「あははは・・・・気のせいですよ。ところで、修羅様はどこに行かれたのでしょうか?」
自分で聞いてから、なんて馬鹿な発言をしたんだと思って、ため息をついた。
「そんなの知らん。あんな奴、どうなったっていい」
「まぁ、そう言わないで下さい。とりあえず、探しに行きましょう?」
「・・・・ふんっ、あいつなんか・・・・」
神羅はボソボソと言っていて、俺が修羅を探そうと言っても、素直にうなずきそうにないため、少し素に戻って言ってみることにした。
「貴方はどうでもいいことかもしれませんが、俺にとってはどうでもいいことじゃないんです。貴方にとって、修羅様は最低な人間かもしれませんが、俺にとっては、修羅様は命の恩人なんです」
「・・・・」
「貴方だって、命をかけて護らないといけない人がいるでしょう?俺は、それが修羅様なんです。それだけです・・・・」
俺は、少し本気に言い過ぎたと思って、慌てて演技に戻ると、前に歩き出した。
「わかった。俺が悪かった。ちょっと、奴のことを悪く言い過ぎた。すまん」
神羅が謝って来る為、俺は笑顔を浮かべた。それを見て、ほっとする神羅を見て、やっぱり、少し本気で怒り過ぎたなと思った。
しかし、なぜ、あいつのことを貶されて、あそこまで本気で怒るのかと不思議に思った。しかし、とりあえずは歩いて行こうと思い、気にしないことにした。
「そう言っていただけると、こちらとしてもありがたいです。では、修羅様を探しましょう・・・・」
「そうだな」
その時、突然後ろから声が聞こえた。
「いたぞーーーーっ!捕まえろ!」
「!?」
「えっ??」
俺達は、驚いて後ろを向くと、なぜか警備員が追いかけて来た。
「なっ、なんだってんだ!?」
「俺に聞かれてもわかりませんが・・・・とりあえず、やるしかないようですね」
とりあえず説明は後にして、警備員を倒すことに専念することにした。そろそろ優羅も来る頃だろうし、そうしたら、優羅が説明をするだろう。
俺は、警備員に突進して行くと、神羅よりも先に戦い始めた。
その途端、突然優羅からの通信が入って、思わず注意がそちらに向き、その隙を突かれて腹を殴られるが、なんとか最小限のダメージに抑えた。
「なんだ?出来れば、今は話しかけてもらいたくはないんだが」
「すみません、でも、とても大事な用なので」
「用件はなんだ?」
「もう直ぐ薬の効果が切れる頃です。後四、五分ぐらいでしょう」
「・・・・了解」
元々、刀は優羅のもとにあるのだ。きっと、後四、五分も持たないだろう。せいぜい二、三分だ。
そんなことを思っている時、突然、頭がグルグルと回り始めて、焦点が定まらなくなった。それが何を意味しているのか、自然と悟った。
俺は、目の片隅で優羅がいる方向を捉えると、そちらの方向に手を伸ばして言った。
「修羅様、刀を下さい!」
その一言で、俺の状態がわかったのか、優羅は刀を俺の方に投げると、自分も走り出した。しかし、俺達の事情を知らない神羅は、とても焦って喚いている。
「おっ、おい!俺、どうすりゃいいんだよ!」
「お前も加勢しろ!でないと、色々とまずい状況だ」
「わっ、わかった!」
神羅は、返事はしているものの、その場に立ち止まって考え込んでいる。それに気づいた警備員が神羅の隙を突いて襲おうとしていた為、俺は、何とか走って行くが、間に合うかどうかわからない。なぜか、妙に体調が悪くて、足にも力が入らないのだ。だから、間に合うかどうか・・・・。
「避けろ!」
なんとかそう声を上げるけれど、神羅の反応は遅く、俺は、そのまま神羅の前に出て、警備員の攻撃を受けて吹っ飛んだ。
「おいっ!大丈夫か??」
神羅がそう言って走り寄って来るが、それよりも早くに、優羅が走り寄って来てフードを被せ直すと、俺が取り損ねた刀を取りに行こうとするが、ギリギリのとこりで呼び止める。
「待て!もう遅いぞ、元に戻ってる!」
「それでも、戦う為に武器は必要ですよね?」
「まあな」
「だから、取りに行きます」
俺は、ゆっくりと立ち上がると、完全に回復した体で、警備員の群れに向かって歩いて行く。
修羅が刀を投げ、今度はそれを上手くキャッチすると、身をかがめて居合いの構えを取ると、突っ込んで来た警備員を一斉に吹き飛ばした。久しぶりに妖力を使ったせいか、少し暴走気味だったが、まぁ、厄介払いは出来たことだし、いいだろう。