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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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案外気づかないのが人間です

「ああっ、そうか・・・・・!」

「何がわかったんだ?」

「俺、道を一本間違えていたようです。どうりでおかしいと思った。なるほど・・・・」


俺は、そうブツブツ呟くと、地図を見て、道を確認しているフリをして、優羅に話しかける。


「今度は間違えるなよ。次に間違えたら、神羅から信用を失って、お前のところに連れて行く前に、神羅が単独行動を始めるぞ」


「そうやって脅さないで下さいよ。はっきり言うと、彼は、貴方よりは心の広い方じゃないんですか?」


「あいつは、自分が認めた相手じゃないと、言うことを聞かない」


「それじゃあ、ちゃんと言うことを聞く貴方は、彼に認められてるってことじゃないですか?」


「なんで、今、そんなことを言うんだ?」

「彼、貴方の髪を無くしてしまったんですよ」

「髪・・・・?ああ、あの時に取ってたからな、あの、鬘の髪だろ?」


「ええ、それでも、彼はそのことを知らないから、その髪をなくしたことを物凄く悔いていましたし、泣いていました」


「・・・・」


優羅の言葉が自分の心に刺さり、抜けなくなる。俺は、神羅に優しくした覚えもないし、むしろ、酷いことを沢山して来た。それなのに、俺の死を悲しんでくれたのだ。


護衛だからと言うこともあるとは思うが、嬉しい事に変わりはなかった。


「貴方の護衛だからと言うことも少なからずあると思いますが、それは、自分が責められるとか言うことではなく、自分が護衛としてつけられているのに、貴方を守り切れなかった悔しさだと思います。でも、それ以外は、純粋に、貴方の死を悲しんでいるんでしょうね。彼は、頭脳種族の族長として護っていたんじゃなく、一人の仲間として、貴方を護っていたんじゃないでしょうか?」


「・・・・」


優羅の言葉に、俺は何も話せなくなる。色んな思いがあって、でも、そのうちの、どの感情が自分の正しい感情かわからなくて、何も言えなかったのだ。


ゆっくりと、後ろにいる神羅の方を振り返ってみると、俺の心境とは裏腹に、とても呑気そうにボーッと辺りを眺めていた。


それを見た途端、突き刺さっていた何かがスルリと抜けて、やっと苦しくなくなる。後で、ちゃんとお礼を言えばいい。今は、神羅を優羅のところに連れて行くのが最優先されることだからな。


「では、出発しますか?」


俺がそう話しかけると、神羅は、ハッと我に返ったような表情をすると、大きくうなずいた。


「ああ、出発しようぜっ!」


その表情を見て、俺は、自然と笑みが浮かんだ。なんでだかわからないが、笑みが浮かんだのだ。


「今度は間違うことはないよな?」

「・・・・それは、愛嬌にお任せすると言うことに出来ませんかね?」

「そんなので許される訳ないけどなっ!」


そう笑顔で返されて、物凄くほっとする自分がいた。もしかしたら、俺は、こいつを少しだけ勘違いしていたのかもしれない。


「でも・・・・怒らないで下さいよ?」

「怒りゃしねぇよ。機嫌を損ねない限りな!」

「それ、物凄く個人的なものさしじゃないですか・・・・」


俺がボソッとつぶやくと、神羅は得意そうな顔をする。


「まぁ・・・・それは、人間関係は難しいんだよって言うことだ。人生、色々と大変だからな」


「その様子だと、貴方、よっぽど大変な人生を送って来たようですね?同情します」

「・・・・お前、皮肉屋って言われないか?」


俺は、皮肉で言ったつもりではなく、ただ、普通に言ったつもりだが、神羅には皮肉に聞こえたらしい。今思い返すと、「同情する」の部分が皮肉に思わせているのかと思った。


「いえいえ、そんなことを言われたことはありませんよ。天使だとは言われたことありますけど」


俺が、今度こそ、本当の皮肉を言うと、神羅はイラッとした表情をして拳を握り締めたが、なんとか息を吐いて、自分を落ち着かせている。


「そうかそうか。そんなことはどうでもいいぜ。さっさと行こう!」

「そうは言っても、貴方が問うて来たことなので・・・・」

「お前、皮肉屋って言われたことあるだろ?」


俺は、またもや同じ質問に、思わずため息が出そうになったが、再び笑顔で皮肉を返してやった。


「それ、二度目ですけど、俺、皮肉屋なんて言われたことはありませんよ?」


「いや、それは絶対に嘘だ。お前が修羅の側近だからって言わないだけで、お前はかなりの皮肉屋だぞ。自分でも気づいてるだろ?皮肉を言ってるって」


「えっ、俺・・・・皮肉屋だなんて、一回たりとも思ったことありませんけど・・・・?俺、そこまで皮肉屋ですか?」


俺がそう言うと、神羅は後ろを向き、ボソボソッと何かを呟くと、直ぐに俺の方に向き直り、ため息をついて、俺の背中を押す。


その時、自分の正体がバレないかとビクビクしたが、どうやらバレていないようで、大きく息を吐いた。


「方向、こっちじゃないんですけど・・・・」

「それを早く言えっての!」


「でも、俺は、貴方に背中を押されたので・・・・」

「俺のせいにすんなっての!とか、先進めねぇじゃねぇか!早く案内しろよ!」


そろそろ本気で怒り出しそうな為、俺は、素直に道案内に徹することにした。


「全く・・・・無粋な方ですね。俺は元々、貴方が修羅様の元にたどり着くまでの道案内をするはずなのに・・・・ここまで時間がかかるとは思って無かったですよ」


「そんなの、お前のせいだろ!」


神羅が怒る為、俺は、一瞬だけ顔をしかめると、大きく息を吐き、神羅から地図を強引に奪うと、優羅に文句を只管言った。優羅の間違いなのに、どうして俺が怒られなくちゃいけないんだ。後で、散々文句を言ってやると誓うと、優羅に文句を言うのをやめて、歩き出した。


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