序盤から転びました・・・・。
「優羅と修羅って・・・・似てるな?」
握手をした後、ふと気づいたように神羅が言う為、俺は、確かにそうだと気づいた。それまで全く気づかなかったのだ。いや、納得している場合じゃない。さっさと適当な言い訳を考えないといけない。
「ああ、俺のこの名前、修羅様が付けて下さったんです。だから、似てるのかもしれません」
「そうか・・・・優羅か」
「・・・・はい、それがどうかしましたか?」
意味深に呟く為、何かあるのかと思ったが、神羅は首を振った。
「と言うか・・・・方向感覚抜群って、関係なくないか?ここは元々一方通行だし・・・・」
神羅の最もな発言に、俺は一瞬自分の言葉を悔いたが、とりあえず、適当に話を進めることにした。
「そうか、貴方は知らないのかもしれませんね?俺達の通路」
「・・・・俺達の通路?」
「ええ、俺達、主にこう言う場所で移動しないんですよ」
「・・・・は?」
俺は、頑張って今まで使っていた通路のことを説明しようとするのだが、どう説明していいのかわからない上に、結構適当なことを序盤から言っていた為、神羅が全然わかっていない。
こう言う時に、自分の説明下手なところが憎く思う。自分で言っている言葉ながら、何も知らない状況で聞かされたら、意味がわからないだろうと思うくらいだ。当然、神羅がわからないのは当たり前である。
「こう言う場所と言うのが、普通の・・・・俺達が今立っている通路だとわかる。しかし、それ以外に通路と呼んでいる場所がわからない。それはどこだ?」
「・・・・それはですね、ズバリ、下水ですよ」
俺の発言に、神羅がポカンとした顔をした。当然だ。俺だって、自分で下水と言って、馬鹿じゃないかと思ったのだ。
しかし、言ってしまった物は仕方ない。下水で話を通すしかないのだ。
「はぁ?下水なんて、こんなところにないだろ?」
「いやいや、俺、嘘はつきませんよ。嘘だけは・・・・ね?」
「・・・・下水かよ・・・・臭いんだろ?あそこだから黒いマントを着てるのか?」
俺は、その問いに肯定しようとしたのだが、突然優羅から通信が入り、小声で注意される。
「貴方、なにデタラメばかり言ってるんですか。少しはまともに答えて下さい。私達が通ってるのは下水なんかじゃありませんよ。『隙間』です」
優羅はそれだけ言うと、再びしゃべらなくなる為、俺は何か言おうと思ったが、傍に神羅もいる訳だし、やめようと思った。
そして、とりあえずすることは、通路が下水と言うのを否定することだ。
「いえいえ、違いますよ、下水なんて思わないで下さい。嘘ですから」
俺はそう言うと、明らかに嘘だったかのように笑う。すると、神羅はイラッとした顔をしたが、それ以上何かをすることはなかった。怒られるかと思っていた為、それを見て、少しホッとした。
「まぁ、そう言う嘘は置いといて、そろそろ出発しましょうか」
「どこを通るんだよ?」
そう言われて、優羅が言っていた「隙間」とか言う言葉を使ってみようと思う。
「俺達が通る道・・・・それは、『隙間』ですよ」
「・・・・隙間?」
「ええ、聞くより見る方がわかりやすいです。では、行きましょう」
「えっ、あっ、おいっ!」
俺は、強引に神羅の腕を引っ張ると、優羅に告げられた道を進むことにした。