やっと出会えました
しかし、よく考えてみると、ここの通路は一本道で、とても裏道があるとは思えない。しかし、とりあえず、地図を持っているのは優羅なので、言う通りに動くしかないなと思っていた。
しばらく歩くと、神羅と思わしき人物が見えて来た。その時、突然優羅から通信が入った。
「大分護衛の方に近付きましたね。そろそろ、裏道から先回りをした方がよさそうですね」
「そうは言っても、裏道なんてどこにあるんだよ?ここの道は一本道じゃないか?」
「普通には見えないから裏道なんじゃないですか。そこを右に曲がって下さい」
「そうは言っても、正面には壁しかないし、その奥はマグマだぞ」
「あっ、そうでしたね。じゃあ・・・・彼を追い越して下さい」
「・・・・は?」
「彼にバレないように前に回って下さいね。それじゃあ」
「あっ、おいっ!」
勝手に優羅が通信を切る為、俺はしばらくの間呼びかけ続けていたが、手段はそれしかないと思い、俺は、神羅を追い抜くことを考える。
しかし、どうやって前を通っていけばいいのか。あいつは結構敏感だから、気配を殺して横を通ろうとしても、絶対無理だろうと思っていた。
しかし、よく考えてみれば、前に一々回り込むことはないのだ。後ろから話しかけたっていい。そう思うと大分気が楽になって、普通に横を通って行くことにした。
「うるせぇよっ!もっと声潜めろ!」
【なんでそんなことをしなくちゃいけないの?私、うるさい?】
「そこだけ無邪気に言うな!」
俺は、出来るだけ気配を殺して目の前に回り込んだが、そんなことをしなくても、今の神羅は地図に気をとられていて、俺が目の前に立ちふさがっても数秒は気づかなかった。
しかし、直ぐに気が付き、姿勢を低くして身構え、今にも襲い掛かって来そうな感じ立った為、俺は急いでフードを取った。
「武器を向けないで下さいよ。俺は、貴方の味方です」
いつもは笑みを浮かべることはないのだが、優羅に演技をしろと言われている為、止むを得なく微笑みを浮かべた。
「なら、なんの用だ?」
用心深く問われ、俺はどうしようかと迷ったが、あまりにも考え込むと、より疑われそうな為、適当なことを言った。
「いや・・・・どうも、苦戦しているようなので、部下である俺に連れて来いと頼まれたんです」
「そうなのか・・・・。お前は修羅の部下なのか。それなら、修羅のことを知ってるのか?」
かなり口からでまかせを言ったのだが、神羅が素直に受け取ってくれた為、助かったと思いながら、神羅からの問いに答える。
「うーん、修羅様のことは、俺もよく知らないんですけどね。あの人、結構部下とかにも秘密を教えようとする人じゃないので。側近の俺でさえもよくわからないお方なのでね。俺が知ってることと言えば・・・・修羅って名前だけですね」
「・・・・そうなのか」
ため息と一緒にそうつぶやく神羅の表情が、今までに見たことのないような表情で、俺は対応に困った。なんと言っていいかわからずに、とりあえず、優羅のところに連れて行くことが先決だと思った。
「まぁ、とりあえず、俺について来てくれれば的確です。俺、こう見えて、方向感覚抜群なんで」
「そう言えば、お前、名前は?」
そう聞かれて、俺は、とっさに本名を答えそうになったが、優羅の言葉を思い出して、何とか喉元でその言葉を飲み込んだ。
「俺は、優羅って言います。以後、お見知りおきを」
俺はそう言うと、出来るだけ優羅っぽくお辞儀をして、あいつなら握手ぐらいするだろうと思って、握手をした。