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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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尾行って、思ったより大変・・・・

「よかった。まだ、彼は変な方向へは向かっていないようですね」

「そうか」

「ほら、あそこに、彼の様子が見えるでしょう?」


そう言って、正面を指差す優羅の指を辿って視線を移動させると、意外にも近くに神羅がいることがわかった。


「こんな近くで観察してて、あいつに感づかれないか?あいつ、護衛をやってる分、普通の妖怪よりも、勘や気配を察知することに長けてるんだぞ」


「大丈夫です。心配には及びませんよ。では、ここからは別行動です。貴方はこの画面を見て、彼の居場所を把握して私に教えて下さい。私は、先に走って行って、彼にぶつかりますから」


「・・・・ああ」


俺は、優羅から目を逸らし、渡された機械を見下ろす。画面には、赤い丸が、クネクネと折り曲がっている通路を移動している。これが神羅と言うことだろう。


「俺達の現在地はどこだ?」


「現在の居場所調べる為には、ここのボタンを押して下さい。そうすれば、3D映像でわかり易く出て来ますから」


俺は、優羅に教えられたボタンと押すと、神羅の赤い丸とは別に、青い丸があるのを発見した。きっと、ここが俺達がいる現在地だろう。


「それでは、私は行きますよ」

「最後に一つ言っておくが・・・・」


俺は、走り出そうとしている優羅に向かって一言言った。俺が身をもって体験した忠告だ。


「その姿で走り回らない方がいい。以上だ」


「大丈夫ですよ、体を縮めたとは言え、それで身体能力に支障が出るほど運動音痴ではないので」


俺は、優羅の言葉にムカッとしたが、微笑みを浮かべて手を振った。


優羅は意外そうな顔をして、俺のことを伺っていたけれど、俺が真顔に戻り、追い払うような仕草をすると、慌てて走り出した。


しかし、慌てていたからかわからないが、優羅は何もない場所で転んだ。きっと、自分の足に自分の足を引っ掛けて転んだのだろう。一番恥ずかしい転び方だ。


俺は、それを見ると、慌ててかけより、優羅を立ち上がらせると、微笑みを浮かべた。


「だから言ったでしょう。俺の言うことを聞かないから痛い目に合うんです。自分だけ特別とか、そんなことを考えない方がいいですよ」


俺は、皮肉を込めて、優羅の口調で言ってやった。すると、優羅は悔しそうな顔をした。


「・・・・わっ、わかってますよ!」


「じゃあ、謝ってもらおうか。俺が、その小さな体に慣れないことを馬鹿にしたことをな」


「・・・・わっ、悪かったです」


優羅はいじけたようにそう吐き捨てると、視線を逸らした。俺は、本当は全く許していなかったが、これ以上時間を食っていると、神羅が変なところに行ってしまいそうな為、仕方なく優羅を許したフリをしてやった。


じゃあ、本音はどうなのかって?そんなの、許してないに決まってるだろ?あんなガキみたいな謝り方が許される大人なんか、いる訳ないんだ。


俺がため息をついて画面に視線を移した時、突然直ぐ近くで優羅の声が聞こえた為、俺は物凄く驚いた。優羅は、今さっき走って行ったはずなのに、直ぐ近くで声が聞こえたからだ。


「お前、どこにいるんだよ!?直ぐ近くにいるのか?!」

「いませんよ。これは、貴方が着ている服に仕込まれた通信機です」


「・・・・お前、なんで、俺にそれを言わなかったんだ・・・・。おかげで驚いただろうが・・・・」


「まぁ、それはどうでもいいとして・・・・。護衛の方は、今、どこに向かってますか?」


俺は、「そんなことって・・・・」と言う怒りを込めた言葉を何とか飲み込み、優羅に渡された機械で神羅の居場所を調べる。


「神羅は今・・・・地下五階にいる。どうやら、地上に向かってるようだな」


「なるほど・・・・そうしたら、貴方も彼の居場所まで走って下さい。私もその場所まで行きます」


「なんで、俺まで一緒に来なくちゃいけないんだ?」

「そうした方が、色々便利だからです」


俺はそう言われて、もう、深く問うことはやめて、優羅の言うことを聞くことにした。


ここでまた何かを言ったら、こいつは絶対何かを言い返して来て、言い合いが止まらなくなる。そうなったら、色々と面倒だ。だからもう、諦めよう。


この考えを今まで何回して来たか数えていないが、きっと、三回以上は諦めて来ただろう。もう少し、周りに合わせてもらいたいと心底思う。


俺はため息をつくと、機械に表示されている赤い丸の後を追って、走って行く。


しかし、それが中々大変である。なぜなら、神羅と同じ道を歩いていないからだ。同じ道を歩いていれば、追いかけるだけなのだが、俺が通っているのは、狭い隙間なのだ。当然、通路では真っ直ぐ続いている道でも、俺の通っている隙間は行き止まりのことだってある。


それで、何度迷いそうになったことか。その度に出るため息が俺のやる気を削ぎ、そろそろ精神的にも支障が出始めた時だった。


「そろそろ突入する予定ですが、直ぐ近くに来ていますか?」

「・・・・ああ。行くなら、早く行ってくれ。精神面が色んな意味で壊れそうだ」


「わかりました。では、最終確認をします。貴方は私の部下で、振る舞いを私のようにして下さい。わかりやすく言うと、貴方の性格の正反対にして下さい。そうすれば、わからないでしょう」


「・・・・ああ」


俺は、色々言いたいこともあったが、口を開いただけで、大きく息を吐いた。ダメだ。もう、意見を言う余力すら残っていない・・・・。


「じゃあ、行って来ます」

「ああ、行ってらっしゃい」


俺は、半ば、気合の抜けた声で返事をすると、その場に座り込んだ。ここにたどり着くまで滅茶苦茶走り回って大変だったんだ。少しは座って休んでも怒られはしないだろう。


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