運を持ち合わせた者は、最強です
「おいっ、こんなに同じ場所に多くの奴が隠れていて、バレなくないか?」
「それは、時の運です。もしバレたとしても、相手が味方なら問題ないのですが・・・・」
そんなことを、ほぼ口の動きだけで話していると、俺達の隠れている方向に真っ直ぐ足音が近づいて来るのがわかった。
俺は、みつからないように、今まで以上に体を縮めたが、懐中電灯の光が俺達の隠れている場所に当てられ、これまでかと思った。
「お前達、そこで何をしている!」
「・・・・」
「クソッ」
「これで、逃走劇も終わりか」
神羅達が言った途端、警備員が笛を吹き、どこからともなく、無数の警備員が俺の部屋に入って来て、神羅達の腕を摑むと、部屋の外に連れ出して行った。
俺達が捕まるのも時間の問題だろうなと思いながら待ち構えていたのだが、いつになっても俺達のもとに警備員が近付いて来ることはなく、そのまま、多くの警備員は、部屋から出て行った。
それと同時に扉が閉まり、外の音が遮断されたが、騒がしかった為、神羅達は抵抗しているのだろうと言うことがわかった。
俺達は、扉が閉まったことを確認すると、そろそろと影から出て来て、大きく息を吐いた。
「まさか、バレないとはな・・・・」
「護衛の方達が見つかった時は、終わったと思いましたが、私の運も、まだ尽きてないようですね」
「それにしても、幻覚を見せる薬品を撒くこともなく終わったな」
「そうですね。きっと、警備員達は、あの骨に気づかなかったでしょう。でも、後でここにもう一度来ると思うので、一応薬品は撒いておきましょう」
「で、俺達はどうするんだ?」
「多分、あの方達が本気で抵抗をすれば、あんな警備員ぐらい、打破することが可能でしょう。だから私達は、あの方達を、ここから出す手助けをします」
「と言っても、ここからどうやって出るかとかって、わかってるのか?」
「ええ、方法を知らなかったら、こんなところに来る訳ないじゃないですか」
「・・・・」
俺は、無言で優羅を睨みつけるが、仕方なくため息をついた。
「そろそろ警備員も離れて、あの方も出口の方へと歩いている頃だと思います」
「でも、どうやってあいつを助けるんだよ?」
「とりあえず・・・・私も、貴方みたいに、姿を縮めることにします」
「はぁ!?」
「別にいいじゃないですか。そして、貴方と同じ服を着ます。そして、わざと彼にぶつかります。そこから会話を繋げます」
「そうか・・・・でも・・・・」
「わかってます。貴方も彼と話したいでしょう。だから一回、私はここの地図を彼に渡して、姿を消します。そうしたら、今度は貴方が彼の前に現れればいいのです」
「しかし、おかしくないか?同じ格好をした奴が二回も出て来るなんて」
俺がそう言うと、優羅は色々と考えた後、口を開いた。
「それでは、こうします。貴方は、私の部下と言うことにしましょう。そうすれば、『遅いから案内役として来た』みたいな言い訳が出来ます」
「・・・・おい、それって、自分が高い身分になりたいとか、そんな気持ちがあるからとかじゃないだろうな?」
「何を言ってるんですか?私は、そこまで子供じゃありません。そうすればいいんじゃないかと思ったんです。それから、演技をしてもらいたいんですよ」
「演技?」
「ええ。貴方は、彼に優羅と名乗り、私に似た振る舞いをして下さい。そして、私は修羅と名乗り、貴方に似た振る舞いをします。そうすれば、自然と、彼の目は私に向けられるはずです。それなら、多少ボロが出ても、バレにくいと言う訳です」
「・・・・なるほどな。お前にしては、よく考えたな」
俺が一言言うと、優羅はジトッとした目で俺を睨んだが、俺はその睨みを受けながし、ゆっくりと立ち上がった。
しかし、突如、巨大な地震が起こったかのように、足元が揺れ、目の前が真っ暗になって、俺はその場に倒れた。
「大丈夫ですか!?」
それにはさすがに驚いたようで、優羅も心配そうに駆け寄って来たが、息を飲んだ。
俺は、何とか起き上がると、自分の体が元の大きさに戻っていることを確認した。
「戻ったんだな」
「・・・・どうしましょう」
「ん?どうした?俺が元の大きさに戻ったら、そんなにまずいことなのか?」
「ええ、まぁ・・・・」
「まぁ、確かに、この姿であいつの前に出ることは出来ないが、また、姿を縮めればいいことじゃないのか?」
「それが出来れば、私もここまで落胆しませんよ」
俺は、優羅のその言葉に、全身から血の気が引いて行くのを感じた。
まさか、もう一度縮むことが出来ないなどと思っていなかった為、俺は気楽に考えていたのだが、それが不可能となると、一体どうしたらいいんだ・・・・。