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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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運動神経って、結構重要ですよね?

「おっと!」

「貴方、またつまずきそうになったんですか?多少は慣れて下さいよ。もう、その格好で二時間は経っているんですから」


「うっせーな。俺だって必死なんだぞ。しかし、体が小さくなるなんて、動きずらくなるだけで、ろくなことがないな・・・・」


俺がブツブツ文句を言いながら歩いていると、前を歩いていた優羅が立ち止まり、振り返った。


その顔には微笑みが浮かんでおり、俺は、それを見ただけで、優羅の考えていることがわかった。


「もしよかったら・・・」


そう言って、懐を探る優羅を手で制し、視線を逸らした。


「もし、いいことなんかない。どんな時でもNOだ。そして、俺の愚痴なんて、どうでもいいだろ?早くあいつ等のいる場所まで案内してくれ。その為に体を縮めると言うことまでしたんだ」


「わかりましたよ。よっぽどあの者が心配なのですね。まるで母親のようですね」

「・・・・何か言ったか?」


ニコニコしながら言う優羅の顔をジトッとした目で睨むと、俺はため息をついた。


なんだか最近、自分がお節介焼きのように思えて仕方がないのだ。昔は、自分以外の奴に興味はなかったのだが、凛達と出会って、随分と性格が変わってしまったようだ。


しかも、あまりにお節介を焼いたり心配をしたりするから、母親みたいだと言われることも少なくない。だから、嫌な気分になるのだ。


「まぁ、とりあえず、もう少ししたら着きますよ」


「そうか・・・・そう言って、早三十分は経っているように感じるのは、俺の気のせいか?」


「まぁ、そんな減らず口を叩かずに。ほら、この上に上れば着きます」


そう言われて、俺は、床から視線を持ち上げたが、そのまま顔が引きつった。


「あっ、あれを上れって言うのか?」

「まぁ・・・・ロッククライミングですね」


「・・・・お前、なんで人間界の言葉を知ってるんだよ?白衣のこともそうだ。人間界にいた俺よりも、よく知ってた。なんでだ?」


「まぁ・・・・一応研究員ですから、色んな書物を見ます。そこに、人間界のことが書いてあったのですよ。その中の一つに、ロッククライミングと」


「・・・・一体、どんな書物を読んでるんだよ」


俺がボソッとつぶやくと、それに気づいた優羅が首をかしげて来るが、俺は首を振ると、目の前の断崖絶壁と言うに等しい壁を見上げた。


「もう少し楽な道はないのか?」

「ないですよ」


俺の僅かな希望は、即消されて、思わずため息が漏れる。ここまで即答をされると、逆らおうと思う気にもなれなくなる。


「まぁ、上手く登って行きましょう!」


「・・・・よく、そんなに乗り気でいられるな。こんなツルツルで足の掛け場のような場所を登れるのは、凛くらいだぞ・・・・」


「早く上がって下さい!警備員に見つかりますよ!」


そう上の方から声をかけられて、俺は思わず、上を見るのを躊躇った。まさかな・・・・、まさか、俺のあの呟きの間だけで、こんな壁を上ったはずがない。そんなことが出来るのは、化け物か、凛ぐらいだろう。


そんなことを思いながら、下を向いている俺に追い討ちをかけるように、再び上から声が聞こえる。


「もしかして、これぐらいの壁も登れないんですか?見込み違いだったのでしょうか・・・・」


その言葉にイラッと来て、俺は思わず上を見上げて言い返す。


「おいっ!何勝手なこと言ってんだよ!俺がいつ、登れないと言ったんだ!」


そう言ってから、慌てて下を向いた。やはり、優羅は壁を登り、真上で俺の方を覗きこんでいた。それに、自分で登れると言ってしまった。絶対無理なことなのに・・・・。


「どうしたんですか?登れるなら、早く登って来て下さいよ」


これは、素なのか皮肉なのか、俺にはわからなかったが、どうも、今の俺には皮肉にしか聞こえない。いや、他の誰が聞いたって、これは皮肉だ。


しかし、ここでどう反応すればいいのか俺にはわからなかった。あいつは思った以上に頭の回る奴だから、俺が必死に考えた言葉すら、平気で跳ね返してくるだろう。だから俺は、何も言わずにうつむいていた。


「・・・・まったく、登れないのであれば、下手な意地を張らずに私に言って下さいよ」

「だっ、誰がそんなっ!」


俺がそう反論した途端、ロープが垂れて来た。俺は、それを見て、なんとも言えない気持ちになった。俺の考えているとおりのことを言って欲しくはない。そう願いながら、俺は、上を見上げた。


「そのロープを体に縛り付けて下さい。しっかりとですよ!」

「・・・・」


俺は、想像通りの答えが帰って来て、大きくため息をついた。やはり、俺の思ったとおりか・・・・。


最初は恥ずかしくて、そんなことはするものかと思っていたが、体を縮めてまで神羅達を助けようと思ったので、引っ張りあげられるぐらい大したことはないだろうと自分に言い聞かせ、ロープを体に巻き、しっかりと結んだ。


「それじゃあ、持ち上げますよ?」

「・・・・大丈夫なのか?今は体が縮んだとは言え、結構重いぞ」

「大丈夫です。絶対に」


そう自信満々の顔で宣言すると、その言葉どおり、俺を苦もなく引っ張り上げた。


「・・・・お前、本当に妖怪だな」


俺が、体に巻きつけたロープを外しながら言うと、優羅はいつもの笑みを浮かべた。


「いえ、私は立派な神ですよ。ただ、身体能力が他の者よりも突出してるだけですよ」


「・・・・その突出している度合いが普通じゃないって言ってるんだ。普通じゃ考えられないぞ?」


「まぁ、色々やってますからね」

「・・・・?」

「さぁ、行きますよ、この先に行けば、彼等の様子を見ることが出来るはずです」


そう言って、優羅は歩き出す。俺は、色々疑問に思う部分もあったが、あまり聞いてはいけないことなのかもしれないと思い、黙って後をついて行った。


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