研究員に、白衣と実験薬はつき物で・・・・
「さて・・・・では、どこに行きましょうか」
「・・・・それは、お前が決めることだろ?
俺はあくまで協力者であって、お前の仲間じゃない。よって、お前が決めるんだ」
「それは酷いですね・・・・。
でもまぁ、仕方ないですね、貴方の言い分も一理ありますから。
では、出発しましょうか?」
そう言って、奴は白くて長い着物を翻して歩き出す。
そう言えば、この着物、人間界で見たことがあるような気がする・・・・。
「おい、お前の着ているその白い服の名前はなんて言うんだ・・・?」
「これは、人間界で言う『白衣』と言うものです。
白い衣と書いて、『はくい』と読みます」
「ああ・・・・・」
そいつは丁寧に教えてくれた。
なるほど、そう言えば、この白衣と言うのを着ている教師を見かけたことがある。
確か、それは理科の教師で・・・・
まぁ、細かい部類はいいとして、理科の教師が着ていたのだ。
その時、自然とわかった。なぜ、奴が鉄の棒を一瞬で溶かしたのか。
どうして内側から開けられない鍵を開けたのか。
「お前・・・・もしかして、何かの研究員とかか?
そして、さっき鉄の棒を溶かしたのは、実験薬だったりするのか?」
「・・・・まぁ、白衣を見たら、大体検討がつくでしょうね。
そうです。私は、超科学研究科特別支援員です」
「・・・・は?」
俺は、奴のセリフをちゃんと聞き取る事が出来なかった。ちょうかがく・・・・なんだ?
それ以降の言葉が思い出せない。まるで呪文のようだった。
「私は、『超科学研究科特別支援員』なのです」
「それはわかった。で、それはどんな奴のことを言うんだ?」
「『超科学研究科特別支援員』とは、まぁ、その名のとおり、
『超科学研究科』と言う科がありまして、そこから、特別に
他の科に支援に行く者のことを指します」
「でも、それならただの研究員だろ?でもお前は、ただの研究員と言うには強過ぎる。
ただの研究員とは思えないな」
俺がそう言うと、奴はため息をつきながら口を開いた。
「『特別』と言う言葉がついているでしょう?だから、特別なんです。
我々は、普通の研究はしない。物を破壊する薬を作り出す部署に所属していますから。
だから、よく戦闘に繰り出されることも多く、戦闘能力も高いと言う訳です。
なんとなくわかりましたか?」
「・・・・曖昧だが、何となくわかったのは、お前らは戦闘に特化した研究員で、
お前はこれから何かを破壊しに向かっていたんだな?
きっと支援に行く場所も、他の研究所じゃなくて、軍隊施設辺りと言うことか・・・・」
「まぁ・・・・そう言うことです。しかし、あくまで研究員です。
本当の戦いに出ることはしません。薬を売るぐらいのことしかしませんよ。
しかし、戦うことは出来る。それはあなたも見ていましたよね?
なので、襲おうとは思わないことです」
「・・・・チッ」
俺は舌打ちをすると、余裕な表情をしている奴を睨みつけた。
「そう言えば、まだ、お前の名前を聞いてなかったな。なんて言う名前なんだよ?」
「私の名前は、優羅と言います」
俺は、素直に名前を教えた奴に少し違和感を感じたが、
その名前が正しい名前とは限らない。だから、とりあえずうなずいた。
いつまでも奴と呼ぶのは面倒だ。
「族長、起きてたんですか?」
不意に後ろから話しかけられて、一気に現実の世界に引き戻される。
そうだ。今は、地獄監獄にいたあの頃とは違う。
今は、地獄監獄から脱出して、神羅と合流した後なのだ。
「ああ、まあな。昔のことを思い出していた」
「・・・・なるほどねぇ・・・・じゃ、聞かせて下さいよ、思い返してたんでしょ?
なら、もう一度説明するのは簡単なはずだぜ?」
そう言って隣に座る神羅を見て、大きく息を吐くと、さっき思い出した部分までを話した。
「なるほどな・・・・で、それからは?」
「まぁ・・・・また思い出しながらしゃべるから、お前はもう、口出しをするなよ」
俺はそれだけ言うと、再びあの時の状態を思い出すように、目を瞑った。