表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
127/591

あの時は・・・・。

目が覚めると空は白んで来ていた。けれど、まだ薄暗い状態ではあった。

多分、空の様子からして四時くらいだろう。

昨日は早かったから、目覚めるのも早かったようだ。


起き上がって大きく伸びをすると、近くで熟睡している二人を見下ろした。

俺よりも早くに寝た神羅は、まだ熟睡している。熟睡し過ぎて、死んだように動かない。


一瞬、全く動いていないように見えて近寄ってみると、

体が上下に動いている為、ちゃんと生きているとわかる。

しかしそれ以外は、全く動いていないのだ。

寝返りすら打たず、寝た時の格好のまま眠っている。


優羅はと言うと、こちらは眠りが浅いようで、何回も寝返りを打っているが、

ちゃんと眠っているようだ。


そんな二人の姿を確認してから大きく息を吐くと、その場に座り、辺りを見渡した。


あの時はとてつもなく眠かったから、場所なんて気にせずに眠ってしまったが、

今起きて冷静になって考えてみると、俺達は物凄く危険なことをしてたんだなと思う。


普通なら、テントとかに入って寝るものだが、

俺達は、テントにも入らず、その辺の草むらの上で寝袋にすら包まず、

そのまま雑魚寝をしていたのだ。

しかも、物凄く熟睡をしていたから、敵が襲って来たらイチコロだろう。

よくそんな状態で襲われなかったものだ。


眠気に勝てなかった自分を悔い、ミラクルに感謝をしたいと思う。


よほど眠かったんだと思う。眠くて思考が止まっていたとしか考えられない。

でなきゃ俺は、こんなところで眠れるはずがない。


空を見上げると、まだ暗い部分と明るい部分が見え隠れしており、

こんな時間に起きているのはなんでも屋をやっていた時以来だなと思う。


人間は、暗くなったら眠る暮らしをしているから、

自分も自然と夜行性じゃなくなって来た為、この空の色は、とても懐かしい気がした。


人間界にいると、どんな真夜中でも明るいし、うるさい。それに、空気もまずい。


しかし、今いるこの場所は、どこなのかわからないけれど、

物凄く静まり返っていて、人口の光りがなく、空気が綺麗だった。

気温もそこまで高くなく多少肌寒いぐらいなので、

たまに吹く風すらも気持ちがいい。何もかも忘れて、心が洗われるようだった。


立ち上がって何度か深呼吸をした後、目を瞑った。

今は平和だが、地獄監獄にいる時は、

もう、こんなに快い気持ちになれることはないだろうと思っていた。


まさか、再び、快い風に当たって、

自由に動くことが許されるなんて思ってもいなかったからだ。









「ここはどこだ?」


意識を取り戻して立ち上がろうとするけれど、

その途端、体全体に激痛が走って、思わずうめき声を漏らす。


何とか首を下に向けて自分の体を見下ろすと、

服が血だらけで、髪や肌にも血がこびりついていた。

それを見て、今までの出来事を思い出した。

瑛雅を逃がす為に、体の調子が悪いままたくさんの警備員相手に戦ったこと。

そして、相手の数と自身の不調が祟って、その場で力尽きたことを。


息をするだけでも体中に痛みが走って、出来るものなら呼吸もしたくないような状態だ。

きっと、応急処置もしないで放っておいたので、

沢山の血が流れ出て、貧血気味になっているのだと思う。

ここまで体が血で汚れているのは、返り血よりも、自分の出血の方が多いと思ったのだ。


薄暗い部屋で目を開いてみても、目の前がぼやけていてよく見えない。

入り口の扉が三重にみえるから、かなりの重傷なんだろう。


意識がぼんやりした中で考えることはただ一つ。

瑛雅は、無事に警備員から逃げられたのかと言うことだ。

ここまで体を張ったのに、逃げ切れなかったと言われたら、俺は悲しくなる。

何の為にここまでやったのかわからなくなる。

それが嫌だから、俺は瑛雅のことを思ってるだけだ。それ以外は何もない。

心配とかなんて、もってのほかだ。あくまでも俺だ。


自己暗示をするように自分に言い聞かせていたその時、

突然正面の扉が開き、警備員が懐中電灯を持ってやって来た。

そして、その光りを俺の顔に向ける為、そのまぶしさに、思わず片目をつぶった。


「なんだ、生きていたのか。さすが妖怪だな、もう死んだかと思っていたが・・・・

仕方ない、地獄を見ることになるな」


俺は、そいつを睨みつけて、文句を言ってやろうと思っていたが、声が出ない。

視線をそいつに向けるだけで精一杯だったのだ。


そいつは俺が動けないことをいいことに近づいて来て、

俺と同じ目線になるようにしゃみ込むと、ニヤリと笑った。


「ちなみに言うとな、お前が命をかけて救おうとした奴、捕まったぜ。

今頃死刑にでもなっているんじゃないのか?」


その言葉に自然と力が入り、

何とか足だけを動かして警備員の足を引っ掛けて転ばせた。

そして、転がっている体を思い切り蹴り飛ばし、壁を使って立ち上がると、

横たわってうめいているそいつに向かって歩いて行く。

しかし、途中で足がもつれて転んだ。


俺が起き上がるのとそいつが立ち上がるのとでは、当然奴の方が早く、

素早く立ち上がると、痛みで動けない俺のことを思い切り蹴り、散々悪態をついた後、

何をすることもなく出て行った。


俺は情けなくて、自分が心底嫌いになった。

あんな奴にやられっぱなしだなんて、認めたくない。

普段ならあいつの方が弱いと言うのに、今は俺が弱ってるからと言うのを逆手に取って、

襲って来るような奴に負けると言うことが屈辱だった。


なんとか体を引きずって部屋の奥に行くと、壁によりかかった。


今頃、魔界がどうなっているのかが気になる。

きっと、種族争いで大変なことになっているんだろう。


魔界の様子を知っていながら、何も出来ない自分が憎かった。

せめて、魔界がどんな風になっているのかだけでも知りたいと思ったが、

よく考えてみると、

それはただ自分にストレスを与えるだけだと気づいて、考えるのをやめた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ