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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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信頼の証

「・・・・ここまでみたいだな。最善は尽くして来たが、私の限界が来たようだ。

すまないな、修羅さん」


俺は、修羅の口から出た言葉が信じられなかった。おい、修羅って言ったぞ。

訳がわからなくなって修羅の方を向くと、

マントのフードを取り、俺の方を向いた。


「なっ、お前・・・・誰だ??」


俺は、修羅の顔を見て驚いた。

なぜなら、最初に見た時の姿と違ったからだ。

一番最初に出会った時は、少し長めな黒髪に何となく幼さの残った顔立ちだったのだが、

今俺が見ている修羅の顔は、短い金髪で、俺なんかより大人びた顔立ちだった。


「私は、優羅と申します。今まで騙していてすみませんでした」


そう言って優雅にお辞儀をする修羅に、俺は戸惑いを隠せなかった。

しかも、口調と声も変わってる。今までのは演技だったらしい。


「はぁ?何が起こったんだ?よくわからないんだが・・・・」


「相変わらず鈍感な奴だな。

前にも言ったろ?周りをよく確認して、相手をよく見極めろってな」


「!?」


俺は、その声を聞いた途端、電流が走った。そして、自然と答えがわかった。


それの答え合わせをするように、優羅が黒いフード付きマントを脱いだ。

その時、突然スローモーションになったような気がした。

風が吹いて、自分の髪が視界に入って目の前を遮った。

しかし、はっきりと見えた。風になびく長い金髪を。


俺は、目の前の光景が信じられなくて、思わず目を擦るけれど、

ちゃんとぼやけて長い金髪が見えた。


訳がわからずとっさに修羅の方を向くけれど、修羅は相変わらず無表情のままだ。


「俺が勘違いしてたのはバレてたんだな・・・・。さすが族長だぜ」


俺がボソッとつぶやくと、族長は振り向いて、微笑した。


「当たり前だろ?俺は、護衛のお前なんかよりも、よっぽどお前を観察しているんだ」


「ああ、そうだな・・・・。でも、まさか、優羅の方が族長だったとはな。

てっきり、修羅の方が族長だと思ってたぜ」


「話は後にしろよ、こいつらを先にやる」


そう言う族長の顔を見て、俺も、自然と微笑みが浮かんだ。

まさに、勇気百倍っ!って感じだ。


「おっしゃ、行くぜ!」


俺は、そう声を上げると、刀を鞘から抜いて警備員に突進して行った。


1分後、周りにいた警備員はみんな動かなくなり、俺達は大きく息を吐いた。


「さて、族長、ちゃんと説明してくれよな?俺、意味がわからなくて頭が死にそうだ」

「死ぬなんて言うなよ。こっちは死にそうなところを脱して来たんだ」

「貴方たち、本当に仲がいいんですね」


俺達の表情を見て、優羅はしみじみと言った。


「まぁ、そんなの当たりま・・・・」

「そんなことはない。俺は、まだお前を認めてないからな」


俺が胸を張って言おうとすると冷ややかな声で遮られた為、俺の体温が一気に下がった。

今まで興奮していた為か、一気に体が熱くなったのだが、

さっきの言葉が冷水のように降りかかり、一気に熱が下がってしまったのだ。


「・・・・」


俺が無言で族長の方を見ていると、その視線を感じてか、

族長は慌ててそっぽを向くと、一言言った。


「まぁ、今だけは認めてやる」

「・・・・だけは??」


俺はそう聞くけれど、それ以外は全く教えてくれなかった。

全く、もっと素直になれよなって思うぜ。


「で、どう言うことか説明してくれないか??」

「俺は説明したくないっ!」

「族長、何怒ってんだよ?優羅の時と、声もしゃべり方も全然違うじゃんか!」

「・・・・とりあえず優羅、お前が説明しろ。俺は寝る!」


いじけた子供のようにそれだけ言うと、その場に寝転がって目を瞑ってしまった。

それを確認すると、俺はほっと肩を撫で下ろした。その途端、族長の口が動いた。


「護衛なんだからちゃんと護れよ、俺のこと」

「あっ、ああ!」


族長はそれだけ言うと、再び目を瞑った。

俺は数十秒間固まっていたが、ゆっくりと族長に近付いていき、顔を近づける。

寝息を確認すると、そのまま後ろに倒れ込んで、大きくため息をついた。


この人は油断も隙もない。

ホッと気を抜いた瞬間に話しかけて来たりするから、物凄く驚くのだ。


「・・・・貴方のことをよほど信頼しているようですね」


「・・・・なぁ、その、『貴方』って言い方やめないか?

どうも女のような口調で、変に聞こえる」


「悪いね、これは、私の昔からの癖なんだ」


そう言って苦笑する優羅の表情は、なんと言うか・・・・大人の余裕と言うような、

そんな表情が浮かんでいた。


「で、なんで、族長が俺を信頼してるって思うんだよ、理由があるんだろ?」


「修羅さん・・・・私の前だったら一睡もしなかった。

二週間近く、一睡もしなかったんだ。

だから、相当眠かっただろうに、私の前では一睡もしなかったんだ。

それなのに、貴方に会った途端、眠気に耐えかねなくなったのか、眠った。

それは、貴方のことを修羅さんは信頼してると言うことに繋がるんじゃないですか?」


「・・・・」


そう言われて俺は、深く息を吐いた。なんとも言えない嬉しさがあった。

言葉ではああ言っているものの、

本当は俺のことを信頼しててくれたのかと思うと、嬉しくなったのだ。


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