モテ談議
「初恋の相手!?」
「ああ」
「あり得ない、あんな可愛い子が・・・・こんな亜修羅に惚れるなんて・・・・」
愕然と言った様子でフラフラと座りこむ凛。絶対芝居だなと思って話しかける。
「何で、俺があいつに惚れられて、そんなに気落ちする?」
すると、やはり芝居だったようで、電光石火の如く立ち上がると、俺の短所を続々と話し出した。
「だって、冷徹だし、女の子に冷たいし、僕にも冷たいし、ハムスターにも冷たいし、ナマケモノにも冷たいし、それに懸賞金が賭けられてるし・・・・」
そこでビシッと指差して来る。
「それに、無愛想だしね。女の子には、全くモテないと思ってたんだけどな・・・・」
凛は、長々と、ゆうに十分くらいは俺の短所を言いまくった。そんな、一ヶ月も一緒にいないのに、どこで短所を見つけたのか。俺が、短所だらけなのか?もしくは、俺の短所しか見ていなかったのか。
「じゃあ、長所はどこだ?」
「・・・・あ・・・・う」
さっきまでの機関銃並の勢いは消えて、線香花火のようにおとなしくなった。どうやら、「俺の短所しか見ていなかった」が正解だったようだ。
「おい、どうしてそこで止まる?」
「だって・・・・長所なんか・・・・。あっ、金髪!!」
俺は、凛を殴った。なぜ金髪が長所なんだ。とことん人の短所しかみない奴だ。まぁ、凛の長所を言えと言われても、俺も言えないだろう。
「あっ、そうそう。文化祭来ない?」
「なぜ、俺の短所からその話に移った?」
「何か忘れてるな・・・・と思ってて。亜修羅に殴られたらスッポンと思い出してね」
「文化祭・・・・」
「そう。面白いよ?聞いた事ない?」
「俺は、そこまでバカじゃない!」
文化祭。前に聞いたことがある。その日だけは授業は一切無く、ただ遊びまくる日。そう聞いていた。
「明日は、遊びまくる日なのか?」
「違う、違う。学校が学校じゃなくなるって日かな?詳しいことは明日来たらわかるよ」
「・・・・面白いか?」
「当然♪」
「わかった。明日、文化祭に行こう」
「やった♪」
俺は、凛の喜びようを見て、何かよからぬことを感じたが、時すでに遅し。今から断る訳にも行かず、仕方なく行くことにした。
「でもな・・・・。まぁ、いいか。僕だって・・・・うん」
「何だよ、その、一人で納得って言うのは」
「えっ、いや。亜修羅もモテるんだねって話してたんだ」
「まだその話しするのか?」
「ふふん。まさか、自分に自信がないんじゃないの?」
「そう言うお前はどうなんだよ?」
「僕?僕はね、はっきり言って、自信あるよ。モテるしね」
「嘘つくな、お前のどこがいいんだ?バカでボケでヘラヘラして、その上人をいびってる奴じゃないか」
俺の言葉に、凛は顔をしかめた。まるで心外だと言いたげだ。本当に思ってるのだろうが。
「心外だな。もっと言い方を優しくするんだよ。ボケのところを、天然とかさ。ヘラヘラってところを面白いって。そうやって口が悪いからモテないんだよ」
「お前の中の俺は全てがモテないんだろう?わかってる。それくらい」
「そんなことないよ。いいところもあると思ってる」
「じゃあ、どこだ?三秒以内に答えろ」
「・・・・そう言うところがいけないんだよ」
「おい、今、話を逸らしたな!そんなことをモテる奴がやっていいのか?」
「今は別!これも臨機応変ってやつだもん」
凛は、上手く俺の攻撃を避けた。こいつ、口だけは達者だからな。頭は空っぽだけど。
「勉強が出来なくたってモテるんだよ。空っぽとか言わないでよ」
「ふん、勉強できない奴は、バカだって言われるのが落ちだ」
「でも、僕は教えてくれるよ?」
「・・・・凛は凛だ!」
「僕さ、人間界に来る前、随分と大変だったから、人間界ではモテないように普通に行こうと思ってたんだけど、やっぱり無理だったよ・・・・」
「自慢するな!」
俺が殴ろうとすると、凛はひょいと避けた。しかしその手は考えてあって、足で凛の足を引っ掛けた。
ドシンと凛がずっこける。ざまぁ見ろ。人のことをいびるからそんな目に会うんだ。
「いたたた。でもさ、亜修羅だって、何もしゃべらないで立ってるだけならかっこいいと思うんだけどな」
「お前は、普通に立っててもかっこがつかないがな」
「いやいや、そんなことはありませんよ。でもさ、やっぱり、男の子も女の子も、こう言う話が好きだよね?亜修羅が話にノッて来るなんて意外だったよ。クールな人だから、ノッて来ないと思ってたのに」
「うるさい、これとクールは関係ない!」
「まぁ、そう言う口調を直せばいいと思うんだけどな」
「凛に俺の口調に文句を言う権利はない!」
それからしばらく間、その話が続いたのだった。