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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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仲間だけど仲間じゃない

「ふぅ~~~ったく、俺達、今どこにいんだよ?」

「悪いな。さっき警備員に捕まった時に地図を奪われてな、現在地がわからないんだ」

「それに、道を覚えられるほど単純な道を歩いていないからな。ぐねぐねと・・・・」

「・・・・まだ、落ち込んでいるのか?」


そう琉貴に問われ、俺は首を振った。こいつ、中々鋭い奴だ。

俺が元気ぶっているのを見透かしている。

だから、最初は嘘をつこうと思ったが、どうせそれも見抜かれるとわかって、

俺は素直に言った。


「・・・・まあな。やっぱり・・・・ん?」


俺は、自分の懐を探って首をかしげた。


「どうした?」

「いや・・・・族長の形見が・・・・」

「髪がなくなったのか?」


「ああ・・・・。

俺、ちょっと探して来る。お前ら、ここで少し待ってろ」


「待て、今一人で行動するのは危険だ」


そう灸縁に止められた時、俺は、不意に悪寒が走った。

灸縁に止められたとかは関係ない。ただ、嫌な予感がしたのだ。

だから、自然と震えが走り、灸縁達の方を向いた。


「どうした?何か感じたのか?」

「お前ら、俺のことはいいから、早くここから出て、瘴気の森へ行け!」

「はぁ?突然何を言い出すんだ?」


「嫌な予感がするんだ。突然、あの森のイメージが湧いてな。

だから、俺のことはいいから、お前らだけで外に出て行け」


「そんなこと出来る訳ないだろ?」


「じゃあ、せめて、俺の変わりにロックを解除してみんなを解放してくれ。

俺が囮になって逃げ回る」


「状況がよく飲み込めないのだが・・・・」

「とにかく、俺も、ロックを解除するから、頼んだぞっ!」


俺は、そのまま走り出した。

後ろから琉貴と灸縁が声を上げているけれど、俺はそれを無視して走りだすと、

そのまま誰かにぶつかった。


「うわぁっ!?」

「っ・・・・」


互いに弾き飛ばされ、受身を取ると相手を睨む。

けれど、お互い敵じゃないとわかると、ほっと息をついた。


「なんだお前、警備員じゃないんだな。よかったぜ・・・・。

しかし、敵って場合もあるよな・・・・顔、見せろよ」


俺にそう言われて、最初は躊躇ったようだが、無言でフードを取った。


「うーん、一応は仲間ってことなのか?」

「私は敵ではない。裏切り者もいるようだが、私は違う」


そいつは、何だか変な奴だった。黒い髪なのだが、その長さが微妙なのだ。

見た目の割りに、髪の長さが不自然なほど短いのだ。

ギリギリ肩に乗るくらいの長さで、とても不思議な気がした。


しかし、直ぐにその疑問は消えた。

俺は、妖怪を基準として考えていたのだが、こいつが妖怪なんて言う確証はないのだ。

だから、髪が短くてもおかしくはないんだ。


俺達妖怪は、通常髪を切ると言うことをしない。

だから、長く生きれば生きるほど、髪が長いのだ。

当然、地面に着く時だってあるが、その場合は結ぶか何かをして対処している。

人間からしてみれば、そんなことしなくても髪を切ればいいじゃないかと思うだろうが、

そう言う考え自体がないのだ。


奴の場合は、年齢は13、14ぐらいのわりに、

髪が異様に短かったからおかしいと感じたんだ。


そう一人で色々と考え込んでいると、そいつは不思議そうな顔で俺の方を見てから、

地図らしきものを見ている。


「お前は、何の為にここに来たんだ?」

「まぁ・・・・なんと言うかな・・・・。族長を助けに来た・・・・か?」

「・・・・族長?お前、妖怪なのか?」


「はぁ?逆にお前、それを知らなかったのか?

俺達の仲間じゃないのか?」


「・・・・俺は、ここに閉じ込められている者じゃない。故意に侵入した者だ。

だから、お前の正体を知らない」


「そうなのか・・・・。じゃあ、そう言うことだ。俺は、族長を守る護衛。

それなのに・・・・族長を殺しちまった・・・・」


自然と目の前が霞むのがわかった。慌てて後ろを向いて袖で涙を拭う。


「泣くほど大切な奴だったのか?」


「なっ、泣いてねえ!それに・・・・そこまで大切とかじゃない!

ただ・・・・情けなくてよ、護れと言われた人も護れねぇで。それに・・・・」


そこで言葉が詰まる。全く、本当に情けねぇ。


「まぁ、そいつは幸せだろうな。

死んだとしても、そうやって泣いてくれる奴がいるなら、そいつは幸せな奴だ」


「・・・・だからっ、泣いてねぇって!」


「とにかく、お前が泣いてるか泣いてないかはどうでもいい。

しかし、惜しいことをしたな。そいつに会ってみたかった」


「・・・もう無理だぜ。死んじまったんだからよ。

それに、泣いてねぇからな!勘違いすんなよ!目にゴミが入っただけだからな!」


「のわりには、鼻水まで出ているようだが・・・?」


そう薄ら笑いを浮かべているそいつはとても憎たらしく思えるが、

あまり言い返せなかった。何せ、事実だからな。


「とにかく、もうベソベソ泣くな。ガキじゃないんだから」

「なっ・・・・ガキって言うなよ!」


「大声を出すな。俺の言う通りにしておけば、ここから出られる。

それで、仲間のところに向かえばいいだろ?」


「牢屋に閉じ込められている奴らを助けてもいいか?それに、形見も・・・・」

「そんなことをしている暇はない!」

「・・・・でも、大切な物なんだ!」


「なら、勝手にしろ。俺は、お前に手を貸すことをしない。

友情なんちゃら言ってここを出られるほど、甘くはないんだ」


そう言う奴の表情がなんとも言えなくて、俺は、何も言い返せなかった。


「そうか・・・・なら、またな」


俺は、それだけつぶやくとそいつに背を向けた。


「待て、これを持っていけ。きっと役に立つはずだ」


そう言って投げ渡されたのは、

琉貴が見ていた地図よりもはるかに細々とした色んなことが書かれたものだった。


俺はそれを見て、あいつは、そんなに悪い奴でもないのかもしれないと思った。


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