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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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その心理は一体・・・?

「ぬぁっ、足がない!?」

「なっ、何がどうなってんだ?!」

「・・・・私のこと、覚えてないの?」

「そんなことある訳ないだろ?でも・・・・」


優河君はとても嬉しそうなのだけれど、その中にも戸惑いの色を含んでいる。

足を見ては、その女の人の顔を見ている。


「この森は、結構霊力が強いの。だから、霊とかが降り易くてね。

ここにあなたがいるから降りて来たの」


「そっ、そうなのか!」


僕はなぜか、優河君の反応にしっくり来なかった。


と言うのも、優河君の表情が引きつっているように感じる。

なんでそうなのかわからないけれど、笑顔を浮かべているものの、

その笑顔が自然なものとは思えないんだ。


「逢いたかったよ、優河!」


その女の人は優河君に飛びついていくけれど、霊体だから、

もちろん優河君が受け止められる訳もなく、スルッと通り抜けてしまった。


それを感じてか、優河君は蒼い顔をしてブルッと身震いをしていた。

やっぱりその反応を見て、僕は不思議な気持ちになる。


普通、好きな人が幽霊の姿になって現れても、ここまで怯えたりしないと思うんだ。


僕は、優河君には意地を張って言ったけど、

ほんとは、人を好きになると言うことはあったけど、

愛してるって言えるほどの人がいる訳でもない。

でも、なんとなくわかる。優河さんは、もうこの女の人を好きじゃないってこと。


「あらら・・・・そっか、私、死んじゃってるんだもんね。

でも、優河に会えて嬉しいよっ!」


「あっ、ああ・・・・。俺も嬉しいぞ」

「どうしたの?顔色が優れないけど・・・・」

「あっ、ああ、少し気分が悪くてな」


そう言う優河さんの表情は明らかに優れていなかった。

まるで、もう直ぐ消えてしまうような気がした。


そんな僕の不安は的中しないといいなって思う。とか、絶対にしないで欲しい。

でも、不安をかきたてられるほど、顔色が悪かった。


「本当に大丈夫?」

「あっ、ああ・・・・」


女の人が近付いた途端、優河さんは怯えた表情をして一歩下がった。


その光景を見て、女の人の表情が一気に変わった。

今までは満面の笑みを浮かべていたのだけれど、一瞬で無表情に変わって、

呆然とした目で優河君を見つめていた。


その表情がとても怖く思えて、僕は後ずさる。

睨みつけてる訳でもないのだけれど、何も表情を感じさせないその目は怖かった。


「なんで・・・・なんで、怯えた目で私を見るの?」

「違う、怯えてなんかない!・・・・ただ」

「ただ・・・・何?どうしたって言うの?」

「くっ・・・・」


優河君はその女の人から顔を背けると、僕の腕を摑んで森の出口へと走り出した。


「なっ、何!?どうなってるの?」

「今は何も言わせるな!俺は・・・・」

「えっ、なっ、何がなんだか・・・・」


僕は、訳がわからないまま優河さんに腕を引っ張られた。









「大分歩きましたね、もう少しで森の外に出られる頃だと思いますよ?」

「そうですか・・・・。これで、優河さんを救えるんでしょうか?」

「えっ、そう言われても・・・・」

「さぁ、見えて来たぞ。ここを出ればこの森から出られっ・・・・」


急に幸明が言葉を切った為、僕は不思議な気がしたけれど、

直ぐに、自分も言葉を切った理由がわかった。


外に出ようと一歩を踏み出した途端、僕は何かに顔面をぶつけ、星がちらついた。

それほど思い切り頭を打ったのだ。


しばらくの間フラフラしていたけれど、なんとか頭を振って意識を取り戻すと、

朱音さんに注意を促そうとした。

けれど、時既に遅しで、朱音さんも僕の隣で額を抑えてうずくまっていた。


「だっ、大丈夫ですか?」

「ええ・・・・。でも、結構痛くて・・・・」

「ですよね・・・・僕も、星がチラチラ飛びましたからね」

「それにしても・・・・これは一体なんなんだ?」


幸明は、僕らの話を無視しながらボソボソ言って、

透明のバリアのようなものを叩いている。


それは、バリアと言うよりもガラスのようなもので、とても固かった。

せめて、バリアのように柔らかくて、ボンッと跳ね返される程度ならいいのに・・・・。


僕はそんなことを思いながら、恨めしげにそのバリアのようなものを睨みつけていると、

矛盾している部分に気づいた。


・ ・・・どうして、このバリアのようなものがあるんだろうか?

入る時は、こんなものにぶつかることはなかったのに・・・・。


「なんでこんなものが突然出現したんでしょうか??」


「もしかしたら、この森は

『入ることを拒むことはないけれど、出て行こうとする者を拒む』

ように出来ているんじゃないか?」


「えっ、そんなこと・・・・なんでですか?」

「私に聞かれても困る」

「あっ!?」


僕らが言い合いをしていると、急に朱音さんが声を上げて立ち上がった為、

僕らは口論をやめ、即座に朱音さんの方を向く。


「どうかしたんですか?」

「優河さんが危ない・・・・」

「はい、それは知ってますけど・・・・」


「場所は・・・・ここ?そして、襲ってるのは・・・・誰?」

「何か見えたんですか!?」


「わからない・・・・なにが彼を襲ってるのかわからない・・・・

でも、なんだか、物凄く嫌な予感がします」


そう言った朱音さんの顔は、元々白かったのだけれど、

血の気が引いて、余計白くなってしまっていた。

これは、何か大変な事が起きてると僕は感じた。


「とりあえず、引き返してみましょうか?」

「はい・・・・怖いですけれど、優河さんを救いたいです」


僕は、状況がよく飲み込めてないけれど、朱音さんの後を追って森の奥へと走り出した。


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