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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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思い出の為に

「さて、優河さん、朱音ちゃんはいなくなったから、瘴気を出すのをやめようね!」

【私をバカにしているのか?】


「とか、優河さん、殺されちゃうんだよ!

朱音ちゃんの能力は未来が見えるんだけど、その未来で優河さんは殺されちゃうって!」


【ふんっ、どうせもうじき死ぬ。それなら、この森から出ることはしない】

「なっ、なんで?何か思い出か何かがあるの?」


【お前に言う必要はない】

「・・・・ほぅほぅ、そう言うことですか・・・・。よしっ、推理完了!」


僕は、笑みを浮かべながら優河さんを見る。


【何がわかったと言うのだ・・・・?】


「もしかしてさ、この森に何か思い出があるんだね。

そして、その思い出が忘れられなくて、死ぬ場所はここと決めた」


【・・・・】

「もしかして・・・・恋人かな?しかも、朱音ちゃんそっくりの女性だったり・・・・」

【・・・・】


「僕の推理をざっと説明すると、ここで彼女は死んじゃったんだね。

それからずっと彼女のことが忘れられなくて、優河さんはこの森に住み続けていた。

そんな時、彼女にそっくりな朱音さんが追われている姿を見かけて、

優河さんは、自分の身を削ってでも朱音さんを守りたいと思って、

自分の身を削って瘴気を出し続けて来た・・・・」


【・・・・なぜ、そこまでわかったのだ?】


「だって、大体の目測でわかるよね、

冷たい人が優しくするってことは、何か理由があるはずだからね」


【あまり説明になっていないような気がするが・・・】


「とにかく、そんな面倒なことは言わないの!と言うことで、出ましょう!この森からね!」


【そこまでわかっているのに、なぜこの森から出そうとするのだ?】

「だって、死なれちゃったら困るからね。それが嫌なら、せめて元の姿に戻ろうよ~!」


最初は渋って中々元の姿に戻ろうとしなかったけれど、

僕の長い説得の末に、優河さんは神の姿に戻った。


「これで満足か?」

「うんうん、案外ちっさいんだね」


僕が笑顔でそう言うと、優河さんは摑みかかろうとしたけれど、それをスルリと避ける。


「それに、僕と同年代っぽいね!」

「黙れ!これでも17だ!」

「あれれ?僕より年上なのに、僕より小さいかも・・・・」


「そんなことはない。お前なんかと違って、俺はそんなにちっさくない!」

「しかも、性格変わってる~♪」


僕がケラケラ笑っていると、優河君(同年代だからね、君って言う方がいいもん)

は怒り出して攻撃を加えてくるけど、それをスルスルとかわしながら、

徐々に森の外へと誘導して行く。


そう言えば、最初は紫色をしていた森だけど、優河君が元の姿に戻ったおかげか、

綺麗な緑色に戻っている。それにもう、苦しくもない。


「さて、ここまで来たらもういいだろ?俺はここで死ぬって決めたんだ。

彼女の死んだこの地で死ぬことが、俺の唯一の願いなんだ」


「だから、瘴気を出すようなまねもしてたんだね?

守る方法としてバリアがあるのに、なぜ瘴気を出してたのかと思ってたんだけど、

少しでも早く彼女の元に行きたいから、自らの体を蝕む行動を起こした。

でもね、そんなことしても、彼女は喜ばないと思うよ?」


「なぜ、お前にそれがわかるんだ?」

「いやいや、それが常識よ?普通、喜ばないもん!」


「そんなことはない。俺達は、どちらか一人が死んだら直ぐに後を追うと約束したんだ。

それなのに、俺は彼女にそっくりのあの女を見て、死にたくないと思った。

あの女を守ってくれる誰かが見つかるまで、自分が守らなくちゃいけないと思ったんだ」


「別に、それでもいいんじゃないの?とか、むしろそう思わない方がおかしいと思うよ。

生物って言うのはね、生きたいと思うのが自然の摂理だしね。

逆に死にたいと思うのは・・・・ねえ?」


僕の言葉に優河君はため息をついた。


「それは違う。俺達は、死んでからもお互いを愛し合おうと誓った。

だから、あの女の為に生きるなんて、許されないことだ。

彼女との約束を破ることになる・・・・!」


「・・・・うーん、一度死んじゃった人を愛し続けるって難しいことだと思うよ?

とか、いつまでも死んだ人を愛すのは、残された人が苦しいと思う。

優河君の彼女さんも、自分の愛しい人が苦しむのは見たくないと思うよ?」


「いや、そんなことは苦悩にすらならない。

お前はおこちゃまだから、愛と言うのを知らないだけだ」


明らかに馬鹿にしたような態度でため息をつかれた為、僕はムカッとして言い返す。


「そんなことないもん!僕だって、人を好きになったことあるもん!」

「そうなのか?お前みたいな幼稚な奴がか?」


「ばっ、馬鹿にするな!僕だってね、恋ぐらいするもん!

それにね、馬鹿にしないでよ!」


「それは悪かったな。お前みたいなガキが恋をするとは思えなくてな」


そう言って声を殺して笑う優河君のことが心底嫌いになった僕は、

優河君のことを思い切り睨みつけてやった。


だけど、朱音ちゃんを守った人だし、朱音ちゃんと約束したからね、助けるって。

だから、何とか怒りを抑える。


「全くさ、とんだカップルだね。とかさ、僕が呼ぼうか?その子」


「・・・・はぁ?お前は何言ってんだよ?彼女は死んだんだぞ?

それをどうやって呼ぶのか・・・・」


僕は、冥界から彼女さんを連れて来ようと大きく息を吸ったけれど、

動作の途中でを止められた。


「それには及ばないわ」


急にそう声をかけられて、思わずビクッとしたけれど、

直ぐに振り返って、思わず二、三歩退いた。


だって、あしが・・・・足がないんだもん!


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