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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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現実世界への第一歩

「実はね、私、神と妖怪の子供なんだよね・・・・」


僕は、その言葉を聞いて黙り込んでしまった。

それって・・・・なんか、いけないような雰囲気がするぞ。まずい雰囲気だぞ、これ。


「そっ、それって、はっ、ハーフ?」

「・・・・?」


僕の言葉に、ハーフの意味を知らない朱音ちゃんは首を傾げたけれど、

僕がハーフの説明をすると、「そんなもんかな?」と言って、少し寂しそうに笑った。


「妖怪とは、神にとっては単なる娯楽の為に生きている存在。

それなのに、私のお父さんは、妖怪の女性に一目ぼれをしてしまった。

お母さんもそうみたいでね。

でも、神と妖怪の恋愛なんて許されるはずもなく、二人はこっそりと会っていた。

しかし、それもバレて、私のお父さんは地獄監獄の奥底に閉じ込められて、

お母さんは殺されてしまった」


「えっ、ちょっと待って、じゃあ、朱音ちゃんはどうしているの?」

「ああっ、そこの説明省いちゃった!」


僕が聞くと、朱音ちゃんはクスクスと笑い出しだ。


こんなに明るい子が、まさか、神と妖怪のハーフの子だとはとても思えない。

でも、やっぱり雰囲気が不思議な感じがするから、

言っていることは嘘じゃないってわかった。


「私のお母さんは、自分の命がもう長くないとわかってたから、

私の命を、現在妊娠している女性の赤ちゃんに宿らせたんだよね。

そして、私は生まれた」


「ほぇ~~~!そんなこと出来るんだ!」


僕は、自分も同じ妖怪なのだけれど、そんなことが出来ると知って、物凄く驚いた。

なんと言うミラクルだと思ったんだ。


「だけど、その夫婦は妖怪の夫婦だから、妖怪の子供しか生まれないはずなのに、

妖怪よりも運動神経が悪かったり異常に頭がいい私が生まれた。

だから、二人は私のことを疑った。そして、調べることにした。

すると、そこで私のお母さんの情報が入って、

その夫婦は、私が自分達の子供じゃないと確信して、牢屋に連れて行こうとしたんだ」


「えぇっ、酷い・・・・。

でもさ、お母さんお父さんは死んじゃったのに、どうして知ってるの?」


「お母さんの記憶をそのまま受け継いだからね。

でも、必要以上のことはわからなくて、お母さんお父さんの顔はわからないの。

ただ、私が生まれる過程だけしかわからなくてね」


「そっか・・・・それで?」


「そして、私は魔界から逃げ出し、神域へと逃げたの。

でも、神域でも私の存在を認められることはなく、

神達の間では、私は汚らわしい者として、早く抹殺したい対象だった。

神域を司る神にバレたらとんでもないことになる。

だから、指名手配状態になって、私はどこにも逃げ場がなくなった。

お腹も空くし喉も渇くしで、

死にそうになってたところを助けてもらったんだよね、優河さんに」


「ほうほう、で、その人って誰?」


「今は樹になって、瘴気を出してるんだ。

私をかくまう為に、いつも死にそうになりながら、

人を森に寄せ付けないように、瘴気を出してるんだよね」


その言葉を聞いて、僕は大きくうなずいた。

じゃあ、あの樹は、この子を守る為に瘴気を・・・・。


「瘴気を出すと言うのは、体に負担がかかる上に、自分もその瘴気を吸ってしまって、

どんどん体が弱って来てるんです。

そんなことを、かれこれ50年も続けてるんです・・・・」


「50年!?」


僕は、あまりにも長い月日に体がのけぞった。

まさか、50年もの間、自分の身を犠牲にこの子を守っていたのかと思うと、

尊敬に値する人だなって思って、大きく息を吐いた。


「はい。でも、もうやめてもらいたいんです。

このままじゃ、優河さんが殺されかねない・・・・。だったら私が死んでもいいです。

凛ちゃんも、私と話してたら、勘違いされて殺されちゃうよ?」


「ああっ、大丈夫大丈夫。僕は強いよ?

それに、僕は君を見捨てない。だから、行こうか!魔界へ」


「えっ、あっ・・・・へ?」


「僕らの住む世界・・・・魔界はね、そんな小さなことは気にしない。

それにもし、文句を言う奴がいたら・・・・ね?」


僕がそう言った後、朱音ちゃんの体が震えた気がして、

僕は、慌てて「ね?」って笑顔を向けた。


「でも・・・・」


「気にしないで♪僕は、君の味方だよ。見捨てたりなんかしない。

だからさ、一緒に優河さんを止めよう?

自分の発した瘴気と言えど、自分の身を侵すことは事実なんだからさ。

命の恩人を、このまま殺す訳には行かないよね?」


僕がそう言って微笑みかけると、その子も微笑んだけれど、

直ぐにハッとした表情になって、今度はとても不安そうな顔をして僕の方を見た。


「どうしよう・・・・優河さんが、殺されちゃう・・・・」

「へっ?いっ、一体どうしたの?」


「私ね、時々未来が見える時があるの。

それは、神としての能力の一つだと思うんだけど、

それで、今見えた未来は、優河さんが・・・・」


「うわぁっ、そりゃ大変!急いで外に出ないと!いこ?」

「えっ、どこへ?」

「外の世界だよ!幻の世界じゃなく、本物の現実世界へ!」


「えっ、でも私、怖い・・・・」


「大丈夫!こっちには、神域の神様・・・・

いや、宇宙の神様がついてるから、大丈夫だよ!」


「えっ・・・・?」


そこまで言っても戸惑っている朱音ちゃんの手を取ると、

僕は、幻の世界から脱出する為に走り出した。


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