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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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裏切りは直ぐそこにある

「ちっ、まずいな・・・・」

「やはり、もう少し作戦を練った方がよかったのだろうか?」


「いや、そんなことをしている暇はない。

次で、この20の監視カメラの地獄から開放される。

そしたら、直ぐに地下へ行くんだ」


「しかし、このままでは体が持たぬ」

「ったく、運動不足の奴はこれだから困るんだ」

「馬鹿にするでない!それに、そなただって、息切れをしているではないか!」


俺達は今、20個目の監視カメラを通り抜ける為に待機しているのだが・・・・。


ここで、今までのことを説明しよう。


20分で20個の監視カメラを突破すると言うことは、1個を1分で通過する考えだ。

しかし、監視カメラが連なって設置されている訳もなく、

次の監視カメラに向かうまでの時間も込んで1分だ。


それでもかなりキツい状況なのだが、その予定よりも、

10分も早く一番最初に破壊したカメラの修復作業が終わってしまった為、

俺達はなんとかそれを潜り抜けて来たのだ。


しかし、警戒モードに入ると、警備室に直通で知らせが入ることになる。

だから現在は、防犯カメラと警備員から逃げながら、目的地へ向かっているのだ。


「とりあえず、どうする?

一応、目の前に最後の防犯カメラがあり、その奥は地下への入り口があるが・・・・」


「とりあえず、行くか?」


俺は、無言でうなずくと、

トランシーバーで20個目のカメラを破壊する係の奴に話しかける。が、返事がない。

いや、繋がらないと言った方が妥当だろう。


「おい、どうした?」


俺が問いかけるものの、なんの音も聞こえなくなって、舌打ちをする。


「どうしたのだ?」

「なんか、トランシーバーが通じなくなった。どうしたんだ?」

「・・・・まさか、回線が切れたのか?」

「は?回線?」


「多分、騙されたんだな。仕方ない。

でもまぁ、警備員の方も通信機能は使えないだろう。だから、お互い様と言う訳だ」


「・・・・しかしな、騙すって、誰が・・・・?」


「もちろん、俺達の仲間として動いていた奴の一人だろうな。

しかも、警備室にいる奴だ」


「・・・・」


俺は、無言でうつむいた。

まぁ、そう言うこともあるだろうと思った。裏切りなんて、よくあることだしな。


「そう気落ちするでない。どこの世界でも裏切りはあるものだ」

「・・・・そう言う訳じゃない。ただ、許せないんだ」


そう、言葉で言っているのがわかる。

しかし、なぜそう言っているのかはわからない。ただ、口から出たのだ。


「それは・・・・?」


灸縁が聞いた途端、俺達のいる通路から走って来る音が聞こえて、

俺達は自然と体が強張って、互いに顔を見合わせる。


しかし、逃げ場がない。

俺達のいる通路はT字のようになっており、

足音が聞こえて来るのは、T字路の上の横長通路だ。

そして、もう一つの通路は監視カメラの設置されている通路で、

まさに、八方塞と言う訳だ。


「さて、どうするか?」

「・・・・仕方ない。バレたらここで終わりだ」

「逃げないのか?」


「ああ、逃げないな。こっちに向かって来る奴が敵でも逃げないぞ」

「なぜ?」


「賭けてみようと思うからな。いつも、俺は賭け事のように毎日を生きて来た。

だからここで、大きな賭けに出ようと思う。

もし、俺の生き方が間違っていたら、ここから出て来る奴は警備員だ。

もし、俺の生き方が間違っていなかったら、仲間に違いない」


「しかし、俺達の人数は50人。それなのに、向こうは何百人といる。

向こうの可能性の方が高いではないか?」


「・・・・だから賭けるんじゃねぇか。

こうでもしないと、俺の生き方が正しいのか正しくないのか、わからないからよ」


俺の言葉に灸縁は黙り込み、ソワソワしていた様子がなくなり、その場に留まる。


「逃げないのか?」


「私も、そなたの意見に賛成しよう。

一度、己の生き方が間違っているのかどうかを確かめてみたかったのだ。

いい機会をくれてありがとう」


そう言われて、思わず微笑んでしまう。

前にも、これと似たような言葉を言われたような気がした。


〔自分の生き方が間違っているのかいないのかをジャッジしてくれる機会なんて、

滅多にないことだ。そんな機会をくれたお前に感謝する〕


自然と、その時の様子と風景が現れて、大きくため息をつく。


「来るぞ」

「ああ、ついにジャッジの時が来たぜ」


バタバタと言う足音が近づいて来て、目の前に現れた。

俺達はとっさに身構えたが、出て来たのは俺達の仲間だった。


「・・・・ふぅ」


互いに顔を見合わせて、大きくため息を吐いた。


やっぱり、俺の生き方は間違っていないようだ。

今まで何回も困難がぶつかって来たが、いざって時には、やはり助かる方向に向かう。


それがわかっていたからとかじゃなく、毎回、緊張はするものだ。

ただ、そうでもしないとわからないだろ?自分の生き方が正しいかなんて・・・・。


「どうした?」


俺がそう聞くと、走って来た奴は肩で息を切らしながら、

なんとかと言った様子で話しかけて来た。


「俺達の仲間が寝返りやがった!

警備員に釈放してやると言われて、それにのっかった奴等は、俺を除いて45名。

残りの奴等だけが俺達の仲間だ!」


「・・・・そう言うことか」

「どうすんだよ?」

「私に聞かないで欲しいのだが・・・・」


「と言うことは、ここで立ち止まっていても無駄だってことだな。

監視カメラを破壊をする奴はいない。と言うことで、強行突破と言うことか」


俺がそうすんなりと言うと、

灸縁と、俺達に大変な事態を知らせて来た奴は目を見開いたが、

俺は、この意見を変えるつもりはなかった。


「本当にやるつもりか?」


「当たり前だろうよ。だって、そうでもしなきゃ、族長を助けられねぇ。

だったら、やるしかないぜ」


「・・・・了解した。では、早速行こうではないか!」

「おう!」


灸縁の言葉に相槌を打つと、監視カメラのことなど気にせず、

地下への扉を目指して突進した。


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