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想造世界  作者: 玲音
第一章 人間界へ
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変態教師

「なんで懸賞金のことを知っても、俺を襲わないんだ?」

「それは、そんなつもりはないから。ただそれだけのこと。最初は、やっぱり、懸賞金目当てに観察してたんだけど、何だか惹かれちゃったみたいで」

「惹かれたなんて気持ち悪い言い方するのはやめろ!俺が引くぞ」

「じゃあ、好きって言えばいいの?」

「それはもっとおかしい!」


恥ずかしい気持ちが一気にこみ上げて来る。今までそんなことを誰からも言われたことがないから・・・・。


「ああ、亜修羅。今、なにか変なこと考えたでしょ?顔が真っ赤だよ、いやらしいなぁ」

「ふざけるな!お前が変なことを言ったからだろう」

「変なことって・・・・。友達のこと好き?とか、嫌い?とかって表現あるじゃん」

「だからってな、そんなこと言われたこともない奴に・・・・」

「ええぇ!!?ないの?言われたことないの?可哀想に・・・・」


凛の哀れみと半ばバカにしたような顔に、さっきまでの恥ずかしさは消え、逆に怒りが湧いて出た。


「うるさい、お前みたいな奴にわかるか!両親もいて幸せな奴にはな!」

「ああ、そうだ。その話、全くの嘘」

「う・・・・嘘?」

「うん、家を全焼しちゃったのは本当だけど、仮の両親だっていないし、本当の両親も行方不明なんだよ」

「そうなのか」

「怒った?」

「いや、損した」

「?」


俺の言葉の意味がわからない凛は、はてなマークを顔中に浮かべたけど、俺は答えを言わずにいた。言ったら、どうせまたからかわれるに決まっている。










学校では、相変わらず変人扱いを受けてはいるが、毎回屋上に退散するので、あまり気にならなくなった。


本当は、俺が逃げる必要なんてない。ただ、懸賞金がかけられている身ともなると、周りの生徒と親しくしてはならない。関係ないのに狙われたら、助ける俺が大変だ。


しかし、どうしてもついて来る奴がいる。


「何でいつもここにいるんだ。俺に学校に来るなって言いたいのか?」

「違うよ、私のことは気にしないで」


そう。屋上に避難すると、毎回女がいる。屋上にいる時は静かなのだが、後ろからずっと見て来るから、眠るどころではない。最近は大分睡眠が取れるようになったものの、前だったら、俺は怒っただろう。


「気にするなって、気にするだろう普通。そんなにジッと見られたら」

「ごっ、ごめん」


俺は、しょうがなしに場所を移動した。ここは、日当たりも悪いし風通しも悪い。だから、あまり好きではない。


そう思いながらも眠ってしまった。自分でも無神経だと思うが・・・・。

眠っている間を襲われることはなかったのが、不幸中の幸いだった。


少しボーッとする頭を振りながら影から出て来ると、凄く多い妖怪が屋上を埋め尽くしていた。


「いたぞ、一気にやっちまえ~~!!」

「ったく、外道は外道なりの考えがあるようだが。そんなの俺に通用すると思ってるのか?」


変化をを解き、妖狐の姿に戻る。それから、チャイムがなりそうなので一気に型をつけることにした。


「烈火郷満層!」


妖怪達の足元から、烈火の如く、マグマが吹き上げられた。それは、妖怪たちの真上から降って来て、赤いドームのようだ。


そして、一匹残らず倒した後、何事も無かったかの用に教室に戻った。


しかし、授業はとっくに始まっていて、教師にいびられた。最悪なことに、数学の教師だ。


「伊織、なぜ遅れた。理由を言え!」

「寝過ごしました」

「何?寝過ごしただと?わしの授業の時ばかり遅れて!」

「いえ、そんなことはありません」

「なら、どう言うことだ?」

「他の授業でも遅れます」

「ふん。不良生徒が」


こいつは、教師のくせに変態だ。男には厳しいくせに、女には砂糖のように甘い。なぜ、こんな奴が教師をやっていられるのか俺も不思議だが、みんなもきっとそう思ってるだろう。


「先生、もう許してあげて下さい。伊織君は、あんまり寝る時間がないんです」

「・・・・うむ、仕方ない許してやる。でも、今度は遅れてこないように!」


教師は難しい顔をしているが、明らかに気に入りの女に止められたから、即、俺を咎めるのをやめたのだろう。そして、そのお気に入りの女とは・・・・。


「浅積先生、伊織君には特に厳しいからね。大丈夫だった?」

「ああ」


隣の席の女。うるさく話しかけて来てうざいと思ってる奴だった。きっと、この女が俺のことを好きだと感づいているから、男の中でも特に俺に厳しいのだろう。いい迷惑だ。


「何で伊織君にはあんなに厳しいんだろうね?」

「知るか」


こいつは、本当に鈍感だ。他の女は、浅積の変態のような動きに気づいていて、みんな、目を合わせないようにしているが、こいつはそんなことにも気がつかず、普通に接している。恐ろしいほど鈍感な奴だ。


「逆に、私には優しいし」

「・・・・」

「ねぇ、どうしてかな?」


女がそう聞いた時、浅積の頭に角のようなものが一瞬見えた。とっさに立ち上がってしまって、浅積ににらまれる。


「何か?」

「いえ・・・・」


確かに見えた。鬼のような角が。これは、少し見張る必要があるな。そう直感した。









見張らないといけないなと確信した時からずっと張っているだが、奴は本当に変態だ。それを見ているこっちまで嫌気が差して来る。


前を歩く女のスカートをめくろうとしたり、前から来る女の胸を見てニヤニヤ笑っているし。仕舞いには、わざとぶつかってみたりと言うことを毎回している。


ああ、こいつが妖怪だったら即刻殺してやりたい。そう思いながら変態行為をジッと見ていた。


そんなげっそりしそうな光景を見続け、やっと放課後になった。今のところ、変態行為は行っているが、妖怪関係の怪しいことはしていない。


そろそろ帰ろうかと思った時、声が聞こえた。声の主は、奴の気に入りの女と、奴だ。気に入りの女とは、言わずと知れている、うざい女のことだ。


俺は、かなり遠くから見張っていた。視力だけは、妖狐の姿の時とかわらないからだ。しかし、耳はそこまでよくないために会話が聞こえない。しかし、女が嫌がっているのがわかった。


その時、俺の中で何かが切れた音がした。もう、これ以上あいつの変態行為を見ていられない。


俺は、躊躇いも無く妖狐の姿に戻ると、浅積の頭を思い切り殴った。本当は、奴をバラバラに引き裂いてやりたいぐらいだ。しかし、俺はそこまで理性を失っていた訳ではないので、何とか殴るだけですんだ。


しかし、妖怪の思い切りを頭で受けた人間は即死だろう。それでも起き上がったら妖怪・・・・。

そいつは、見事起き上がった。よし、妖怪なら手加減なしで大丈夫だな。


「邪魔をするな!なぜ邪魔をする。わしのこの悲しい気持ちがわからんくせに!!」

「外道の気持ちなんぞ、俺にはわかるか!特に、変態の気持ちなんざ更々わからない。何で、お前の遊び道具としてこいつを使った?」


完全に鬼の姿と化した浅積に向かって言う。それから、チラと女の方を見やった。しかし、それがまずかった。


「その子が一番の好みなんだ。お前もそうだろう、亜修羅」


見てはいけないものを見て、慌てて前を向く。くそっ、こいつの意図が読めない。なぜ襲おうとしない。そう言う奴が一番面倒なんだ。


「俺は違う。それより、あいつの服を返せ!」

「いやじゃ、せめてこれだけでも持って帰る」


ああ、本当にこいつを殺してやりたい。そんな衝動を必死に堪える。こいつは、何がしたいんだ?俺の動揺ぶりを見て楽しんでるのか?


「返せ、今なら瀕死状態で生かしておいてやる」

「ダメだ。本当は、この下のやつがよかったけどお前に邪魔されたからな。しょうがなしにこれで我慢しようって言うんだ」


そいつは、女の着ていたブラウスを大事そうに抱えている。・・・・吐き気がする。なぜ、こんな奴に付き合ってなくちゃならないのか。さっさと殺ってしまいたい。


まだ幸いなのは、女が気絶していることだ。出なかったらこいつは・・・・どうなっていただろうか?


「しょうがない。じゃあ、お前を大事な服ごと煉獄の炎で燃やしつくしてやる!烈火郷満層!!」

「あじゃーーーーー!!!」


そいつは、俺を迷わせた割には弱かった。簡単にやられた。しかし、問題が残った。女のブラウスまで勢いで燃やしてしまった。


その時、ある考えが浮かんだ。それは、俺のを貸すこと。俺はと言うと、その間はずっと妖狐の姿でいれば問題はない。


服の問題は片付いたが、今度は俺がまた変な目で見られることになる。もう、それはいいか。すでにクラスメートから変な目で見られてるもんな。


学校に置いて行くのもなんだから、家に運ぼうとした時、まずいことに女が意識を取り戻した。なぜ、こんな最悪なタイミングに・・・・。


「あっ、ありがとう」

「?」


何て言われるかと思ったが、全く予想していなかった言葉に驚きを隠せなかった。こいつ、狂ってるのか?


「だって、助けてくれた上に服まで貸してくれたでしょ?」


ああ、やっぱり、妖狐の姿になっても服さえあればバレるか。まぁ、上着なら二枚あるからな、そのまま家に帰っても、もう一枚あったから大丈夫だ。


「ちゃんと着ないと風邪ひくぞ」


女は、そう言われてやっと自分の惨状がわかったようで、小さく悲鳴を上げてからボタンを閉めた。


「・・・・あの、伊織君?」

「そんな奴は知らん」

「でも、生徒手帳・・・・」


ダメだ、嘘を突き通せない。生徒手帳を見られるとは思ってもみなかった。


「ああ、そうだ」

「まさか、本当だったんだね。伊織君って、妖狐って言う種類なんだね。本名は亜修羅って方なんでしょ?」

「まあな」

「かなりびっくり・・・・」

「俺はもう行くから」

「でも、これは?」

「もう一つあるから安心しろ」

「本当にびっくりだよ・・・・」


俺はその声と同時にその場を離れたが、最後の言葉を聞き取ることが出来た。

それは・・・・。


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