救出作戦開始!
部屋に戻ると、みんなが自分達の役割を整理し終わっていて、
今直ぐにでも作戦を実行出来るまでになっていた。
残るは、俺たちが帰って来るだけと言う状況まで進めていたらしい。
さすがは大人だ。子供と違って、何も言わなくても話を進めてくれる。
「では、作戦を実行に移すが、いいか?」
「大丈夫だ。準備は出来てる」
「よし、では、作戦開始だ!」
掛け声と共に、「おーー!」と言う声が上がり、みながバタバタと部屋から出て行く。
俺は、灸縁と共に、地下へ続く階段のある場所まで歩いて行く。
「結構いい奴らなんだな、お前ら神ってやつも」
「失敬だな。我々は、常に清い心を持っている」
「そうか?俺達の殺し合いを楽しんでみているような奴らがか?」
俺の言葉に灸縁は目を見開き、深くうなだれた。
「本当にすまない。私としたことが・・・・」
「気にすんなよ。別に俺は、あんたらを攻めてる訳じゃないんだぜ?
さっきのは、ふざけて言ったんだし・・・・」
「申し訳ない・・・・」
「ってか、もう、気にしてないしな!
お前らが族長を助けることに手を貸してくれてるからな!」
「・・・・」
申し訳なさそうな目で灸縁は俺の方を見る為、首を大きく振った。
「おっ、第一地点だな」
俺は、次の角にある監視カメラを発見し、トランシーバーで話しかける。
「おい、そっちの方は大丈夫か?」
「ああ、一応警備室には侵入成功」
その返事を聞いて、灸縁に向かってうなずくと、再び通信が入る。
「こっちも準備完了だ。カメラを破壊する準備は出来ている」
「よしっ、それでは、カメラを破壊してくれ。
出来るだけ姿を映さない方がいいが、姿を捉えられても、
警備室にいる奴が監視カメラのデータを初期化するから大丈夫だ」
「了解」
「ああ、任せろ!」
「では、検討を祈る!」
そう言ってトランシーバーを一端しまうと、灸縁に準備をするように言って、
自分も、壁に張り付いていつでも走り出せるように準備をしている。
ここで少し、この地獄監獄内に設置されている監視カメラのことを説明しよう。
ここの監視カメラは、動くものの気配を感じると、
そちらの方に自然と向きを変えるように出来ている。
だから、監視カメラの前を通ると、
今まで左側を向いていた監視カメラが追跡するように動いて、
その人物の姿を捉え続ける。だから面倒なのだ。
その上、人間界にあるようなボロい監視カメラとは違い、
ここの監視カメラは破壊することが容易に出来ない。
と言うのも、画面を破壊したとしても、超高速スピードで自動修復作業を行うのだ。
信じられないだろ?カメラが自分で自分を修復するんだ。
しかし、これがありえるから厄介なんだ。
修復する時間は故障の頻度によって違うが、
思い切り画面を壊しても、せいぜい30分後には元通りになる。
30分以内にここを通ることは可能だが、一度監視カメラが破壊されると、
監視カメラが警戒モードになる。
それは、壊されたカメラが修復作業を終えた後に作動することなのだが、
警戒モードになると姿を捉えるだけじゃなく、
攻撃もしかけて来るようになる為、色々と面倒なのだ。
となると、30分以内にカメラを破壊、進む。
の動作を繰り返し続けなければいけないのだ。
カメラを完全に破壊することは可能なことは可能だ。
しかし、カメラを破壊した時点で、警報装置が作動する為、破壊してはいけないのだ。
だからって手加減をすると、直ぐに修復作業を終えて警戒モードに監視カメラが入る。
だから、壊さない程度に強く衝撃を与える必要がある。
これでだいぶ、この地獄監獄と言う場所にある、
面倒な監視カメラのことがわかってもらえただろう。
「では、破壊するぞ?」
「OK」
俺が答えた途端、どこからか鋭い刃物が飛び、
それを捉えた監視カメラがそちらの方に画面を向け、その攻撃をもろに受けた。
「よしっ、この打撃で与えられた時間は・・・・10分!?」
「なっ、10分なのか!??」
「ああ、修復時間に10分かかりますと表示されている。
でもまぁ、とりあえず、画面には何も映っていないから大丈夫だ。
音声データもちゃんと消しておくから安心してくれ」
「了解だ」
俺は、灸縁に手でついて来るように促すと、
監視カメラの前を通り過ぎ、次の地点まで走って行く。
十分とは想定外だった。俺達の作戦では、最低でも20分は必要だ。
それなのに、10分となると・・・・出来るのか?
そう思い、自然と足を止め、大きく息をついた。
「どうした?」
「いや、なんでもねぇ」
俺はそれだけ言うと、再び走り出す。
出来る出来ないを考えている暇はない。今は、頭よりも体を動かすことが先なんだ。
「物凄い汗ではないか。本当に大丈夫か?」
「ああ、多分な・・・・」
普通の汗と、冷や汗が混ざっているのかわからない。
ただ、いつもより汗の量が多い気がした。
「とにかく、次のポイントまでもう少しある。
そこまで走ったら、一回休憩をしたらどうだ?顔色が悪いぞ?」
「大丈夫だって、俺は平気だ。熱でも出ない限り、倒れたりしないさ」
「・・・・そうか。ただ、あんまり無理をしてはいけないぞ。
族長様も、お前が倒れてしまってはお喜びにならないだろう」
「俺たちの世界では、結果が全てだ。
いくら頑張りましたと言っても、族長を助けられなかったら、
俺は非難されることになる。
体調を崩したと言おうが、全治三ヶ月の怪我を負ったと言おうが、
結果が成功か失敗かで周りの目は決まるんだよ」
俺の言葉に灸縁が怯む。
そうだ。酷いとか辛いとかありえないとか色々思うこともあるが、
俺達の世界ではそれが普通なのだ。
例えば、医者の場合、治せる確率が低い病気と言うものがあると思う。
それを治せと言い、10パーセントしか生存確率がないと言っても
手術をして欲しいと言って来る為、ダメもとでやって、やっぱりダメだったりする。
すると、自分達がやれと言ったくせに、失敗してどうのこうのうるさく言われる。
それから、店の店員の場合は、命をかけて強盗犯に立ち向かったのだが、
殺されてしまって、店の物を盗まれた。
すると、死を悲しんでもらえるどころか、ずっと悪口を言われ続けることになるのだ。
命をかけて守ろうとしても、結果が失敗の場合は非難される。
そう言う悲しいことが、俺達の世界では普通なのだ・・・・。