表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
108/591

幻と真実

「ちょっと待て!」

「・・・・ん?何かようかい?」

「違う、そんなあからさまに近付くのは危険だと・・・・」


「聞こえないんだけど!なんか、声が聞こえないよ!」

「だから!」


幸明が何か言おうとしているけれど、全く聞こえない。

なんだか、大声で言っているのは見えるけれど、壁と壁で仕切られているみたいに、

声だけは全く聞こえなかった。


「よくわからないけど、ちょっと行って来るよ」


僕は、なんだかよくわからない状況な為、

ニコニコしながら瘴気を出している樹に近寄った。

なんだか危険だとはわかってるけど、苦しくもなんともなくて、

そのまま、瘴気の出ている穴の中に入った。









「なっ、中に入っちゃいましたよ、大丈夫でしょうか?」


「なんで私の言葉を無視したんだ!

あの中に入ったら、もう・・・・生きて出て来ることは不可能なのに・・・・」


「えっ!?そうなんですか?どっ、どうしよう・・・・」


「・・・・仕方ない。我々はこの森を出よう。

出て来ない者を待って死ぬのは馬鹿なものだ」


そう言って、幸明はスタスタと森の出口の方へと歩いて行ってしまって、

僕は、慌てて追いかける。


「待って下さい!」

「なんなんですか?」


「『なんなんですか?』じゃないです!なんで、そうやって人を切り捨てるんですか!

心が痛まないんですか!?」


「・・・・私には関係ないことだ。

私の忠告も聞かずに、瘴気の穴の中に入ってしまったあの人が馬鹿なんです」


「聞こえてなかったみたいなんですよ!

それに・・・・助けてもらった人を、普通見捨てますか?信じられませんよ」


「私は今までそうやって生きて来たんです。だから、仕方がないことです」

「くっ・・・・」


僕は心底、この幸明と言う人が最低だと思い、性格が悪いと思った。

命の恩人が危険な目に遭っていると言うのに、それを普通に見捨てるなんて、

非情って問題じゃない。


僕には信じられないことだった。

仲間とか友達とか関係なく命を助けてもらった人が危険な目にあっていると言うのに、

自分には関係がないとか言って切り捨てるなんて・・・・。


僕は、幸明を殴ってやりたい気持ちになったけれど、なんとかその衝動を抑える。


今、この人を殴ったとしても、何も変わらない。

むしろ、怪我をさせてしまっては大変だ。

だから、なんとか残りの理性で怒りを抑えた。


「・・・・いいですよ。なら、あなたは先に森から出て下さいよ。

僕は凛君を見捨てるようなことはしません。

もう少し、救いようのある人だと思ってたんですけどね、

あなたの性根は取り返しのつかないところまで腐っていたようです」


僕は、幸明を冷たい視線で見ると、瘴気の出ている樹の目の前に座った。


「何をするつもりだ?」


「僕は、ここで凛君を待ち続けます。

幸明は家にでも戻って、親に泣きついてればいいですよ。小さな子供のように」


「そっ、それは・・・・」


僕の発言に、幸明の表情が引きつる。

まさか、僕にそんなことを言われるとは思ってなかったみたいだ。

でもね、僕だって怒ったら牙くらい向くんだよ。

今はかなり怒ってるから言葉に出して言ってるだけで、

普段だって怒ったりするけど、それを現さないだけなんだ。


「早く行けばいいじゃないですか。

神域の神と言っても、所詮、小心者の臆病な人ですからね」


「くっ・・・・」


僕は、幸明の気を感じて自然と幸明に向き直り、

睨みつけるまでは行かなくても、じっとみつめる。


「そんなことを言っていいと思っているのですか?」

「・・・・僕は、いけない言葉は言ったつもりはないです」

「そうか・・・・それは今、後悔することになりましたよ」

「意味がわかりませんが・・・・」


僕がそう言った途端、幸明が襲って来て、僕は慌てて飛び退いた。


それが故意なのか、それとも、霧の幻にやられてるのかわからないけれど、

意外に強いことが驚きだった。


でも別に、普通に攻撃をして来るだけで、

ダメージを食らっても、そう強くはないだろうなと思っていた。


「・・・・舐められては困る。これでも神域の神だ。本気を出せば・・・・」


そう言われた途端、

今まで五メートル近く離れていた幸明と僕の距離が一気に縮まって、

僕は、幸明に殴られた。


そのまま一メートルぐらい飛んで、僕は、そのままゆっくりと立ち上がった。


思い切り殴られたからかなんだかわからないけれど、

頭が思い切りクラクラしていて、頭痛が酷い。


「あたたた・・・・なんか、頭が痛い・・・・」

「私が殴ったからな」

「神の力を使うなんてズルいですよ」

「仕方がない。お前が幻を見せられていたようだからな」

「へ??」


僕は、幸明の言葉に耳を疑った。

今、「幻を見せられていた」って言ったよね?それって、どう言う・・・・。


「あれ?じゃあ、あのことのどこまでが本当の出来事なんですか?」


「凛と言う奴が瘴気の穴に入ったところまでは事実。

しかし、それ以降のことは幻と考えていいだろうな」


と言うことは、僕の見ていた光景ほとんどが幻と言うことだ。

幸明が凛君を見捨てようとしたのも、僕が言った言葉も、全て・・・・。


「いや、私の言動は幻だが、

自分の言っていた言葉は私に聞こえていたと取っていいだろう」


「えっ・・・・」


僕は恥ずかしくなって、思わずうつむいた。


あの言葉、全部言葉にして話してたんだ・・・・。

そう思うと恥ずかしくなって、幸明の顔が見られない。


「そう照れることではないと思うよ。

君がそれ程、あの子のことを思っていると言う象徴だ。

まぁ、苛立たなかったと言うと嘘にはなるがな。幻にやられていたのだから仕方ない」


「いや、そう言う言い方、誤解を招くからやめて下さい。

しかし、恥ずかしいものですね」


「どうやら、私が悪者になっていたようだな。散々私に文句を言っていたぞ」


「・・・・もう、言わないで下さい!すみませんでした・・・・」


「まぁ、謝らなくてもいい。

しかし、あの子が瘴気の穴の中に入って行ったのは事実。さて、どうするか」


「どうすればいいんでしょうか?」


「そもそも、君も危険な状態になっている。幻を見た後は症状が出始める。

気をつけなきゃいけないぞ」


「はい・・・・」


僕は大きく息を吸うと、ため息をついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ