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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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信頼とは何か

「どうするんだ?このまま出られないのか?」

「俺に聞くな」

「それにしても、こっちに来られちゃ、ばれちまうな」

「ああ・・・・」


俺達が隠れている場所は、

中に入ると三つの椅子と、それを囲むように機材が並んでいる警備室だ。

その機材の裏側に隠れている為、立ち上がってこちらを覗かれたら、もう終わりだ。


それなのに、もう部屋から出ようとする気配は全くない。

休憩時間が終わって勤務に戻ったと言うところだろう。


「仕方ない、私が囮に・・・・」


そう言って立ち上がろうとする灸縁の腕を、引っ張り、座らせる。


「やめろ。今更お前が囮になったところで、出られるものじゃない。

だったら、ここでじっくりと作戦を練った方がいい」


「・・・・しかし」


「大丈夫だ。族長の安否は確認出来た。

族長は、絶対に死ぬなんて自ら吐くような根性の弱い奴じゃない。だから、大丈夫だ」


「なぜそこまで信じられる?」

「何をだよ?」

「組の長と言っても赤の他人だ。どうしてそこまで信頼出来るんだと聞いているんだ」

「お前らも、仕えてる神を信頼してるんじゃないのか?」


「・・・・我々は、そこまでお互いを信じ合うことはしない。

いつ、何が起こってもいいように、いつも抵抗出来るように、銃だって常備している」


「そうか」


「そんな我々よりも、妖怪と言う生き物は相手を信頼しないと教わった。

それなのに、お前はなぜだ?なぜ、そこまで信用出来るんだ?」


そう問われるが、はっきり言ってよくわからない。そう言われればそうだ。

どうして俺は、あの人をここまで信頼しているのか。

まだ出会ってそう経ってもいないし、

そもそも、何かきっかけがあって出会った訳でもなく、

ただ、護衛としてついているだけなのに、どうしてここまで信頼しているのか。


もう、人を信頼しないと決めた俺は、どうして族長をここまで信頼してるんだ?

考えれば考えるほど訳がわからなくなって、ため息をつく。


どうして、ここまであの人のことを信頼してるのか。

なんで、ここまで危険な目にあって助けようとしているのか。


そんなことを考えていると、うとうとして来て、目の前が真っ暗になった。









「お前、馬鹿だな・・・・」

「馬鹿とはなんだ!馬鹿とは!」

「馬鹿だから馬鹿って言ったんだよ」

「ちょっ、二人とも、落ち着いて下さいよ!」


「馬鹿って言う亜修羅が悪いんだもん!」

「なら、アホだな!」

「違う!僕はアホじゃない!」


族長たちが、制服を着て学校に向かっているところを、俺はいつも観察していた。


その度に、いつもいつも楽しそうだと感じて、

お互いのことを信頼していることが羨ましいとも思った。





「おい、ちょっと話が・・・・」

「うるせーよ。お前なんかに合わせる口なんざ、俺はもってねぇ」

「・・・・」


そいつは俺から放れて行き、仲間とこちらを見てクスクスと笑っている。


俺はただ、その光景を見て、唇を噛むことしか出来ない。

俺は、話すら聞いてもらえない。

誰かと仲良くするなんて、出来ない・・・・。

いや、そんな生易しいことをしてる奴等は、みんな弱いやつらなんだ。

俺は強いから、人と関わらないで生きて行ける。





「お前は、我々の族長の護衛になったから、今から人間界に向かってくれ」

「俺は、そんな得体の知れない奴の護衛なんざ、やりたくないな」

「前期族長の言伝だ。断ることは出来ない」

「・・・・ちっ、なんで俺が・・・・」


もう、人と関わることはやめると決めたのに、

何があってこんなことをしなくちゃいけないんだ。

しかも、妖怪なのに、人間界に行っているような奴を護衛するなんて、馬鹿らしい。





「お前には関係ないだろ?」

「でもさ、一緒に帰ろう!」

「付きまとうなって!しつこい奴だ」

「いいじゃない!」


どうしてあいつは、人を冷たく突き放しているのに、人が寄って行くのだろうか?

俺は、あいつと違って、話しかけても冷たくあしらわれるのに・・・・。





「おいあんた、ちょっといいか?」

「なんだよ?お前、妖怪だな?」

「俺は、お前の護衛だ」


「だからなんだよ?

俺は、お前なんかに護ってもらわなくても生きていける。付きまとうな」


「なら、俺の存在を認めなくてもいい。無視してもらっても構わない。

俺が言いたかったのは、

護衛としてあんたを観察していると言うことを伝えたかっただけだからな」


「それは出来ないだろ?俺が嫌がっているとは言え、護られる身だ。無視はしないさ」


そう言った族長の顔が忘れられない。笑みとは取れないし、優しいと言う訳でもない。

それなのに、妙にホッとする顔だった。





「なぁ、族長?」

「なんだよ?」

「いや・・・・なんでもない」


「なんでもないなら話しかけるな」

「・・・・悪い」


「別に謝らなくてもいいがな。どうして話しかけた?

・・・・まさか、寂しいからとか言わないよな?」


「・・・・だったらどうする?」


「まぁ、それならいいか。寂しいと言うのも理由の一つになる。

だから、寂しい時はいつでも話しかけろ」


意外な返答だ。

いや、意外どころじゃない。普通、こんな答えをする奴はいるだろうか?

もしかしたらこいつは、他の奴等とは違うかもしれない。








「おい、何を寝ている?」

「ん?あっ、ああ・・・・」


俺は伸びをすると、欠伸をした。


「どうした?」

「警報が鳴って、警備員は出て行った。今のうちに逃げるぞ」

「あっ、ああ」


俺は、よろよろ立ち上がると、鍵を開けて部屋から出た。


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