ついに発見!
「凛君、大丈夫ですか?」
「うっ、うん・・・・全然・・大丈夫・・だよ」
「でも、息が上がっているのでは?」
「それは、幸明の体重が重過ぎてね・・・・」
僕は、何とか大丈夫だと言うことを示す為にさまざまな言い訳を言っているものの、
息が上がっていることを隠すことは出来ない。
頭が痛いし、なんだか吐き気がするし、頭がグルグルする。
でも、それを桜っちに言う訳にはいかなかった。心配かけちゃったら困るからね。
「それにしても、森の奥遠いっ!」
「幸明・・・・大丈夫でしょうか?」
「うーん、あれから十五分ぐらい経ったと思うけど・・・・どう?」
「んーと・・・・あれ?」
「どうしたの?」
僕は、驚いている桜っちの腕時計を覗き込むと、残り四十分のままだった。
さっきも四十分だったはずなんだけど・・・・あれ?
「なんか、止まっちゃってるの?」
「うーん、どうなんでしょうか?
この時計、電波時計なので、遅れたりすることはないと思うんですけど・・・・」
「うーん、僕らの感覚がズレてるのかもね。じゃあ、進もう!」
「そうですね!」
「でもね、なんか、変な間隔に陥ってる・・・・」
「ですよね。なんか、時間の感覚がおかしくなってるようです」
「これも、毒気のせいかな?」
「うーん、でしょうね」
そんなことを話ながら歩き出そうとした途端、不意に、後ろの幸明が動いた。
とっさに振り返ると、目を覚ましたようだ。
「ここは?」
「ああ、起きたんだ。おはよー!」
僕が笑顔でそう言うと、幸明は心底驚いたようで、必死で僕から離れようとする。
「あっ、ちょっ、あんまり動かないでよ、うわぁっ!」
僕は、幸明があんまりにも動くから、前に転んでしまった。
「だっ、大丈夫ですか?二人とも??」
「ぼっ、僕は大丈夫だけど・・・・そっちは?」
「うーん、どうなんでしょうか?」
僕は、何とか立ち上がると、後ろで転んでる幸明を見下ろす。
まだ、あまり体調がよくないのか、そのまま動かない。
「大丈夫かね?」
「なんで、お前が私を背負っていたのだ?」
「ちぇ、なんでそう言う風に敵視するのさ?せっかく助けてやったのにさ」
「・・・・そうなのか?」
「そうじゃないの?」
「・・・・は?」
「あっ、あれ?僕ら、幸明のことを助けたんだよね?」
「えっ、助けたんじゃないんですか?」
「だよねっ!と言うことで、感謝をしなさい!」
「・・・・助けろなんて言ってない」
「うわぁ~、亜修羅に似てのツンデレだね。
そう言うの嫌だなぁ~。素直にありがとうって言えばいいのに」
僕は、小声でボソボソ言いながら、後ろから文句を言っている幸明の言葉を無視して、
桜っちと一緒に歩き出す。
「おいっ、私はどうなったんだ?」
「ん?森の中で倒れちゃって、僕らが救助しましたっ!で、はい、直ぐに口を塞ぐ!」
「多分、解毒剤を飲んだ人は、もう気にしなくて大丈夫だと思いますよ?」
「そうか・・・・なぜ、私を助けようとしたんだ?」
「うーん、まぁ、なんでもいいんじゃない?訳なんて。
だって、普通じゃない?死にそうな人がいたら、敵でも味方でも助ける。
・・・・それって、当たり前じゃない?」
僕の言葉に、幸明は目を見開いた後、ため息をついた。
「と言うことで、僕らはこれからこの森の瘴気を消し去ります。
と言うことで、行きましょか!」
「どこにいくつもりだ?」
「森の奥・・・・瘴気の塊を滅する為に!」
「そんなことをしたら、種族争いが・・・・」
「その為に止めるんだよ。悪い?」
僕の声のトーンと殺気に、幸明は自然と黙り込んだ。
当たり前だよ、これ以上種族争いを繰り返されるのは嫌だもん。
「いや・・・・」
「と言うことで、森の奥へ連れてって!」
「そんなこと・・・・」
「連れて行きなさい!」
「・・・・全く、どうして私が・・・・」
そうぶつぶつ言いながらも、幸明は僕らの前に立って歩き始める。
結局連れて行ってくれるんじゃんと思いながらも、僕らも後をついて行く。
「少しは感謝してるのかな?」
「だと思いますよ、ああ言う態度をとってはいるものの、
ちゃんと僕らを案内してくれてますからね」
「でも、もしかしたらはめようとしてたりとか・・・・」
「とりあえず、信じてみましょうよ?」
「私を信じていないなら、どうしてついて来るんだ?」
「ん?心配だし、信じてみようと思うしね。別にいいでしょ?僕らがついて来ても」
「・・・・ふん」
「まぁ、いいじゃん。そんなに嫌がることはないじゃない!」
僕は、幸明の背中をバシッと叩くと笑った。
「叩くな!」
「あっ、すいません」
「・・・・」
「何?その顔?素直に謝っただけじゃん」
僕が素直に謝ったのがよっぽど驚いたのか、目を丸くしてこちらを見ている。
「まぁ、いいや。とりあえず、行きましょか」
そう言って歩き出した時、目の前の光景に思わず足を止めた。
今までずっと道が続いていたのだけれど、ついに行き止まりに行き着いた。
行き止まりには、中央に大きな樹があった。
そこから紫色の空気が出ていて、ここら一体は今まで以上に空気が紫色になっていた。
「ここの樹が要因かぁ~」
「・・・・こんなことになっていたのか?」
「よっしゃっ!イッチョ倒すか!」
僕は気合を入れると、この瘴気の原因でもある樹を倒そうと誓った。