危険と平和は紙一重!
「んで、これで全員か?」
「・・・・みたいだな。助かった、そなたのおかげだ」
「いやいや、礼なんていらないぜ。と言うより、なんで、地下への道がないんだよ!」
「・・・・そこまではわからないのだ」
「それじゃ意味ねぇじゃねぇかよ。最悪だぜ・・・・」
俺はため息をつくと、近くの壁に寄りかかって、大きく息を吐いた。
族長を助けに地獄監獄に来たと言うのに、
他の奴らを助けて、肝心の族長を助けられないのなら、全く意味がない。
「地下へ行きたいのか?」
「・・・・ああ。知り合いが、地下に閉じ込められたんだ」
「俺、地下への道を知ってるぞ」
「本当か!?」
「ああ。だが、地下へ行くには、厳重な警備をすり抜けなければいけないぞ?」
「そんなに厳重に警備されてるのか?」
「ああ、まず、監視カメラが二十ぐらいあり、赤外線センサーもあって、面倒なんだ」
「・・・・」
俺が無言でうつむいていると、再びそいつは口を開いた。
「だが、俺達神は、助けてもらった恩を返すように言われている。
だから俺達は、お前の仲間を助けられるように努力をする。
それに、これぐらいの人数がいれば、何とか全てを乗り越えることは可能だろうな」
「なるほど。よしっ、それなら早速、地下に行こうじゃねぇか!」
「いや、待て。まずは役割分担をしなければならない。
それに、ここから最短で行ける通路を考えないとな。
今は警戒態勢がとられていないが、警戒態勢を取られたここは、
まさに、地獄監獄と言うに等しい場所だ。
警戒態勢がとられた時点で、この作戦は消滅する。
だから、事実上、勝負は一度きりだ。誰かが失敗したらそこで終わりだ」
そう言われて、自然と大きく息を吐いた。緊張感が体に走り、一気に体が冷たくなる。
「まずは、地下に行く人物を決める。それは、お前を除いて、後四人」
「なんでそんなに大勢で地下に行くんだ?」
「万が一と言うことがある。だから、四人を予備として地下に送る。
でないと、困るのはお前だ。
そして、防犯カメラを破壊するのは二十人。
そして、赤外線センサーを止める為に警備室に入り込む奴は五人。
そして、地下への扉のロックを解除する奴が一人。
この配置で、丁度全員に役割分担される。
それぞれ相談を仕合い、役割を決めろ。以上」
そう言われた途端、みなが輪になって話し合いを始める。
俺は、子供の会議みたいだな・・・・とか呑気なことを考えていると、
話を仕切っていた奴に肩を叩かれた。
「お前、大丈夫か?」
「・・・・は?」
「間違えた。お前の仲間は大丈夫か?」
「わからない・・・・。ただ、こいつが言うに、族長はもっとも地下・・・・
一番辛い刑の場所に連れて行かれたらしい」
俺は、直ぐ近くにいた灸縁を目で見やりながらそう言うと、大きくため息をついた。
「まず、そいつが生きているのかを確かめるのが先なんじゃないのか?」
「・・・・族長は生きてるさ」
「そんな保障はどこにもない。まず、生きているかどうかを確認しろ。
もし死んでいたら、無駄になるからな」
俺はため息をつくと、深く考え込む。どこを見たところで何も変わらない。
ただ、目をウロウロと動かさないと、落ち着かないのだ。
「確か、地下を監視している部屋は、この近くにあるはずだ。
俺が力を貸すから、お前の族長の様子を見に行くか?」
「・・・・」
「行きたくないなら行かないでいい。ただ・・・・」
「族長の様子を見ることが可能ならば、そうしたい。
生きているかぐらいは確認出来るんだろ?なら・・・・」
「そうか。なら、みんなが決めている間に俺達だけで行くか」
「私もついて行くぞ」
そう言って近寄って来たのは、俺が一番最初に牢屋から出した奴。灸縁だった。
「お前、どうしてついて来るんだよ?」
「そなたの族長と言うのを見てみたいと思ったのだ。どんな者なのか・・・・」
「まぁ、別にいいけどな、顔とかなんか、見えないかもしれないぞ。
俺だってよくわかんね」
「それでもいい。ついて行こう」
俺はうなずくと、そいつの後に続いてその部屋から出た。
「確か、ここの中に入れば見れるはずだ。
今は丁度誰もいないみたいだな。入ってみよう」
扉を開けて中に入って見ると、中央に三つぐらいの椅子があり、
それを囲むように液晶画面が並んでいて、色んな場所が映し出されている。
「どこだろう?」
「さあな。ん?」
一つだけ気になる画面を見つけて、自然とその画面に見入る。
壁に貼り付けられ、視線を落としている人の姿が見える。
髪が顔を隠して顔は見えないが、雰囲気で、族長だってわかった。
「あっ、族長!」
「どれだ?」
「これだ」
「172番カメラのマイクを入れよう」
「ん??」
意味がわからなくて、自然と首をかしげる。
どうやら、俺達妖怪は戦闘能力が高いが、神ほど頭が働かないらしい。
「我々の声を、向こうに繋げる」
「そんなこと出来るのか?」
「ああ、出来る。向こうの声も聞こえるようにしよう」
まさか、そんなことが出来るとは思っていなかった為、
俺は、自然とワクワクした気持ちになった。
「とりあえずこの様子だと、今のところ、地下には誰もいないらしな。
それなら、監視カメラからのスピーカーでいいな」
そんなことをブツブツ言われるけれど、俺は全く理解出来ない。
でも、大事な部分だけ理解していればいいよな?
「とりあえず、ここに向かってしゃべってみてくれ」
そう言われて、マイクらしき何かに向かってしゃべってみる。
「・・・・族長?」
俺の声が聞こえたのか、族長の体が動いたが、声が聞こえることはなかった。
「・・・・大丈夫か?」
「・・・・」
やっぱり無言のまま、体が微妙に動くだけだった。
もしかしたら、言葉すら発することが出来ないのかもしれない。
「クッ・・・・」
そう思うとやりきれない気持ちになり、せっかく話せると言うのに、言葉が続かない。
その時、突然警備室の扉が開き、警備員が入って来た。
俺達は、なんとか済んでのところで影に隠れたが、
さて、これからどうやって外に出ようか。