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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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地獄監獄の内部事情

「ここが地獄監獄・・・・なのか?」


俺は今、地獄監獄らしい場所にいる。

なぜ、らしい場所かと言うと、俺の想像していた場所とは明らかに違っていたのだ。


俺が今いる場所は、暗く閉ざされた場所なのだが、隙間から外を覗くことが出来る。

しかし、見えた光景は、作業服を着た奴らが流れ作業で何かを作っている様子だった。


俺が想像していた地獄監獄と言うのは、

明らかに地獄のような場所かと思っていたのだが、どうも想像とは違っていたようだ。


とりあえず、どこからか出られないかと辺りを手当たり次第に触っていると、

急に警報のような音がうるさく鳴り響き、地獄監獄内の照明が真っ赤に変わった。


俺は驚き、かなり慌てたけれど、とにかく逃げ延びることが先決な為、

部屋の隅にあった扉から外に出ると、一気に走り出した。


「不審者がいたぞ!追え!!」

「やっ、やべっ!」


振り返らずとも見つかったとわかり、全速力で逃げる。


それにしても、ここは大きな迷路のようだ。

同じような景色がずっと続いていて、迷子になりそうだ。


そんなことを思いながら走っていると、

突然、目の前に俺を追っていた作業着の奴らが立ちふさがった為、ギョッとした。


通路は、俺が今走っている道しかないはずだ。

それなのに、どうして俺よりも先回り出来たんだ?

しかし、俺なんかよりも、ここで働いてる奴の方がここの地理に詳しいのは事実だ。

きっと、一方通行と見せかけて、隠し通路みたいなものがあるんだろう。


そいつらは笑みを浮かべると、俺に飛びかかって来るが、

何とかそれを全て避けると、攻撃すらも加えずに、すぐさま方向転換をして、

再び全速力で走り始めた。


一方通行だから、あいつらの前から俺の姿が消えるのは、ゆるいカーブの時だけ。


ここは所謂、螺旋階段のようにグルグルとなっているのだ。

だから、奴らを撒くにはその一瞬の隙で逃げるしかない。

だが、どうやって・・・・?


走りながら辺りを見渡すが、どこも逃げられるような場所はない。

ただ、扉が沢山あるだけで、それ以外はほとんど何もない。


そこで、次のカーブが来た時、その扉の中の一つに入ってみようと思った。


そして、遂に次のカーブが見えた。

俺はそこでスピードを上げると、一番最初の扉を開け、急いで閉めた。

そこで大きく息を吐くと、扉に寄りかかり、少し休憩をする。


こんなに本気で走ったのは久しぶりだ。それに、距離も半端ない。

きっと、十キロ近く走っただろう。

全速力でそんなに長い距離を走ったら、いくら俺だって疲れる。


ため息をつきながらよろよろと立ち上がり、

部屋の奥に歩いて行くと、何か機械のようなものを見つけた。


「なんだ?これ??」


適当にボタンを押してみると、今まで真っ暗だった画面が光り出した為、

急いで飛び退いたけれど、直ぐに画面に近寄る。


そこには、何かのデータのようなのが映っていた。

左上に顔写真があり、そのとなりに名前らしきものと住所らしきものが書いてあって、

一番下に、ロック設定と言うものがあった。

そこをいじくると、「ロックを解除しますか?」と言う質問が出た為、

とりあえずロックを解除した。


すると突然、後ろからピーッと言う音がした為、

声は上げなかったものの、五メートルぐらい飛び退いた。


「お前、どうして私のロックを解除した?」


「ん?お前、誰だよ?そもそも、俺がお前のロックを解除したってどう言うことだよ?

俺、お前の牢屋のロックを解除したって言うのか?」


「でもまぁ、解除してくれてありがとう。

よければ、他の者のロックも解除してやってくれないか?」


「ちょっと、訳を聞かせてくれないか?」

「とは?」


「お前は確か、詐欺で捕まったそうだな。懲役期間はそこまで長くなく五年。

それなのに、五年過ぎても牢屋から出してもらえず、

抗議をしたところ、ここに連れてこられた。だから出した。

でも、自分が悪くて閉じ込められている場合は別だぞ」


「大丈夫だ。みな、逆らったと言うだけで閉じ込められた者達だ。

そしてここは、牢屋なんてものじゃない。拷問部屋と言うに等しい」


「・・・・そうか。ところで、

最近ここに連れて来られた人はどこにいるか知ってるか?」


「ああ、あの上級神者か。

あいつは可哀相なことに、もっとも辛い刑を下される地下にいるぞ。

ここは三階だから、まだマシなぐらいだな」


「そうか、ありがとな。よしっ、そんじゃ、行くか!」


俺はそう言うと、ゆっくりと扉を開き、外の様子を伺うが、

相変わらずサイレンと赤い照明は変わっていない。

それにしても、ここの扉を閉めると、外からの音は全く聞こえない。

それがとても不思議だった。


「これ、止められるか?」

「わからぬ。だが、止められないこともないだろうな」

「よしっ、ちょっとやってみるか」


俺は、適当にボタンをピコピコ押していると、

セキュリティー設定と言うものを発見した為、それの警報機能をオフに設定をした。


「おしっ、これでOKだ!」


「そう言えばそなた、なぜ、その機械に触れることが出来るのだ?

我々は触れられなかったぞ?」


「ああ、それはきっとな、俺が神じゃないからな!俺は、頭脳種族族長の護衛なんだ」

「そうなのか!?」


俺の言葉にそいつはかなり驚いた顔をしたが、

直ぐに真顔に戻って、急に土下座をしだした。


「なっ、どうした!?」


「すまない!我々は、そなた達の命をもてあそぶようなことをして楽しんでいた!」


「ああ、その話か。別にいいぜ。

今年で種族争いの歴史がなくなる。俺の仲間が言ってたんだ!」


「そうか・・・・それならよかった!」

「ああ、そんなちっさいこと気にすんなよ!それより、早くみんなを助け出そうぜ!」


本当は、許されるようなことじゃない。

だが、今こいつに怒ったところで何も変わらない。

だから今は、出来るだけ早く、族長を助け出そうと思うんだ。


再び扉を開け、外の様子を伺うと、

もうサイレンは鳴っていなかった為、深くため息をついた。


「そちらから行くよりも、こちらから行く方が効率的だろう」


そう言ってそいつが指差す先は、何もない壁だった。


「何にもないぞ?」

「ここのレバーを下ろせば・・・・」


そう言って、そいつは・・・・そう言えば、まだ名前を聞いてなかったな。


「おい、あんた、名前は?」

「私は、灸縁」

「なるほど・・・・」


灸縁が、近くにあったレバーを引き下げると、

何もなかった壁が突然動き出して、隠し扉が出来た。

そして、向こう側に通路が見える。


「おおっ、この仕掛けで俺は追い詰められたのか!せこいぜ・・・・」

「とりあえず、先へ進もう」

「おう!」


俺は勢いよく返事をすると、灸縁の後に続いて隠し通路から外に出た。


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