解決策
「今、何段目かな?」
「確か、2736歩、今、2737歩目です」
「げっ、何段上ってるのさ・・・・」
「でも、まだまだ階段は続いてますよ。どうなってるんでしょうね・・・・」
「うーん、そんなに階段ある・・・・」
今までそんなに多くの階段を上って来たのかと思って後ろを振り返ると、
今まで上って来たはずの階段は消えていて、
僕達の立っている段すらも消えかけている。
今、僕らのいる高さは、約200メートルぐらいだ。
だから、何もかもが小さく見える。
そんなところで階段が消えて行くと思ったら、慌てるのは普通だよね?
「かっ、階段が消える!?」
「なっ、そんな・・・・」
「いっ、急げ!」
僕は、状況を把握出来ていない桜っちの腕を引くと、階段を二段飛ばしで駆け上る。
「なんでそんなに急いでるんですか?」
「階段が!」
「でも、二段飛ばしで階段なんかを上ったら転んでしまう・・・・」
「あっ!?」
僕は、桜っちに言われた途端、無様に転んでしまった。
でも、痛みはなく、何とか起き上がると、
そこはさっきの階段ではなく、まさしく雲の上と言えるような場所であった。
「ここ・・・・天界?」
「どうなんでしょう?でも、これって雲の上ですかね?」
「うーん、こんなフワフワした感触なのかね?そもそも、雲ってなんだっけ?」
「雲とは、空気中の水蒸気が集ったものですね。
ですから、実際は雲の上に乗ることは出来ません。となると、ここはどこですか?」
「あなた達、この場所になにか御用ですか?」
そう声をかけられて、僕らは自然と後ろに下がった。だって、怖いからさ。
「あなたは・・・・誰ですか?」
「私は宇宙を司る神、天命です。
魔光霊命の願いを受けて、魔界の時は止めてあります。まだ何か御用ですか?」
「えっと・・・・。その、魔光霊命様が・・・・幸明の手で殺されてしまったんです。
でも、その前に、魔光霊命様が教えてくれたんです。天命様のところに行けと。
なので、天命様のところに来たんです」
「そんな・・・・」
僕の言葉に天命様は言葉を失ったようで、そのまま一分間近く固まってしまった。
「だから、助けて下さい!」
「そうと言われても・・・・出来るかどうか・・・・」
「お願いします!助けて下さい!!」
「・・・・魔界の様子はよく知っています。
ですから、あの惨事を止めようとは思うのですが、
幸明を倒しても、あれは抑まりそうにありません。
幸明以外にも種族争いを楽しんでいる者達が多くいます。
その者達が、幻を見せる霧を魔界に投下してしまえば終わりです。
ですから、幸明を倒すことよりも、争いの原因である霧を消し去ることが一番です」
「なるほど・・・・と言っても、あれって、幸明の力じゃないんですか?」
「確かにあの者は力がありますが、
あれだけ広い世界に霧を落とせるほど力はありません。
原因は、別のところにあると考えられます」
「うーん、霧の発生場所がどこなのかわからない以上、僕らはお手上げだよね」
「そうですよね。
強大な力で幻影効果を持っている霧を発生させる場所ですか・・・・そんなところ・・・・」
そうつぶやいてから、桜っちの様子が変になった。
明らかに驚いていて、目を見開きながらぶつぶつ何かを言っている。
「桜っち、どうしたの?」
「僕・・・・心当たりあるんですよね・・・・」
「まっ、マジ!?」
「はい。学校で習ったことなんですけど、
神域の隅の方に、邪悪な気を放つ森があるそうです。
確か、そこに入った者は、強い催眠状態に陥るんです。
だから、そうかなって思ったんですけど・・・・」
「うわぁ!ビンゴだよ、ビンゴ!よしっ、そうとなったら行こう!」
そう言って桜っちの腕を引いて天命様の前から消えようとすると、
不意に呼び止められた。
「あそこは危険です!入ってはいけません!死んでしまいますよ!」
「大丈夫ですよ、天命様!これでも僕ら、強いんで!」
「そうではありません。
そちらの少女が言っていた通り、あの森の霧には強い催眠効果があり、
幻を見せられることがあります。
ですから、その催眠に打ち勝つぐらいの強い精神力がなければ、
あそこから出ることは不可能です!」
天命様は、とても真剣に言っているようだったけれど、
僕らは「えっ!?」って聞き返してしまった。
だって、天命様、今、桜っちを指差しながら、「そちらの少女」って言ったんだ。
「少年」じゃなくて、「少女」。
桜っち、僕って言ってたのに・・・・。わざとじゃないのはわかってる。
パッと見は女の子みたいだからね。でも、僕って言ったのに、女の子だんて・・・・。
「あの・・・・天命様?」
僕が恐る恐る手を上げて、その間違いを訂正しようとすると、
今までずっとうつむいて口を閉ざしていた桜っちが、僕の腕を摑んで首を振っている。
僕は桜っちに近付いて小声で話す。
「えっ、訂正しなくていいの?」
「仕方ないですよ。こんな声ですし、見た目も女の子みたいですからね。
それに今は、天命様の話を聞きましょう?」
「まぁ、桜っちがいいって言うならいいんだけどさ。後で後悔しない?」
僕の問いに、桜っちは数秒ぐらい固まっていたけど、うなずいた。
「どうしたのですか?」
「いえ、なんでもないです。それで、話を戻しますが、僕らは大丈夫です!
強靭な精神力を持ってます!大丈夫です!きっと魔界を救ってみませます!」
僕は、大きく胸を張って言った。